2011年9月30日金曜日

津波をいきのびて(Surviving the Tsunami)

昨晩、サンフランシスコの公共放送、KQEDで、特別番組として「津波をいきのびて(Surviving the Tsunami)」という番組を放送しました。

NHKが製作した番組に、英語の説明と字幕がついたもの。日本語もはっきりときこえます。

こちらにリンクしておきます。時間がある程度経過すると、リンクは消滅するとおもいます。


KQEDは、3月11日東日本大地震の起こった翌月に、地震についての特別番組を報道しています。こちらにリンクしておきます。

2011年9月29日木曜日

リージョン・オブ・ホナーの花

前に、リージョン・オブ・ホナー(Legion of Honor)について書きましたが、たいへん美しい白亜の美術館。

ゴルフ場に周囲を囲まれてますが、東側は、ゴルフ場の向こうの、松の木立のそのまた向こうに、真っ青なサンフランシスコ湾が望めます。フォグが入っていると、青い海のかわりに、真っ白な雲が赤いゴールデンゲート・ブリッジまでえんえんと見え、自然の不思議をカメラにおさめたくなります。臨海丸のサンフランシスコ到着を記念する石碑が、美術館とゴルフ場の間の道路沿いに建ってます。母を連れてきたとき、石碑を見て大変喜び、母の親戚が、使節団に加わっていたという話しをしてくれました。美術館はまた、ヒッチコックが「めまい」の撮影にも使ったことでも知られてます。

リージョン・オブ・ホナーからの、サンフランシスコ湾とゴールデンゲート・ブリッジ。

同、フォグで覆われてるサンフランシスコ湾とゴールデンゲート・ブリッジ。

ロダンの彫刻のコレクションが有名なこの美術館、でもここをもっとスペシャルにしてるのは、館内の花。フラワー委員会があって、毎週一回、入り口と女性のレスト・ルームにある花を活けてくれるのです。クラッシーだったり、可愛かったり、どちらにせよ大胆なデザインのフラワー・アレンジメントです。
チケット販売に飾ってある花。家庭の入り口に設けられてる花壷様式を取り入れた、サンフランシスコらしいアレンジメント。

ロダンの部屋の入り口。

トイレの花。これを見るために、必ずトイレへよります。

新しくなった花。(ロダン)

新しくなったトイレの花。

この間、ひんぱんにリージョンに行く機会がありました。ロダンの前の花。

トイレの花。紫の花はアーティチョーク。誰もいなくなるのを待って撮るのは意外と時間がかかります。

2011年9月27日火曜日

福島原発事故、その後: アメリカの報道等

今年の6月後半、私が日本にいたとき、たまたまNHKが福島第一原子力発電所事故30分番組特集を夜の7時半からやっていたので見て、ものすごく驚いた事があります。

当時(今でもかもしれませんが)、原子力発電に関するトップの責任者である原子力発電取締役(正式名称は違うかも)が、NHKのレポーターの「外部からの電源を確保すれば、(原子燃料の冷却装置が動きだして)解決すると思っていたのですか?」という質問にたいして、「はい、そう思っていました」と、答えた時です。「え〜っ!」これには腰を抜かすほど驚きました。

「Aがうまくいかなかった場合を考えて、B案を考えといて」ぐらい、普通のビジネスだって、言うんじゃないですか。 

こんなことじゃ科学者の端にもおけない!と、 数日後、日本の友達にこのことを話したら、「ピリット、あの人は理科系出じゃなくて、文科系なのよ!」それと聞いて、さらに「えええ〜っ!!」 そんな人がどうして原子力発電関係取締役になるの〜?!? 

ところで最近、福島原発事故その後がどうなってるかは、日本にいる日本人が一番よくわかってるというわけではないことが分かってきました。アメリカ人友達に聞いたら、どうもアメリカでもあまり報道されていないようようです。最近、カリフォルニアで、空気中の放射能値測定を中止したようなことを言ってました。

半信半疑ですが、アメリカで目についた報道があったのでリンクしておきます。

ビデオ中に、事故から160日経っているという発言があるので、2011年8月中旬と8月21日の間に放映されたニュース。福島で働いている人がアメリカの友人にあてた電子メールが番組中に出てきたので、下にアップロードしておきます。

ガンター(上)さんは、さらに溶け出したコアが地下水に届き、水蒸気を出しているのではないかと、述べてます。


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キャスター: 崩壊した原発のまわりの地面にひびが入り、放射能を含んだ水蒸気が空気中へ漏れているとのことです。...広島平和研究所のロバート・ジェイコブ博士に伺ってみましょう。

ジェイコブ: 深刻な事態に発展してると思います。7月31日に6.4、8月12日に6.0の地震があり、そのため、地下中のパイプ、もしくは構造物が壊れ、放射能で汚染された水が土壌中に漏れ、さらに放射能が水蒸気に混じって上に上ってきている可能性があります。... 地震により溶け出した燃料コアが、地中で動き、前とは違った場所に放射能を出しはじめている可能性があります。

怖がらせるのが目的ではないので、英語の部分はちゃんと聞いてから、判断してください。

最近、世界のあちこちで火山が爆発したり、大地震があったり、地球が活動期に入ってきたような印象を受けます。かといって、日本中の原発をただちに停止するというのは無理があるので、今年以内に原発廃止のロードマップ作成、なるべく速く脱原発の方向へ歩みだして欲しいと思います。

経団連の発言力ある企業が、現在進行中のプロジェクトを含めて、原発に多大な投資をしてると思いますが、多分そういう会社が、脱原発に消極的なんじゃないかなー。こういう会社だって、日本政府の方針に従ったわけですから、悪者にするのもよくありません。すぐに現状調査をし、その会社の原発投資の年月、割合に応じて、脱原発研究費を支給する、プロジェクトの再検討、もしくは脱原発開発に取り組む場合には税金の優遇等を考える等、やりかたはいろいろあると思うんですけど。

アメリカでは、日本の技術力は大変高度と言われてます。特許出願数を見ても、日本は世界一(2010年統計)。ドイツに脱原発で先手をとられないよう、また中国にはできないような、優れたデザインの脱原発体制を整えれば、日本の経済復興にもおおいに役立つという、一石二鳥じゃないかと思うんですけど。

(9/28/11アップデート)

2011年9月19日月曜日

サンフランシスコ・オペラの「テューランドット」

サンフランシスコ・オペラで、久しぶりにテューランドットを上演。

テューランドットを演じたのはイレーン・セオリン(Irene Theorin)、カラフはマルコ・バルティ(Marco Berti)、出演者全員の歌力もパフォーマンスはベリーグー。聞き慣れたスコア、すばらしい合唱と舞台セットで、安心して、十分、エンジョイできるパフォーマンスでした。
写真:身のこなし方、視線一つで、テューランドットを演じるセオリン。

特筆すべきは二つ。まず、リウを演じたリア・クロセトー(Leah Crocetto)。現在、アドラー・フェロー三年目。これから世界へ羽ばたこうとしている彼女のパフォーマンス。発声では、イレーンやマルコという、同じ役柄を世界の舞台で数十回とやってき長年のプロにはまだちょっとかないませんが、よく彼らに劣らずに歌い上げたというのがすごい。コントロールも確か。

感情をこめて、一音一語、丁寧に歌いあげるパフォーマンスに、観客も確かに反応して、カーテンコールでは、先輩を凌ぐ、嵐のような拍手で迎えられました。このパフォーマンスで、大プロからも、これからのオペラを支えて行く若手として受け入れられたという印象を受けました。これから経験を積み、どんどん伸びるでしょう。

もう一つは舞台。以前に見たのと同じプロダクションですが、舞台の設計、光、照明、コスチュームも含めて、一つの極められたアート。特にテューランドット等が入場するZ字型の、舞台上の「花道」、背景に見える、故宮を連想させる宮殿の壁、遠くに見える、寺院っぽい住まいの屋根の、切り絵的シルエットは意外で、斬新。コスチューム・デザインも、目をひきつけられます。今回は、兵士のコスチュームに目がいきました。写真がのせられないのが残念! 光の使いかたも素晴らしく、等身大でシリアスに演じられる大人のおとぎ話の世界を作りあげます。

オペラというのはどんなものかしりたい人たち、将来、舞台設計に進みたい人も含めて、安心して、最後まで楽しく見られるパフォーマンス。

初日のパフォーマンスのビデオ・クリップをリンクしておきます。

テューランドットのレビューはこちら

写真だけ見たい人はこちらをクリックしてください。

2011年9月12日月曜日

サンフランシスコ・オペラの「戦士の心」初演

昨夜は、新作オペラ、「戦士の心(Heart of a Soldier)」の初演でした。

イギリス、アメリカ、アフリカ、ベトナムと、イスラム文化が、傭兵・兵士の視線の中で出会い、9/11で、ピークを迎えるという、スケールの大きい異色ドラマ。サンフランシスコ・オペラが、作曲家、クリストファー・シーファニーダス(Christopher Theofanidis)に依頼して、ジェームス・スチュワート(James Stewart)の同題の実話をオペラ化したものです。

お話: イギリス人傭兵のリック・リスコーラ(Rick Rescorla)と、アメリカ人傭兵のダン・ヒル(Dan Hill)1962年のアフリカの戦場で出会います。気のあう2人は、リックのアメリカ人帰化後、米軍に入隊、1965年に2人とも、士官としてベトナムへ。そしてベトコンに囲まれて危うく命を落としそうになるダンをリックが、軍の指令を無視して救出、友情はさらに深まります。

1998年、リックはモーガン・スタンレーに安全部重役として入社、ニューヨークのワールド・トレード・センターのオフィスに勤務。スーザンと出会って再婚します。

ダンはイスラム教に惹かれて改宗、アメリカの市民生活に適合できずに、再び、兵士としてアフガニスタンへ出兵。リックに依頼されて、ワールド・トレード・センターの安全性を検討、双子ビルは、テロリストの地上と空中からの攻撃に弱いという結論に達します。それを基に、リックは、異常時が発生した際の避難訓練を企画し実施。非常時に、隣にいる人とパートナーを組み、歌を歌いながら、オフィスのトップ階(トップは107回でレストラン)の106階のオフィスから、地上へ、階段を使って避難するというもの。重役でも、この訓練をさぼることはできません。

あの9月11日、リックは、ビル管理側の命令を無視して、直ちに避難命令を出し、その結果、モーガン・スタンレーのほとんど全社員にあたる2700人が、ビル崩壊前に脱出に成功、命拾いをしますが、残りの人がいるかどうかを確かめるためにビル内に戻ったのが、リックの最期となります。

戦場での兵士同士の交流や、親友であることの確かめ方などのリベレットがわかりやすく、ユーモアたっぷりで、映画のような感じ。

スーザンもリックも50代で離婚の経験者。出会いの不安と心のときめきを歌うスーザンですが、気持ちが正直に描かれていて感動。リベレットを作る人の力はすごいものです。写真下:リックを演じるトーマス・ハンプソン(Thomas Hampson)と、スーザンを演じるメロディー・ムーア(Melody Moore)。トーマス・ハンプソンがSFでフィガロを演じた時から好きなバリトンです。

ダンを演じたのはウィリアム・バーデン(William Burden)は、ハンプソンを凌ぐ力強いパフォーマンス。また是非、サンフランシスコに来て欲しいです。写真下:イスラム教への改宗を決心するダン。

アドラー・フェロー一年目のネイディーン・シエラ(Nadine Sierra)がジュリエットを演じたのですが、役になりきる力、またアリアそのものもよかったです。戦場へ出す手紙に香水をしみ込ませるなんて、以前だったらばかばかしいくらいにしか思わなかったと思いますが、ネイディーンの歌で、命への願いとかが伝わってきました。悲しいことです。写真下:トムを演じるマイケル・サムエル(Michael Sumuel)とジュリエット。彼もよかったです。

今回は、いつもとはちょっと違う人たちが劇場内にたくさん。私のいたところには、アメリカ人軍人用一画が設けられていたので、制服を着た兵隊さんがどんな反応をするかと、ちょっと興味津々。多分、普段はオペラには縁がない人たちと思いますが、でもストーリーがうまく語られてたので十二分に受けてました。

スコアもよかったです。特に始まりの部分は、息を吸い込むと広がる胸のように、スコアが聴覚を解放するようで、これから違った世界へ連れていくんだなと、感じさせます。

2幕目の最期の部分は、演出等々、もうちょっと向上できる余地があると思いますが、第一幕はたいへんうまくまとめられてました。一幕目の最後にモスラムの歌とメロディー(Mohannad Mchallah)が入るのですが、それが欧米のスコアとの相性がたいへんよいのでびっくり、モスラムの旋律の美しさに目が覚める感じ、心をふわーっと背中の後ろの方の、地球上の未知の世界へ広がせる感じです。この部分は、イスラムには拒絶反応を示すアメリカの現状をしっかと意識した、勇気ある演出でした。

私はサンフランシスコオペラのディレクターのディビッド・ゴックリー(David Gockley)は好きじゃないんですが、このような、今までのオペラでは取り上げることがあり得なかった題材を、これまた完全に無視されてきた視点から、異文化に接近し、スノッブと言われる理由がなきにしもあらずのオペラというミディアムで、堂々上演させた力は、しぶしぶですけど、高く評価したいと思います。

Youtubeにビデオクリップがあるので、リンクしておきます。

追記:9/14/11: SF Gateに、オペラのレビューと写真が載ってるのでリンクしておきます。

追記 2: 10/2/11 9月30日最終公演、ハンプソン、世界トップ・プロの実力を十分に見せるパフォーマンス。ダンとの合唱は、2人の力量が見合って心が通い、素晴らしかったです。やはり、初日では、ハンプソンさんの大きな体は、まだウォームアップが十分でなかったのかも。彼が、まだまだ歌える事がわかって嬉しかったです。