2011年12月13日火曜日

ハッピー ホリディ シーズン!!

皆様、いつも訪問していただいて、また、メールをくださったり、本当にどうもありがとうございます。

私は明日、日本へ行くので、これが今年最後のサンフランシスコ発。皆様にとって、今年のクリスマスが素晴らしいものになるよう、心からお祈りいたします。

オペラハウスのロビーのクリスマスツリー。
今、バレエ「くるみ割り人形」が上演されてます。

2011年12月7日水曜日

SFMOMA のフランセスカ・ウッドマン写真展

フランセスカ・ウッドマン(Francesca Woodman)写真展。

久しぶりに、写真を撮ったその時の作者と、心の会話をかわしながら見た写真展でした。

フランセスカが抱えていた「女」という問題、どうしたら解決の糸口が見つかるのか探る楽しみとか、謎の深さにくたびれたりとか、彼女とほぼ同時代に自問、他問したからでしょう。

「自問する」と「他問する」っていうのを形にすると、こういうふうになるという展覧会。

2010年代に、体力と知的吸収力の頂点(注:思考力ではありまセン)を迎えている女性やその他の人たちとは、ちょっと違った「女という『問題』」だったと思います。彼女の、ひるむことない問題の追求の仕方の力強さ、わからないことをわからないこととして提示し続ける正直さ、強く訴えるところがあるんでしょう。サンフランシスコの写真展にしては、珍しく混んでました。

写真の対象は、22才で命を断った芸術家、彼女自身。最後の方に展示してあった腕の写真の、肩から腕を経て指までの形、他の腕の指で押した二の腕のへこみの造形が面白く、光り輝く作品でした。

自分の女性というボディを媒介に、自由自在に変わる「形」の美しさと面白さ、そして女という「形」に、執拗についてまわる「意味」の不思議さと理不尽さにこだわりながら、生き急いだ生涯だったと思います。


フランセスカの写真が見られるウェブページをリンクしておきます。ここに出ているのは、最後の一つを除いて、全部、出展されてました。

この写真展は強くお薦めです。

SFMOMAのページをリンクしておきます。

2011年12月5日月曜日

サンフランシスコ・ベイ・エリアのいちじく

裏のガレージのそばに、高さ3メートルぐらいのイチジクの木があるんですが、今年はイチジクの成り年。手の届かないところにわんさか、成ってます。

サンフランシスコ・ベイ・エリアで見かけるイチジクって、東京に生えてるのとちょっとちがいます。

大きい実は高さ5〜6センチ、直径は4センチはゆうにあります。
だいたいは3センチぐらいのこぶりの実。肥料もやったことがなくて、放っておいてるせいかもしれません。
お店で売ってるイチジクはほとんど緑。紫のも、秋が深まると短期間売ってますが、品種が違うかんじ。


ご興味のある方のために、高解像度の写真をアップロードしておきます。クリックすると大きくしてじっくり観察できます。

2011年11月20日日曜日

アニタ・ラチベリシビリの「カルメン」、ダイナモ!

幸運!

本当はケイト・アルドリッチ(Kate Aldrich)がサンフランシスコ・オペラの「カルメン」をやる予定だったんですが、妊娠で欠場。で、アニタ・ラチベリシビリ(Anita Rachvelishvili)という人が代役、それが、それが、それが、ものすごい幸運なことにダイナマイト! 

最初のアリア、ハバネラの出だしの一声で、オペラハウスの観客が、「すごいカルメンを聞けるのでは?!」と直感、場内に、急にピーンとした空気が張りつめます。緊張の静けさで一杯の場内は、喉が乾ききった、巨大な空のコーヒーカップのよう、そこへ赤銅色の妖しくも温かく光る、類いまれな響きと力と深さを持った声が、こんこんと注がれたのです。私の斜め前に座っている女性のあごが、文字通り、驚きで下へガクンと落ちるのが見えました。

Youtubeで見つけたアニタのハバネラをリンクしておきます。どこでいつ上演されたのかわかりません。衣装がとてもドンクサ。サンフランシスコのは、2009年7月の、スカラのアニタの衣装ほどモダンではないけど、最初のリンクのよりかはぜんぜんまし。当時のたばこ工場のもようを、時代により忠実に再現したような衣装やセッティングでした。

この写真は、サンフランシスコのカルメンではなくて、こちらのカルメンからスクリーン・ショットで撮ってきたんですが、アニタのカルメンの雰囲気が似てます。リンクしたハバネラも聞き物。ここでの声が一番、私の聞いたのに近いと思います。

このあとアニタが「セギディーリャ」として知られてる唄を歌うんですが、スカラのをリンクしておきます。

第二幕の酒場のシーンの唄。アニタが踊りながら歌うんですが、頭や手や腰の振り方なんかそっくり。サンフランシスコでも、ホセと舞台で横になって、映画なみの愛情シーン。・カルメンになりきる度胸のある、グルジア出身の現代っ子歌手。

彼女の素晴らしいジプシー・ソング。ベルリン国立オペラ公演。ますます大舞台なれしてきてるのがわかります。

同じくベルリン国立オペラからのカード占いの唄ハバネラ

アニタの唄を聞くだけで、十分に価値ある舞台。彼女のカルメン、大きくお薦めです。


あとは、ホセの婚約者、ミカエラを演じた、アドラー・フェローのサラ・ガートランドがよかったです。

11月22日:新聞にアニタのカルメンのレビューと写真が出てるので、リンクしておきます。

2011年11月6日日曜日

サンフランシスコ・オペラの「クセルクセス王」

幕が上がって最初の5分もしないうちにスーザン・グラハム(Susan Graham)が歌うアリアで、このオペラの成功は99パーセント約束されました。

スーザンの美しい声と、確かなコントロール! 人の気持ちを変えることは誰にもできないという認識がありながらも、自分のことを好きではない人に、自分のことを好きにさせるのは自分の生まれながらの権利と思っている、わがままな王様を堂々と、軽快に演じる、宝塚の男役並みの演技力。三拍子そろってます! でもスーザンの最大の特徴は、複雑な感情を、声に込めて表現できることでしょう。 

下にリンクしたビデオクリップで、スーザンがどのように丁寧に歌っているかが見られます。

品位と、優雅さと、性格の良さが出てる、スーザンならではのクセルクセス(Xerxes)王。背が高いのも幸いしてるんですね。衣装も、そういう王様をばっちりサポート。

サンフランシスコ・オペラには「メロラ・オペラ」という、オペラ歌手になりたい人のための養成コースがあるんですが、スーザン(NYのメッツ所属)も、そこの卒業生なんですね。だから、わりとよく、サンフランシスコに来るのかもしれません。ありがたい事です。

以前に「ウェルテル」に出たハイディ・ストーバ(Heidi Stober)もよかったです。

ディビッド・ダニエル(David Daniels)はずいぶん前に、ジュリオ・シーザーを、ルース・アン・スワンソンのクレオパトラで歌った事があるんですが、当時に比べて声も伸び、ものすごーく上手になってました。カウンターテナーでは、押しも押されぬ、世界のトップになってるんですね。

今回の話題は、ロミルダを演じたリセッテ・オロペサ(Lisette Oropesa)でしょう。声もいいし、パワーもあり、遠慮なく演技力を発揮してますが、やはり経験が浅くて、声が一本気、感情を歌で表現するということは、まだまだです。あまり私の好きなタイプじゃないですが、順調に行けば、これからのアメリカのオペラを支えてゆく一人でしょう。最近オペラに出てくる若い歌手は、全体に水準が高いです。

舞台: ゴルフのパットの室内練習用グリーンみたいな芝生の色はあまりにチープで私の好みじゃないですが(下の写真の絨毯を参照してください)、わざとそういう色を使ってるんだと思います。ギリシャの時代劇をヘンデルの時代の衣装で上演するという伝統にのっとり、ギリシャ的なものとはちぐはぐな物を、わざと舞台で使うという、川柳的趣向だと思います。その結果が、第二幕の屋外喫茶店風の舞台、第三幕では、サボテンの鉢が舞台にゾロリ。このサボテンの場面、気に入りました。(下のビデオ・クリップ参照)

遠景は三幕とも同じで、アリゾナというか、ネバダというか、そういう風。どこまでも続く青い空と、茶色のプラトーと砂漠と乾いた空気という景色。ギリシャだか、メキシコだかの古い遺跡の跡が小さく見えます。

衣装は舞台の登場人物をうまく支えています。
写真: 舞台の雰囲気。向かって右がアトランタ役のハイディ・ストーバ、左がロミルダ役のリセッテ。向かって左のメジャーでない登場人物は、皆、上から下まで、メークアップを含めて灰色。貴族や兵士の役をやっているコーラスの人たちです。

ヘンデルのオペラは、歌声を楽しむオペラ。登場する人が皆、美しい声をしてるし、演技力があるので、この喜劇、十分に楽しめます。今シーズンのベスト(「戦士の心」を除いて)。

初日のビデオ・クリップをリンクしておきます。一番最初に歌ってるのがスーザン。次が、サボテンの鉢の舞台で歌うディビット。その次がパワフルなリセッテ、続いてスーザン。

新聞のレビューのリンクはこちら、写真はこちらで見てください。

2011年10月31日月曜日

2011年、ハロウィーンの飾り付け

サンフランシスコ市内で見かけたハロウィーンの飾りつけ。

普通の家なんですが、現在工事中なのをうまく使ってます。大きなクモが4匹!

子供のいる家のスタンダードな飾り付け。子供たちは、飾り付けある家にだけ、「トリック・オワ・トリート」に行きます。つまり、ハローウィーンの飾り付けのある家は、子供たちに、「来ていいよ」という合図を出してるんです。

入り口から玄関まで、階段を上るだけでなく、かなり距離があるので、小さい子供には無理かも。キッズ・フレンドリーな飾り付けではないので、ただのデコレーションなのかもしれません。

こちらは子供を呼んでる飾り付け。

窓の飾り付け。

ここまでゆくとアート。

2011年10月27日木曜日

テレビ番組、「チェルノブイリの被爆狼」

先週、KQED(公共放送)の「自然」という番組で、「チェルノブイリの被爆狼(「Radioactive Wolf」が原題)」という50分ものを放送。

1986年の4月26日のチェルノブイリ(Chernobyl)原発事故で、広島の原爆の約400倍もの放射能が放出されました。その後、発電所のまわりの約2,850平方キロメートルにわたる地域が、人間が住むには不適切と判断され、住民40万人が他の地域へ移民、「無人地帯」として今日に至っています。
ベルロースとウクライナにまたがっている閉鎖地域 (番組からのスナップ)

ひとたび人間が去ると、もともと森と湿地で覆われていたチェルノブイリの自然が、予想以上の早さで戻ってきて、今はムースやビーバー、さらに絶滅危惧種の動物が住み着き始めました。

特に狼は、天敵の人間に射殺される事がなくなったため、被爆しているとはいえ、数的には回復し、現在、約120匹が、無人地帯に住んでいると推定されてます。この狼”口”密度は、狼の通常の生息地と同じ密度だそうです。
被爆狼に麻酔をかけて調査。狼の毛を吸って内部被爆を起こすのを防ぐためマスクを着用。

でもチェルノブイリの自然は、放射能で汚染された自然。そんな環境で、目に見えない危険に、生き物がどのように反応し、存続するのか、また、被爆がどのような影響を与えるかを調べるため、食物チェーンのトップである狼やハヤブサのようすなど、今までの研究の成果をまとめたのが、この番組。
狼が食べたムースの骨。骨から通常の50倍の放射能が。

人のいなくなったアパートに巣をはるハヤブサ。ハヤブサも食料チェーンのトップなので、放射能がどのように影響するかの調査の対象になっている。

福島原発事故では、2011年10月25日付けのサイエンティフィック・アメリカン誌(Scientific American)で、チェルノブイリを上回る、大量の放射能が放出されたという、最も新しい結果が報告されてます。

人間がいなくなったために復帰したチェルノブイリの被爆自然、これはいずれ福島も起こることだと思います。そういう意味で、興味深い事実なので、何かの参考になると思い、この番組をリンクしておきます。番組は英語、ある程度、時間が経つと、リンクは消滅すると思います。

時間があったら、さわりの部分を日本語に訳しておきますが、がんばってトライしてください。

2013年3月17日注: 日本でアメリカのPBSの番組がウェブで見られないようになってるせいか、それとも期限が切れたのかわかりませんが、ハイバーテキストが番組にリンクされてないのがわかりました。しかたないので、番組紹介の方にリンクしておきました。アメリカ内の人にはちゃんと番組にリンクされてるのかもしれません。

2011年10月24日月曜日

文部科学省が「放射線量等分布マップ」をウェブで公開

日本の文部科学省が、福島原発事故以来、今までに測定・計算した、放射線量等分布マップを公開

東京、神奈川を始め、茨城県、山形県、群馬県、埼玉県、千葉県、新潟県、秋田県、そして福島県西部のデータを発表してます。これは皆、2011年8月31日以降に測定、計算したもの。

2011年8月30日に、セシウムの土壌濃度を計算により算出し、放射線量マップに追加するという変更があったようです。栃木県と宮城県のモニタは、それ以前に行われたので、セシウムの土壌濃度が入っていないようです。


元素が半分に減る期間を半減期といいますが、セシウム137の半減期は30年強。自然界には存在しない元素で、地面の表面に「溜まる」とでもいうんでしょうか。水に解けやすく、野菜とかきのこに吸収されて、人間の体内に入るそうです。ここにウィキペデアの情報をリンクしておきます。

国民のみんなが関心を持っている情報を公開してくれた文部省に「ありがとう」です。

2011年10月18日火曜日

サンフランシスコ・オペラの「ドン・ジョバンニ」

新しいプロダクション(制作)の初日だったんですが、皆さん、ウォームアップできてないのか、一幕目は声が小さくてパンチ無し。ルーカス・ミーケム(Lucas Meachem)のドン・ジョバンニ、一幕目は、サングラスをかけたただのおじさん、二幕目で、遅まきながら、女たらしの悪貴族風になりました。

ドンナ・アンナを演じたのは、去年、フィガロで伯爵夫人を演じたエリー・ディーン(Ellie Dehn)。声は好きなんですが、良くなったと思ってると、ウォームアップ状態に戻ったりの繰り返しをしてるうちに、オペラが終わってしまいました。見せ場の高音がちょっとはずれたりして、本人も当惑したような感じ。

ゼリーナの場合は、オペラ・ハウスで歌うには、歌手として、まだ未熟なのかも。サンフランシスコ・オペラ・ハウスは奥行きがメッツよりも深いので、かなりの発声量がないと声が通りません。このため、故パビロッティも、サンフランシスコに来るのを嫌ったと言われてます。(下にリンクしたビデオで最初のメヌエットを歌ってます。)

ドナ・エルビーラを演じたセリーナ・ファノッチア(Serena Farnocchia)は、最初から最後まで、安心して見てられました。声もいいし、張りがあるし、感情も注げるプロ。

一幕のしょっぱなで、ドンナ・アンナのお父さんの騎士団団長は、ドン・ジョバンニに殺されてしまいます。お墓には、生前の装束をまとって椅子に座っている大理石の彫刻(下の写真参照)。

真夜中、ドン・ジョバンニと従者のレポレッロがそのお墓の前を通りかかると、彫刻がちょっと動くような気がしたレポレッロ、「ギャアー!」。ドン・ジョバンニは、幽霊なんか怖くないとばかり、「今夜、是非、私の家へディナーに来てくれたまえ」と、彫刻を招待。すると大理石の頭が頭を上下にふって、承諾の意を示します。

騎士団団長の幽霊がディナーにやってくるんですが、ここは舞台制作上、いつも困る場面だと思います。例えば、ディナー・テーブル上に、突然、ブラックホールが出現した風だったり、爆弾炸裂風だったりで、それまでの話しの内容と比べると、あまりの深刻さ。私はいつも大しらけなんですが、今回の幽霊とのディナーシーンは、今まで見た中でベスト。

顔も手も、頭のてっぺんからつま先まで灰色一色の団長の幽霊。それが怨念をはらすために、墓場の墓石から降りてきて、ドン・ジョバンニの家に来るという、「怖さ」と「真実味」のあるストーリー展開。

残念ながら、この幽霊とのディナー・シーン以外は、あまりにありきたりで、チープで、退屈な舞台デザイン。モーツアルトをやればお客が入ってくると思って、制作費を節約したんじゃないでしょうか。

初日だったので、そのうち、本調子が出てくるとは思いますが、この初日、最後の30分が良かったです。

新聞のレビューと写真をリンクしておきます。

初日のビデオ・クリップをリンクしておきます。三人目のブルーのトップを着ているのがセリーナ・ファノッチア。次がエリー・ディーン。

2011年10月11日火曜日

サンフランシスコの新オアシス、パークレット

この夏ごろから、サンフランシスコのあちこちで、パークレット(Parklet)というのが目につくようになりました。

道路上のメーター付き駐車場スペースの一部や、無駄にほっとかれてるスペースを「箱庭式ガーデン」に変えて、街に緑を多くしようという試み。

下の写真はバレンシア通りのアイスクリーム屋さんの前に出現したパークレット。台形の高さ、1メートルくらいの、ブックエンド式箱庭にはユッカや多肉植物が植わってます。内側はベンチのように張り出していて、座わってアイスクリームを食べたり、おしゃべりできるようになってます。

ブックエンド式箱庭の一方はこんな感じ。

同じくバレンシア通りの自転車さんの前に出現したパークレット。

バレンシアのクレープやさんの前のパークレット。現在拡張中で、プランターがぐるりと舗道上のテーブル席を囲う予定のよう。「Public Parklet」という表示が見えてます。

パークレットは、サンフランシスコが生み出した不況対策だと思います。去年の冬頃まで、レストランや独立系フィルム専門の映画館のあるバレンシアは駐車が大変難しかったところ。週末だと、道路の両側の駐車スペースはすぐいっぱいになり、道路の真ん中にある中央分離域に違法駐車をするしかありませんでした。お巡りさんは100パーセント無視するわけにはいかないので、たまにはやってきて、違法駐車にのこそぎティケット発行、すぐに動かさないと、レッカー車で持ってかれてしまうこともあったんです。しかし最近、道路三列駐車は姿を消しました。ということは、車の量が、少なくとも4分の一は減少したことになります。不況の影響に間違いありません。

歩行者の数を増やし、街を元気にするにはどうしたらいいかというということから始まったと思われるパークレット、グッド・アイデア。緑が増えれば街も美しくなるし、歩行者にとっては歩くのが楽しくなるので、自然と人も増える、そしてお店にも人が入るという、一石三鳥のアイデア。 ぞろぞろ並んだ車を見るより、パークレットの緑を見てるほうが、それこそ、心が癒され、空気も新鮮な感じで楽しく、この試み、サクセス!

2011年10月6日木曜日

ありがとう、スティーブ・ジョブス

スティーブ・ジョブズ(Steve Jobs)が今日の午後に亡くなりました。

もうわかっていたことでしたが、あと一年くらいはとゆっくりと生きるのだろうと思ってました。

アップルのサンタ・クララ・バレー・キャンパスはクーパティーノにあります。(クーパティーノの皆さんは、今頃、光が一つ消えた悲しみに、何となく気持ちが沈んでと思います。私も同じです。)キャンパスが広域に渡っているので、どのビルだか思い出せないんですが、一階の壁に、スティーブのと思われる言葉が、壁一杯に書かれてるビルがありました。それを何気なく読んで、度肝を抜かれた事があります。

「自分のアイディアが正しいと思ったら、上司が無視しようとしたり、つぶそうとしたら、戦おう」、「僕たちがしたいのは革命だ」みたいな、マニュフェストが、上から下まで、どうどう書かれてるんですよ。

当時、アップルがそんなスティーブのスピリットを会社の信条にしてるとは思いませんでしたが、こういうこと、壁に提示してる会社、日本にはあり得ないなーと舌を巻き、こんなとこなら(もうすでに大会社だったんで)働いてもいいなとか思ったと思います。どちらかというと、驚きを顔に出さないよう、苦労した次第です。

最近っていても数年前ですが、スティーブのスタンフォード大学の卒業式でのスピーチを聞き、あの壁に書かれていた事が触れられてるのに気づきました。よいスピーチなので、一度くらいは無理して聞いて欲しいと思うので、ここにリンクしておきます。

前に私が働いていた会社の道路を挟んで向かい側のサンフランシスコ湾沿いに、なかなか素敵な、ガラス窓の多い、2階建てのビルの建設が始まりました。そのビルの前のグラウンドで若い子がサッカーしたりするのが見えて初めて、新しい会社が入ったのに気づきました。ある日、普段はわざわざ歩いて行く事も無いその敷地の前を通る機会があったので、ついでに門をひょいと見ると、小さくネックスト・コンピュータって書いてあったので、「ああ、これが」なんて思ったものです。

黒いポルシェがスティーブの車なのは、言われずとも気がつきました。車の前に飛び込んで、「ハロー」って言って自己紹介したらどうかしら、なんて冗談を言ったもんです。会社に隣接しているサンドイッチ屋さんにスティーブが時々来ていて、合った人が「なんていやな奴なんだ」とか言ってました。私は、あんな有名人が、サンドイッチ屋で合う人ごとに、親切にしてられる訳も時間もあるはずないじゃんと思ってました。

私の会社の受付から、ネックスト・コンピュータの門を過ぎてもっと向こうのビルのガラス越しに受付が小さく見え、その受付の子とスティーブがつき合っているといううわさがありました。

私は会社ではPCを使いますが、私が初めて使ったコンピュータも、自分用に購入するコンピュータも全部、アップル。馬鹿チョンカメラ級に簡単: ソフトも自分で入れられるし、メインテナンスもほとんど必要ないので、私のようなコンピュータ音痴(無知)でも、簡単に使えるからです。

幸運なことに、日本だって、他のアメリカの会社にだって考えられないような人たちが働いているアップルに少しの間、働く事ができました。そしてそのマネージメントの考え方とその実践にふれたことは、たいへん意義のある経験でした。今でもきちっと記憶に残っています。今だにアップル以上の会社に出会った事がないのは、残念なことです。

アップルのヘッドクオーターに行った事のある人なら気がつくかもしれませんが、インフィニット・ループ1のビルを取り巻くデザインそのものが、スティーブの考え方を反映してると思います。ビルを見て、スティーブはサイクル理論を信じてるなとピーンと来ました。

アップルが、スティーブの革命的言葉が壁にどうどうと書かれているあのビルを、スティーブの記念として、ずっと残して欲しいと願うばかりです。アップルのカフェテリアには、ちょっと危険を犯して行ったものです。距離的には近いんですが、大きな道路をJ−ウォークしなければなりません。J−ウォークというのは、横断歩道でないところで道路を横切ることで、一応、道路交通法違反。虫の居所の悪いお巡りさんに見られると、チケットを切られたりすることがあります。でも車で行くと大回りなので、このJウォークが入っている「獣道」を伝ってカフェテリアへ行きます。カフェテリアの真ん中には、赤いリンゴが入っている大きなバスケットが置いてあり、誰でもピックアップできるようになってます。気の利いた習慣なんで、今まで通り、続けていくんだろう思います。ごく普通のリンゴなんですが、自分のオフィスに持って帰って、おなかのすいたときに、かじったものでした。

うさぎの糞的な、ポツポツ文章になりましたが、アップルのサイトをリンクしておきます。スティーブのイメージをクリックすると、お悔やみとか、自分の気持ちを書けるようになってます。

私達の生活や、コミュニケーションや、仕事の仕方を変えたスティーブ。パッションを持って毎日生き、新しいものを作り、生きる事に一生懸命だった彼が地球を去ってしまうのは悲しいですが、これからは果てしなく美しい銀河系宇宙を、彗星のように、ずーっと、ずーっと飛んで行くんだなーと考えるのがいいかなと、いつになくしんみりと思ってます。

家族に囲まれて、ピースフルに、眠るように逝ったということです。

追記:10月7日 CBSニュースをリンクしておきます。

2011年9月30日金曜日

津波をいきのびて(Surviving the Tsunami)

昨晩、サンフランシスコの公共放送、KQEDで、特別番組として「津波をいきのびて(Surviving the Tsunami)」という番組を放送しました。

NHKが製作した番組に、英語の説明と字幕がついたもの。日本語もはっきりときこえます。

こちらにリンクしておきます。時間がある程度経過すると、リンクは消滅するとおもいます。


KQEDは、3月11日東日本大地震の起こった翌月に、地震についての特別番組を報道しています。こちらにリンクしておきます。

2011年9月29日木曜日

リージョン・オブ・ホナーの花

前に、リージョン・オブ・ホナー(Legion of Honor)について書きましたが、たいへん美しい白亜の美術館。

ゴルフ場に周囲を囲まれてますが、東側は、ゴルフ場の向こうの、松の木立のそのまた向こうに、真っ青なサンフランシスコ湾が望めます。フォグが入っていると、青い海のかわりに、真っ白な雲が赤いゴールデンゲート・ブリッジまでえんえんと見え、自然の不思議をカメラにおさめたくなります。臨海丸のサンフランシスコ到着を記念する石碑が、美術館とゴルフ場の間の道路沿いに建ってます。母を連れてきたとき、石碑を見て大変喜び、母の親戚が、使節団に加わっていたという話しをしてくれました。美術館はまた、ヒッチコックが「めまい」の撮影にも使ったことでも知られてます。

リージョン・オブ・ホナーからの、サンフランシスコ湾とゴールデンゲート・ブリッジ。

同、フォグで覆われてるサンフランシスコ湾とゴールデンゲート・ブリッジ。

ロダンの彫刻のコレクションが有名なこの美術館、でもここをもっとスペシャルにしてるのは、館内の花。フラワー委員会があって、毎週一回、入り口と女性のレスト・ルームにある花を活けてくれるのです。クラッシーだったり、可愛かったり、どちらにせよ大胆なデザインのフラワー・アレンジメントです。
チケット販売に飾ってある花。家庭の入り口に設けられてる花壷様式を取り入れた、サンフランシスコらしいアレンジメント。

ロダンの部屋の入り口。

トイレの花。これを見るために、必ずトイレへよります。

新しくなった花。(ロダン)

新しくなったトイレの花。

この間、ひんぱんにリージョンに行く機会がありました。ロダンの前の花。

トイレの花。紫の花はアーティチョーク。誰もいなくなるのを待って撮るのは意外と時間がかかります。

2011年9月27日火曜日

福島原発事故、その後: アメリカの報道等

今年の6月後半、私が日本にいたとき、たまたまNHKが福島第一原子力発電所事故30分番組特集を夜の7時半からやっていたので見て、ものすごく驚いた事があります。

当時(今でもかもしれませんが)、原子力発電に関するトップの責任者である原子力発電取締役(正式名称は違うかも)が、NHKのレポーターの「外部からの電源を確保すれば、(原子燃料の冷却装置が動きだして)解決すると思っていたのですか?」という質問にたいして、「はい、そう思っていました」と、答えた時です。「え〜っ!」これには腰を抜かすほど驚きました。

「Aがうまくいかなかった場合を考えて、B案を考えといて」ぐらい、普通のビジネスだって、言うんじゃないですか。 

こんなことじゃ科学者の端にもおけない!と、 数日後、日本の友達にこのことを話したら、「ピリット、あの人は理科系出じゃなくて、文科系なのよ!」それと聞いて、さらに「えええ〜っ!!」 そんな人がどうして原子力発電関係取締役になるの〜?!? 

ところで最近、福島原発事故その後がどうなってるかは、日本にいる日本人が一番よくわかってるというわけではないことが分かってきました。アメリカ人友達に聞いたら、どうもアメリカでもあまり報道されていないようようです。最近、カリフォルニアで、空気中の放射能値測定を中止したようなことを言ってました。

半信半疑ですが、アメリカで目についた報道があったのでリンクしておきます。

ビデオ中に、事故から160日経っているという発言があるので、2011年8月中旬と8月21日の間に放映されたニュース。福島で働いている人がアメリカの友人にあてた電子メールが番組中に出てきたので、下にアップロードしておきます。

ガンター(上)さんは、さらに溶け出したコアが地下水に届き、水蒸気を出しているのではないかと、述べてます。


同じ話題のニュース


キャスター: 崩壊した原発のまわりの地面にひびが入り、放射能を含んだ水蒸気が空気中へ漏れているとのことです。...広島平和研究所のロバート・ジェイコブ博士に伺ってみましょう。

ジェイコブ: 深刻な事態に発展してると思います。7月31日に6.4、8月12日に6.0の地震があり、そのため、地下中のパイプ、もしくは構造物が壊れ、放射能で汚染された水が土壌中に漏れ、さらに放射能が水蒸気に混じって上に上ってきている可能性があります。... 地震により溶け出した燃料コアが、地中で動き、前とは違った場所に放射能を出しはじめている可能性があります。

怖がらせるのが目的ではないので、英語の部分はちゃんと聞いてから、判断してください。

最近、世界のあちこちで火山が爆発したり、大地震があったり、地球が活動期に入ってきたような印象を受けます。かといって、日本中の原発をただちに停止するというのは無理があるので、今年以内に原発廃止のロードマップ作成、なるべく速く脱原発の方向へ歩みだして欲しいと思います。

経団連の発言力ある企業が、現在進行中のプロジェクトを含めて、原発に多大な投資をしてると思いますが、多分そういう会社が、脱原発に消極的なんじゃないかなー。こういう会社だって、日本政府の方針に従ったわけですから、悪者にするのもよくありません。すぐに現状調査をし、その会社の原発投資の年月、割合に応じて、脱原発研究費を支給する、プロジェクトの再検討、もしくは脱原発開発に取り組む場合には税金の優遇等を考える等、やりかたはいろいろあると思うんですけど。

アメリカでは、日本の技術力は大変高度と言われてます。特許出願数を見ても、日本は世界一(2010年統計)。ドイツに脱原発で先手をとられないよう、また中国にはできないような、優れたデザインの脱原発体制を整えれば、日本の経済復興にもおおいに役立つという、一石二鳥じゃないかと思うんですけど。

(9/28/11アップデート)

2011年9月19日月曜日

サンフランシスコ・オペラの「テューランドット」

サンフランシスコ・オペラで、久しぶりにテューランドットを上演。

テューランドットを演じたのはイレーン・セオリン(Irene Theorin)、カラフはマルコ・バルティ(Marco Berti)、出演者全員の歌力もパフォーマンスはベリーグー。聞き慣れたスコア、すばらしい合唱と舞台セットで、安心して、十分、エンジョイできるパフォーマンスでした。
写真:身のこなし方、視線一つで、テューランドットを演じるセオリン。

特筆すべきは二つ。まず、リウを演じたリア・クロセトー(Leah Crocetto)。現在、アドラー・フェロー三年目。これから世界へ羽ばたこうとしている彼女のパフォーマンス。発声では、イレーンやマルコという、同じ役柄を世界の舞台で数十回とやってき長年のプロにはまだちょっとかないませんが、よく彼らに劣らずに歌い上げたというのがすごい。コントロールも確か。

感情をこめて、一音一語、丁寧に歌いあげるパフォーマンスに、観客も確かに反応して、カーテンコールでは、先輩を凌ぐ、嵐のような拍手で迎えられました。このパフォーマンスで、大プロからも、これからのオペラを支えて行く若手として受け入れられたという印象を受けました。これから経験を積み、どんどん伸びるでしょう。

もう一つは舞台。以前に見たのと同じプロダクションですが、舞台の設計、光、照明、コスチュームも含めて、一つの極められたアート。特にテューランドット等が入場するZ字型の、舞台上の「花道」、背景に見える、故宮を連想させる宮殿の壁、遠くに見える、寺院っぽい住まいの屋根の、切り絵的シルエットは意外で、斬新。コスチューム・デザインも、目をひきつけられます。今回は、兵士のコスチュームに目がいきました。写真がのせられないのが残念! 光の使いかたも素晴らしく、等身大でシリアスに演じられる大人のおとぎ話の世界を作りあげます。

オペラというのはどんなものかしりたい人たち、将来、舞台設計に進みたい人も含めて、安心して、最後まで楽しく見られるパフォーマンス。

初日のパフォーマンスのビデオ・クリップをリンクしておきます。

テューランドットのレビューはこちら

写真だけ見たい人はこちらをクリックしてください。

2011年9月12日月曜日

サンフランシスコ・オペラの「戦士の心」初演

昨夜は、新作オペラ、「戦士の心(Heart of a Soldier)」の初演でした。

イギリス、アメリカ、アフリカ、ベトナムと、イスラム文化が、傭兵・兵士の視線の中で出会い、9/11で、ピークを迎えるという、スケールの大きい異色ドラマ。サンフランシスコ・オペラが、作曲家、クリストファー・シーファニーダス(Christopher Theofanidis)に依頼して、ジェームス・スチュワート(James Stewart)の同題の実話をオペラ化したものです。

お話: イギリス人傭兵のリック・リスコーラ(Rick Rescorla)と、アメリカ人傭兵のダン・ヒル(Dan Hill)1962年のアフリカの戦場で出会います。気のあう2人は、リックのアメリカ人帰化後、米軍に入隊、1965年に2人とも、士官としてベトナムへ。そしてベトコンに囲まれて危うく命を落としそうになるダンをリックが、軍の指令を無視して救出、友情はさらに深まります。

1998年、リックはモーガン・スタンレーに安全部重役として入社、ニューヨークのワールド・トレード・センターのオフィスに勤務。スーザンと出会って再婚します。

ダンはイスラム教に惹かれて改宗、アメリカの市民生活に適合できずに、再び、兵士としてアフガニスタンへ出兵。リックに依頼されて、ワールド・トレード・センターの安全性を検討、双子ビルは、テロリストの地上と空中からの攻撃に弱いという結論に達します。それを基に、リックは、異常時が発生した際の避難訓練を企画し実施。非常時に、隣にいる人とパートナーを組み、歌を歌いながら、オフィスのトップ階(トップは107回でレストラン)の106階のオフィスから、地上へ、階段を使って避難するというもの。重役でも、この訓練をさぼることはできません。

あの9月11日、リックは、ビル管理側の命令を無視して、直ちに避難命令を出し、その結果、モーガン・スタンレーのほとんど全社員にあたる2700人が、ビル崩壊前に脱出に成功、命拾いをしますが、残りの人がいるかどうかを確かめるためにビル内に戻ったのが、リックの最期となります。

戦場での兵士同士の交流や、親友であることの確かめ方などのリベレットがわかりやすく、ユーモアたっぷりで、映画のような感じ。

スーザンもリックも50代で離婚の経験者。出会いの不安と心のときめきを歌うスーザンですが、気持ちが正直に描かれていて感動。リベレットを作る人の力はすごいものです。写真下:リックを演じるトーマス・ハンプソン(Thomas Hampson)と、スーザンを演じるメロディー・ムーア(Melody Moore)。トーマス・ハンプソンがSFでフィガロを演じた時から好きなバリトンです。

ダンを演じたのはウィリアム・バーデン(William Burden)は、ハンプソンを凌ぐ力強いパフォーマンス。また是非、サンフランシスコに来て欲しいです。写真下:イスラム教への改宗を決心するダン。

アドラー・フェロー一年目のネイディーン・シエラ(Nadine Sierra)がジュリエットを演じたのですが、役になりきる力、またアリアそのものもよかったです。戦場へ出す手紙に香水をしみ込ませるなんて、以前だったらばかばかしいくらいにしか思わなかったと思いますが、ネイディーンの歌で、命への願いとかが伝わってきました。悲しいことです。写真下:トムを演じるマイケル・サムエル(Michael Sumuel)とジュリエット。彼もよかったです。

今回は、いつもとはちょっと違う人たちが劇場内にたくさん。私のいたところには、アメリカ人軍人用一画が設けられていたので、制服を着た兵隊さんがどんな反応をするかと、ちょっと興味津々。多分、普段はオペラには縁がない人たちと思いますが、でもストーリーがうまく語られてたので十二分に受けてました。

スコアもよかったです。特に始まりの部分は、息を吸い込むと広がる胸のように、スコアが聴覚を解放するようで、これから違った世界へ連れていくんだなと、感じさせます。

2幕目の最期の部分は、演出等々、もうちょっと向上できる余地があると思いますが、第一幕はたいへんうまくまとめられてました。一幕目の最後にモスラムの歌とメロディー(Mohannad Mchallah)が入るのですが、それが欧米のスコアとの相性がたいへんよいのでびっくり、モスラムの旋律の美しさに目が覚める感じ、心をふわーっと背中の後ろの方の、地球上の未知の世界へ広がせる感じです。この部分は、イスラムには拒絶反応を示すアメリカの現状をしっかと意識した、勇気ある演出でした。

私はサンフランシスコオペラのディレクターのディビッド・ゴックリー(David Gockley)は好きじゃないんですが、このような、今までのオペラでは取り上げることがあり得なかった題材を、これまた完全に無視されてきた視点から、異文化に接近し、スノッブと言われる理由がなきにしもあらずのオペラというミディアムで、堂々上演させた力は、しぶしぶですけど、高く評価したいと思います。

Youtubeにビデオクリップがあるので、リンクしておきます。

追記:9/14/11: SF Gateに、オペラのレビューと写真が載ってるのでリンクしておきます。

追記 2: 10/2/11 9月30日最終公演、ハンプソン、世界トップ・プロの実力を十分に見せるパフォーマンス。ダンとの合唱は、2人の力量が見合って心が通い、素晴らしかったです。やはり、初日では、ハンプソンさんの大きな体は、まだウォームアップが十分でなかったのかも。彼が、まだまだ歌える事がわかって嬉しかったです。

2011年8月28日日曜日

17世紀オランダ傑作品展

リージョン・オブ・オナー(Legion of Honor)っていう美術館で、「オランダとフレミッシュの傑作展(Dutch and Flemish Masterworks)」というのをやってますが、ゆっくりと過去をふりかえるだけにでも、お薦め。心を落ち着かせる展覧会です。

ここで初めて、レンブラントというのが苗字じゃなくて名前なのを知ったんですが... やっぱり、レンブラントのような画家が出るということは、それ以前に、たくさんの画家が、道というか、踏み台となる土台を作ってるんだなーと思いました。

展覧会場、まず、海の絵から始まるんですが、中学だか高校でならった歴史が頭の空間にちょっとよみがえりました。そうか、オランダはスペイン以前に海を制覇、日本の出島あたりにやってきて、杉田玄白が「蘭学事始」を書くほどの、当時の大先進国だったんだなー。

写真以前の時代の絵は、詳細にすべてを描いて、舌を巻く!

下の絵は、実はこの展覧会のポスターの一部を撮った写真。高解像度なんでクリックして大きくして見ると分かりますが、犬の毛の一本、一本まで描かれててすごい! レンブラントの弟子のゲリット・ドウ(Gerrit Dou)が作者で、コピー用紙ぐらいの小さな作品なんですよ。

その時代の様子を残すという点では、あまりに写真的で愛情を持てない感じもしますが、よーく見ると面白いこともあります。例えば下の絵。
今でもアムステルダムにある教会(Westerkerk)ですが、当時はガード(兵隊)の宿舎でもありました。でも商売上手なオランダ人、出入りが簡単な一階は肉屋さんに賃貸。建物の一階をよく見ると、白いエプロンと帽子をかぶった肉屋さんが、肉を、入り口につるしてるのが見えます。ヤン・バン・デー・ヘイデン(Jan Van Der Heyden)という人の作品なんですが、この人、画家というだけでなくて、今の街灯のもとであるランプ・ポーストなどを発明した発明家でもあります。

私が面白いと思った絵は、床屋さんの絵。昔は外科医もかねていた床屋さん、怪我の手当をしてるところが描かれててるんですが、ドーセントに「なんで(干からびた)ワニが天井からつるされてるの」と聞くと、「よく効く薬だと信じられてたのよ。」へー。

天井からは、大小のこぎりやじょうぎのような「手術用具」の他に(ゾーッ)、空の鳥かごもつるさがってて、とびらが開いたまま。床屋さんの窓からは、向かいの家の煙突に、コウノトリが巣をつくってるのが見えるんですが、この「鳥かごが開いたまま」というのは、処女を失ったという意味があり、「コウノトリ」は子供。つまり、絵にちょっと描かれてる女の子は妊娠してるという意味もあることを、隣で見ていたおばさんから聞きました。

そういうこと知ってると、また違った深い楽しみ方ができるんですね。

レンブラントの絵も数枚ありました。

ところでフレミッシュというのは、オランダ人とは別民族なんですが、オランダ内に在住。「ドン・カルロ」は、確かフレミッシュの話をオペラにしたものです。

2011年8月23日火曜日

サンフランシスコ・オペラ at スターングローブ 2011

今年のスターングローブのサンフランシスコ・オペラの公園は、暑くもなく、寒くもなく、かんかんと日が照りつけるわけでもなく、フォグが入ってくるでも無く、去年と同様に、エンジョイしやすい野外パフォーマンスとなりました。

今年のメインは、嬉しいことに、ドロラ・ゼイジック(Dolora Zajick)、それに2011年のアドラー・フェロウ(Adler Fellow)の人たちが加わります。アドラー・フェロウはオペラ歌手を育てるプログラムで、ドロラ・ゼイジックもかつてはアドラー・フェロウの一員、終了後、あれよ、あれよと言う間に、世界のメゾソプラノになったわけです。
写真は、ヴァルディ作曲のマクベスから、ラグジュ ランディを歌うドロラ・ゼイジック。Youtubeに、以前彼女が歌ったビデオがあるのでリンクしておきます。

私が始めて彼女の歌うのを聞いたのは、サンフランシスコ・オペラが「イル・トロバトーレ」を上演したとき。不気味なジプシー老婆を演じたのですが、すごい声と、迫真の演技で怖くなったくらい。これはお芝居よ、と言い聞かせてバランスをとった次第です。Youtubeに、ビデオがあるのでリンクしておきます。偶然ですが、私が、ドロラの老婆を2回目に見た時(2002年)のと同じシアトル・オペラ制作

アドラー・フェローは、トレーニング中と言っても、半分はプロフェッショナル。自国へ帰れば、皆、第一線で活躍すると思いますが、特にリア・クロセトー(Leah Crocetto)、そしてブライアン・ジャグデ(Brian Jagde)は、将来、ドロラのように、国際的に有名になるかも。リアはかなりやせた感じ。まわりのアドラー・フェローがほっそりしてるので、ダイエットしてるのかも。その影響が声にも出てるように感じました。痩せると、声の響き方がちがくなるんじゃないかと思います。前の、大胆でリッチな声がもどるよう、発声法を考案して欲しいと思います。
写真(高解像度なのでクリックすると大きくなります):向かって右から、アドラー・フェローの、リア・クロセトー。いつもちょっと不安そうで、口をキッと結んだ、彼女らしい一瞬。そのとなりがスザンナ・ビラー(Susannah Billar)、マヤ・ラヒアーニ(Maya Lahyani)、ナイディーン・シエラ(Nadine Sierra)、サラ・ガートランド(Sara Gartland)、ブライアン・ジャグデ、アオ・リ(Ao Li)、そしてライアン・クスター(Ryan Kuster)。

今秋のサンフランシスコ・オペラシーズンで、リアは「トューランドット」のリュー、ライアンは同オペラでマンダリン、ナイディーンは「マジック・フルート」でパパジーナ、ブライアンは「ルクレチア・ボルジア」でヴィテロッツォ、アオは同オペラでペトルッチ、サラは9/11をオペラ化した新作オペラ、「戦士の心」でパットとアン、スザンナは同オペラでロリータとブライズメイドを演じる予定。

9/12/11: ナイディーン・シエラ(Nadine Sierra)が、「戦士の心」でジュリケットを演じました。スターングローブとは違ったナイディーンで、同じ人物とは気づきませんでした。新顔のプロと思ったくらいです。「戦士の心」のビデオクリップに彼女が歌う部分が入っているので、「戦士の心」をリンクしておきます。

2011年8月14日日曜日

バーナル・ハイツのガレージセール・デイ: がらくた論

坂で有名なサンフランシスコには、丘が七つか八つくらいありますが、バーナル・ハイツ(Bernal Heights)はその一つ。丘のてっぺんにはバーナル・ハイツ公園があります。ここから見るサンフランシスコの眺望は、サンフランシスコ一の絶景。

観光バスがツィンピーク(Twin Peaks)に行くのは、多分、大型バスでてっぺんまで行けるから。バーナル・ハイツ公園から見るサンフランシスコは、ツインピークの「はるかーな展望」とは違って、足元にダウンタウンが超リアルに迫る3D。

ふもとから公園まで住宅がひしぎあうこのバーナル・ハイツでは、年に一回、地域全体でまとめて行うガレージセールが開かれます。参加する、しないは各家庭、個人の自由。

参加する人は当日、自宅の前の歩道にデスクを持ち出し、一年間ためておいた不要品を思い思いに陳列。趣味の悪いのもいれば、センスのいいのもあります。着なくなった服や子供のおもちゃ、読んでしまった本、机、棚、旅行用ラッゲージなどの粗大ゴミ、その他もろもろを捨て値で売って片付けるには良いチャンス。麦わら帽をかぶり、椅子に座って、本を読んだり、音楽を聞きながら店番。

昼近くにファーマーズ・マーケットへ行く途中で、コミュニティー・ガレージセールが今日なのに気づいた私、帰路までにはめぼしいものはすでに売られてしまったようですが、写真を数枚、アップロードしておきます。

人の売り出すものを見るのも面白いもの。こんな光景があちこちに。
すてきな女性用トップ。
よくまあ、がらくたをそろえたもの。自分の事はさておき、私のがらくた論を展開すると、:1)お金がちょっとでも余ると、ジャンク(junk がらくた)を買っちゃうんだねー。皆、お金が無い、無いって言うけど、発展途上国に比べるとありすぎるんじゃないの? 要するに、地球レベルの無駄が発生してる。2)それとも、貧乏人は生活に追われ、お金を貯めて大きな買いもをするというのが不可能。で、ちょっとでもお金が余れば、気晴らしにこういうジャンクに使っちゃう。う〜ん、両方とも正解でしょう。


バナナの鉢も、ゲイメン向けポースターも、ブラジルの国旗も売り物。塀のなかは本や食器やアクセサリーでいっぱいでした。ステレオがんがんで、ガレージセール兼ダンスパーティが進行中。
バーナル・ハイツのガレージセールは、地域総出のリサイクル・パーティ。近所の人たちと久しぶりにおしゃべりしたり、通りがかりの人たちと顔見知りになる機会でもあります。