2011年6月7日火曜日

サンフランシスコ・オペラの「神々の黄昏」

休憩を入れて全部で5時間15分、リング・シリーズ中の最長のオペラなんですが、いつのまにか経ってしまう時間でした。

ニナ・シュテンメ(Nina Stemme)のブルンヒルデを聞いてすごいと思ったのが、去年の6月。今回は、長いオペラのせいか、もしくは他の出演者に合わせるためかはわかりませんが、第一幕では、力をセーブしている感じ。しかし第三幕は実力で臨み、他のキャストの追従を許しません。

悪役、アルドリッヒの息子、ハーゲンを演じたアンドリア・シルベストレリ(Andrea Silvestrelli)。誰よりも大きな声なんですが、声の質があまりにのどかで牧歌的。悪者をあやつろうとする、最大の悪玉という感じがしません。こういうキャースティングはなんとなく釈然としません。

始めざわざわしていた観客席も、第二幕ではストーリーに熱中して、座席が静まり返ります。

最初に登場して、今までのあらすじを語るノルンを演じた、ちょっと太りすぎのロニータ・ミラー(Ronnita Miller)とダベダ・カラナス(Daveda Karanas)がよかったです。舞台の前面で歌ってたので、声が聞きやすいせいかも。

今回のリング・シリーズでは、環境破壊をものともせず、自分たちの利益を追求し、戦争にも介入するビッグ・コーポレーションが悪役という設定(それをあやつるのがハーゲン)。神々ばっかりが山の頂にでてくるよりも、こういう設定の方がわかりやすくて、面白いと思います。でも半分以上の聴衆は、こんな現代的解釈に抵抗を感じてると思います。ま、ともかく席の塞がり具合から判断すると、券の売れ行きは良さそう。

一番わかりやすくて身近な舞台設定は、3人の水のニンフが住むライン河。車のタイヤ等の粗大ゴミが散在する河畔、川底や岸には、空のペットボトルの山が。そこへプラスチックの袋を持った三人のニンフがゴミ拾いにやってきます。金(ラインゴールド)を守っていた頃の美しい河を思い出し、嘆きながら歌います。

オーケストラは素晴らしかったです。サンフランシスコ・オペラ交響楽団の元アート・ディレクターのラナクルが指揮。サンフランシスコではすごい人気の彼、私も大好きです。なぜオペラ座を離れたのかはちょっと疑問。

なんとなく不安を呼び起こし、終りも初めも無く繰り返し浜に打ち上がる波のようなこの曲、ワーグナーの作曲家としてのすごさというか、現代性を感じさせます。

なおリンクを付けておいたので、タイトルをクリックすると、ビデオクリップが見られます。

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