2010年9月30日木曜日

サンフランシスコ・オペラ制作の「フィガロの結婚」

サンフランシスコ・オペラの、今回のフィガロは、イタリア人のバスバリトン、ルカ・ピサローニ(Luca Pisaroni)、婚約者のスザンナは、アメリカ人ソプラノのダニエレ・デ・ニース(Danielle De Niese)(写真下)。

このフィガロ、パフォーマンスがまだらで、良いときがあったかと思うと、冴えないときがあったりなんですが、フィガロの役のベテランという感じで、演技は、今まで見たフィガロの中で、一番上手。とにかく愉快で、客席、笑いがあふれてました。サンフランシスコ・オペラ喜劇主演俳優賞というようなのがあったら、私は彼を第一位にノミネートしたいと思います。



スザンナは、始めの方は「大丈夫?」というくらい、声が伸びなかったんですが、緊張が解けてきたのか、だんだんよくなり、2幕目では、フィガロと一緒にのってきました。

歌の方の最大の収穫は、伯爵夫人を演じたエリー・ディーン(Ellie Dehn)。サンフランシスコ・オペラ初出演なんですが、ルース・アン・スワンソンと同じぐらい声が伸びるので、ちょっと驚き。(写真下)


サンフランシスコ・オペラの「フィガロの結婚」は、いつも同じ制作、つまり、舞台デザインも衣装も皆、同じ。どこかの倉庫に保存しておいた舞台装置を引っ張りだして使ってるんだと思いますが、なかなかうまくできてます。

そういえば、伯爵夫人のガウンの色がラベンダーから、ゴールドに変わってました。

サンフランシスコ・オペラの「トスカ」も、いつも同じ制作なんですが、ストーリーをたいへん上手にサポートする舞台デザイン。他のオペラカンパニーのトスカもテレビで見ましたが、サンフランシスコの方が、荘厳。変えてほしくないと思ってます。

話がずれましたが、フィガロはお薦めです。舞台のビデオクリップをリンクしておきます。

新聞の批評をここにリンクしておきます。写真がよく撮れてます。

2010年9月27日月曜日

シーズン開始を祝う、カル・パフォーマンス・デイ

秋の訪れとともに、アメリカ中で演奏会シーズンが始まるんですが、今年初めて、カル・パフォーマンス・デイ(Cal Performance Day)が設けられたので、日曜日(25日)に、バークレーへ。

不景気で客層が減るのを心配したカル・パフォーマンス(注参照)が、先手を打って、オムニバス式一日無料コンサートを開催。客層を広げようという試みと読みました。

午前中の目玉は、クロノス・カルテット(Kronos Quartet)。バークレーで、時々、コンサートを開くのですが、いつも売り切れ、今回初めて聞きました。



バイオリニストとか、セロ演奏者という感じじゃなくて、楽器を奏でる職人さんという感じ。英語で、アルティザン(artisan)というんですが、ぴったり。技と音に感動。

オープニングは、多分、フィリップ・グラスの曲。よかったです。この曲じゃないかと思いますが、もっと音質がよく(生なのであたりまえかな)、劇的。

この曲も演奏したと思います。このビデオは2008年となってますが、クロノスの面影を忠実に伝えてます。

無料コンサートなのでプログラムはなく、何を演奏したのか思い出せないのが残念ですが、クロノスのCDをうんと聞いてみるつもり。

注:「カル・パフォーマンス」とは、カリフォルニア大学バークレー校の、ゼルバック・ホール(Zellerbach Hall)を中心に行われる演奏会の総称で、有料と無料のがあるんですが、一般公開されてます。

2010年9月20日月曜日

絶賛、ジュール・マスネの「ウェルテル」

サンフランシスコ・オペラ、2010年、秋の公演が始まったんですが、ゲーテの「若きウェルテルの悩み」をもとにした、「ウェルテル(Werther)」は、すっごくよい出来!!

まず第一に、出演者のほとんど全員が、最高のパフォーマンス!

シャーロッテを演じたアリス・クーテ(Alice Coote)。今回が3度目のサンフランシスコ・オペラ出演なんですが、歌手として、今が最も円熟している時ではないかと思います。深ーい響きのある歌い方で、耳経由でなく、直接、体の中に入ってきて、心の壁をノックしてやまない感じ。滝になったり、せせらぎになったり、しぶきをあげたり、鏡のようにまわりの景色を映したりする、流れのよう。

「ウェルテル」はかなり近代的なオペラで、シャーロッテは、愛を打ち明けられてあせったり(「私のこと何も知らないのに、どうしてそんなに愛せるの?」)自分の気持ちを否定したり(「私にはフィアンセがいる!」)、ウェルテルの心配に捕われて取り乱し、夫をしらけさせたりという、心の動きの表現が求められるんですが、アリスは、声と演技でやってのける、大変な演技派。

シャーロッテの妹、ソフィイを演じたハイディ・ストーバは、サンフランシスコ・オペラは初出演なんですが、嬉しい事に、アリスに、十分に太刀打ちできる声の持ち主。

写真はシャーロッテとウェルテル。サンノゼ・マーキュリー・ニュースから。

前回、グノーの「ファウスト」で、バレンティンの役をやったブライアン・ムリガン(Brian Mulligan)が、シャーロッテのフィアンセ/後に夫役で、揺るぎないパフォーマンス。

ウェルテルを演じたメキシコ人テナー、ラモン・バーガス(Ramon Vargas)は、絶賛を受けてました。一幕目、アリア数曲のしめくくりが、ちょっとずれるような気がしたんですが、2幕目が進行するにつれ、迫真の演技。

リブレットもよかったです。「君の瞳はボクの地平線」とか、恋をしてる人にしか言えないような台詞が一杯。

ウェルテルは初めて聞くんですが、オーケストラも凄く良かったです。曲の流れや、楽器の使い方が(どこにどの楽器を使う)大変面白いだけでなく、個性のある音色の楽器を使って舞台を進行させるので、上の4人に加えて、5人目の登場人物であるかのような感じ。

ゲーテのオリジナルは読んだ事はないんですが、このオペラを見ると、結構おもしろそうなので、学生のころ、読んどけばよかったと、ちょっと後悔。

ビデオクリップをリンクしておきます。最初の二つがラモン・バーガス、次がアリス・クーテで、オーケストラの面白さがちょっと味わえます。赤いドレスを来たのがハイディ・ストーバ、次が夫役を演じる、ブライアン・ムリガン。

心と外界を舞台化したような、地下と地上のある舞台。地下でウェルテルの心の動き、地上はシャーロッテとの関係や、2人をとりまくまわりの環境が表現され、うまく作ってあると思いました。ただ、根元が銀で、葉っぱがスクリーン・ディスプレイの木、もうちょっとなんとかならないかな。例えば、スクリーンをもっとおっきくし、緑の美しさを強調するとか...

私はアリスに最大の拍手、オーケストラと指揮者のエマニュエル・ビローメ(Emmanuel Villaume)にも、次の最大の拍手を送りたいと思います。

2010年9月14日火曜日

ポイント・レイズのエルク

ゴールデンゲート橋を渡って、一時間くらいドライブすると、ポイント・レイズ連邦海浜公園(Point Reyes National Seashore)という国立公園があるんですが、そこへ一日ハイキング。

この日は霧がひどく、集合場所のマクリュアズ・ビーチ駐車場(McClures Beach)へ向かうにつれ霧が濃くなり、車の先端しか見えなくなった時はさすがに道路上停車、引き返そうかとも思いましたが、対向車が来るのさえ見えないので、そろそろ前進。

駐車場へ着いたら、けっこうたくさん車が停まってたので一安心。さっそくタマルズ・ブラッフ(Tamels Bluff)へ向かいます。

霧の中、はるか向こうに小さくエルクの群れを見たときは、「お久しぶり!」

2度目はけっこう近場で、その場にいあわせた、ハイカー全員の足を釘付けしてしまう自然のドラマに遭遇! 

写真:道ばたに残されたエルクの糞。おおきなソラ豆ぐらいの大きさなんですが、もっと厚いです。

エルクの親分1が、5〜6匹のメスを先導して、右手に登場、池に水を飲みにやってきました。

親分1が、のどかに水を飲んでるメスの群れを突然、威嚇、押し戻します。いったいどうしたの? 

ややっ!、左手、山の向こうに、成熟したオス2が登場! まるで、親分に挑戦するかのように、いななきながら、しっかとした足取りで、山を下ってくるではないですか! そのうち、中央の山からも、ハーレムを率いた、オス3が出現!

YouTubeにこの模様を、アップロード
しておきましたが、エルクの「いななき」と言うんでしょうか、それを聞いたの、初めて。聞きたい方は、是非、YouTubeへ行ってみてください。2本目リンクはこちらです。



水を飲み終わった、親分1と、そのハーレム(写真上)。ここには見えてませんが、少し離れた左側に、3〜4匹の、若いオスの群れが、休んでました。同じグループのようです。

この立ち会いのお陰で、特別ハイクとなりました。

帰り道で、またもやエルクに、極近出会いをしましたが、なぜかカメラが休憩モードで、写真を撮れず、残念!
写真:ポイント・レイズの最北端の断崖、タマルズ・ブラッフ。

2010年9月6日月曜日

失望、 ジョージ・クルーニーの「アメリカ人」

働く人の日記念日をはさんでの三日間連休が始まりました。

で、9月3日(金)は、ジョージ・クルーニー主演の「アメリカ人(The American)」を見に行ったんですが、プレビューの印象とはぜんぜん異なる、地味な映画。

「特殊銃作成を依頼され、イタリアの田舎町で、ひっそり手作り銃を作る、雇われ殺し屋の、つまらない日常」を描いた作品といった方が正解。

2つ席向こうのおじいさんなんか、途中で高いびき、奥さんに注意されたりしちゃって。

ま、ともかく、そんな田舎の狭い路地で、車とオートバイの華々しい追っかけ殺人がおこるんですが、そういう筋が信じ憎いです。騒ぎで、年寄りが心臓マヒを起こす場面なんかあったら、もちっと信じやすいかも。

ジョージ・クルーニーはこの映画の出資者の一人。自分で出資して、「孤独と恐怖に一人で耐えるボクは、まさに『The American』、この映画で、ボクの俳優生活XX年の記念にしたい」というナルシズムがじゃらじゃら見られる映画。その証拠に、ベスト・アングルで撮影した、ハンサムなジョージ・クルーニーが、たっぷり見られる、クルーニー・ファンには、ばっちり楽しめる映画。

「The American」は、アメリカの暗い将来を反映したような映画とも言えます。心理学に興味ある人には、多分、原作の方が面白いかも。