2009年6月15日月曜日

スベトラーナの「ラ・バヤデール」


写真:スベトラーナのバヤデール(youtubeから: 4ヶ月前のビデオなので、衣装も踊り方も今回のパフォーマンスに一番近い。)

ボリショイ・バレエが、バークレーで「ラ・バヤデール」を上演。

スベトラーナ・ザハロバが「ラ・バヤデール(舞姫)」、ニコライ・ツィスカリーゼが戦士のソレール、マリア・アレクサンドローバが、舞姫のライバルの、ガムザッティ姫を演じるというベスト・キャストでした。

素晴らしいパフォーマンスでしたが、特に心にジーンと残ったのが三カ所。

バヤデールが、ガムゼッティ姫の家で、舞いを披露する途中、モスラム風に挨拶するところがあるんですが、この世のものとは思えぬ美しさに、思わず息をひそめてしまいました。

舞台中央でパートナーの頭上に挙げられたバヤデールが、パートナーによって舞台を横切りつつ降下し、下手のソファに座っているお姫様の父君の膝に、頭を触れんばかりにして、三度、モスラム風挨拶するのですが、彼女の折り曲げられた足の膝が、舞台に触れることはありません。天女が雲に乗って降来するさまを描いた透かし彫りが正倉院にあったと思いますが、思わず、それを思い出してしまいました。

youtubeに、この場面を撮った2年前のビデオがありますが、ここでは足が舞台へついています。優雅さでは今回の踊り方のほうがすぐれていると思います。

第三幕の「影の王国」でバヤデールが、絹のヴェールを、ソレールと共に頭上にかかげながら踊る場面。バヤデールがトゥで立つと同時に両手をのばして、絹布をさらに高くフワッと翻す... これは多分、スベトラーナだけのバヤデールだと思いますが、このような細部までこだわるこだわり方。例えスベトラーナが才能あるバレリーナでも、毎日、そして何年もかけて踊ってこなければできない技と、思いました。

youtubeに、2年前に撮られた同じ場面のビデオがありますが、今の踊り方とは違って、薄絹布は、たまたま持っているので、動かしながら踊っているという感じです。ですが今回の踊り方ですと、なぜ薄絹でなければならないのかというのが伝わってきます。人の動きとはちょっと遅れぎみに翻めく、ヴェールの特別効果を生かしている感じがします。まだ今のようなスペシャル・イフェクト(効果)がなかった時代に考案された、ヴェールを使った昔のスペシャル・イフェクトなのではないでしょうか。

スベトラーナのようなバレリーナになると、いつも同じ踊り方を繰り返しているわけではないんですね。いつももっと美しい踊り方を模索しながら踊っているのがわかります。

第二幕の、ガムザッティ姫とソラールが婚約を祝って踊りますが、その息の合かた! ジャンプしても床についてもゴムひもでつながってるかのようにボディ間の距離は一定、二人の曲げた腕や体とかが、当たり前のように同心円を描く...

4ヶ月前にアップロードされたビデオをリンクしておきますが、踊り方や彼女の雰囲気、衣装は今回のパフォーマンスに近いです。舞台装置はほとんど同じです。

またバークレーに来て、他の作品を見せて欲しいものです。