2014年5月27日火曜日

新国立劇場の「アラベッラ」

シュトラウスの「アラベッラ」を初めて見ました。

貧乏貴族の年頃の娘達の「苦境とロマンス」ドラマで、エンターテイメントが今のようになかった当時、このような求婚者の「品定め」的なドラマは実感があって人気があったんだろうと思います。でも現代の私には退屈でしたが、第三幕でのヒロイン、アラベッラと、彼女に許しを請うマンドリカの歌唱とドラマは力ありで、私は救われた!という感じです。

一幕、二幕では曖昧で優柔不断のアラベッラが、第三幕で婚約者のマドリンカからあらぬ疑いをかけられると、背筋をキッとのばして、「私を信じられないならそれまで」と、大金持ちだけども素朴なマドリンカに毅然と言い放ちます。アンナ・ガブラー(Anna Gabler)演じるアラベッラが急に一人の存在感ある人間に見えてきます。

マンドリカが、彼女の妹、ズデンカをアラベッラと誤解したのに端を発した騒ぎなんですけど、娘2人はお金がかかりすぎてとても育てられない貧乏貴族が世を渡っていく手段として、ズデンカをアラベッラの弟とし、ご本人も納得して弟として生きてるわけです。だけどズデンカもお年頃なので、愛してしまったマッテオと、当時では絶対ノーノーの「ベッドを共に」してしまいます(一夜だけは女の子になりたい!)。それが暴露して世間から葬られそうになるズデンカを、ただ一人、アラベッラが、「何の見返りも求めないを愛を貫くあなたに、私は教えられました。... あなたを心から尊敬します。」そしてジェーン・オースティンの「プライドと偏見(Pride & Prejudice)」のエリザベスなみの落ち着きと、威厳と、気品をもって、アラベッラの確信がどうどうと歌い上げられ、ドラマは最高潮。私(も観客)もすっかり彼女に共感。

新国立劇場のホームページからのスクリーンショット

マドリンカを演じたヴォルフガング・コッホ(Wolfgang Koch)はベテランらしく安定感がありました。賭け事で浪費する父親貴族の役目をした妻屋秀和さんがすごくよかったです。

初めから終りまで青色を中心とした舞台、とくにメインの青い色のトーンと青ばかりのコスチュームは好きになれませんでした。青っていう色、難しいんじゃないの。まだ舞台のデザインもあまりにホフマン物語の舞台と似すぎてて「またこのトーンか」っていう感じ。特にいただけないのは、アラベッラがマドリンカを初めて目撃する第一幕の窓(オフィスの窓みたい)、そして第三幕のユーモアも魅力も格式も無いホテルのフロントデスク。なんかモーテルみたい。

アラベッラが最初に登場するときの乗馬服(だけど話では乗馬でなくてオペラに行ってたようだったけど)、マドリンカが最初に登場するときのコートはちょっと面白く、また舞踏会ではお母様のドレスと白いケープがよかったですけど、後はなんだが目につかなかったです。席もよくなかったし、前に頭の大きい人がいたこともあったし、その上、字幕についてゆくのに精一杯だったからかも。

2014年5月14日水曜日

ルクレシア・ガルシアが新国立劇場デビュー

2012年にサンフランシスコ・オペラが「アッティラ」を上演したとき、アッティラの新婦、オダベラを演じたのがルクレシア・ガルシア(Lucrecia Garcia)。アニタ・ラチベリシビリ以来に見た、パワフルな新人ソプラノです。当時はエラく太っていて、前か後ろ姿なのか分かりにくかったんで、せっかくなので、なんとかして欲しかったんですけど、今日から5月30日まで、新国立劇場で演じられる「カバリア・ラスティカーナ」に出演するようです。

私は行けるかどうかわかりませんが、彼女は聞きがいがありなので、推薦です。アニタ・ラチベリシビリのほうがちょっとすごいとは思いますけど。でも私が聞いたのは2年前なので、今は見違えるように成長してるかも!

2014年5月11日日曜日

ああ、スマホが...!

象の写真をとっていると...

久しぶりにげらげら大笑いしました。リンクはこちら。 最後までエンジョイ!



2014年5月8日木曜日

最新の5分間ビデオ、「チェルノブイリの動物」

ニューヨーク・タイムズ紙が5月5日付けで「チェルノブイリの動物」という記事を発表。

チェルノブイリのアップデートにちょうどいいので、その記事と、記事中にある5分間ビデオをここにリンクしておきます

記事のリンクはこちら

サウスカロライナ大学のティモシー・ムーソーさん(Timothy Mousseau)は1999年から継続的にチェルノブイリを訪問、鳥類や昆虫、こうもりなどの観察を行ってきたそうです。当時はこのような事故はもう二度とおこらないと思い、個人的に観察していたそうですが、福島の原発事故以来、福島地域も観察対象に加えて公的な研究に変更

チェルノブイリ原発事故で人間が出て行ったあと、まるで「現代のエデンの園」のように自然界が復帰したと言う人がいるけれども、ムーソーさんによると、決してそうではないそうです。鳥類や昆虫、こうもりなどの観察をすると、チェルノブイリで「ホット地域」と呼ばれている高放射能地域では、動物種数は半減、考えられていたより自然の復帰は遅いとのこと。また鳥などでは外観から観察出来る腫瘍とかクチバシの変形などの異常発生率が、放射能汚染地域外と比べて、高い頻度で観察されるそうです。

またホット地域にいるある種の鳥は「自然淘汰」で放射能に対する適応を高めているのが観察されてますが、面白い事に、同種の鳥で放射能汚染の低い地域にいる場合は適応できず、DNAの異常が起こっているようなふしがあるそうです。

ビデオ中にも小さい赤い昆虫がでてますが、ホット地域に近づけば近づくほど、以前とは異なったパターンの羽柄が高い頻度で観察されるそうです。(下の写真)



また木の年輪を観察すると、1986年の原発事故以来、はっきりとした変化が見られるものがあるとのこと。下の写真では、1986年を境に(濃い茶の線がひいてあるところ)、年輪の色が異なるのがわかります。



去年、福島を訪問したとき、ムーソさんは蜘蛛の巣のパターンが少しおかしいのに気づき、以来、チェルノブイリでも、できるだけたくさんの種類の蜘蛛の巣の写真を撮り、研究室の学生に分析させているそうです。