サンフランシスコ・バレエの2012年プログラム3はお薦め。
プログラム最後の「動物のカーニバル」を見に行ったようなものですが、ショッキングだったのは二つ目のユーリ・ポゾホフ(Yuri Possokhov)の新作、「フランセスカ・ダ・リミニ(Francesca Da Rimini)、リミニのフランセスカ)」。
ユーリはストリーを語るのが好き。フランセスカとパオロの恋は、ダンテの話の中で有名なんだそうです。「すべての道は『地獄』に通じるなんてあんまり!」というのが私の直後感、私の見る世の中はこんなふうには見えない、こんなハズはないと、とやりきれない気がしました。
タイトル・ロールをやったマリア・コチェトコワ(Maria Kochetokova)、止まらないエンジンのように、ますます上手になってます。去年のコッペリアで到達したレベルをぐーんと超えて、「夫より愛する人を持つ妻」を美しく表現できるようになってるんですよ。
体の横とか、背中の真ん中とかの筋肉が伸縮するのが感じられるようで、また、舞台に繰り広げられる踊りが流動性と透明性を得てきていて、もう一歩高い段階に進んだんだな、と思いました。自分の踊りを踊ってるんですね。「愛」というのが見せる自然で無謀儀な流動性、よどみのない動きなので、途中で、なんかにぶつかった拍子に、体が粉々になってしまうんじゃないかと、心配になったりしました。
写真:マリアとボアダ。出典はここから。レビューも読めます。
ロダンの作品に「接吻」というのがありますが、これはフランセスカとパオロの話に基づいたものだそうです。
やはり、やはり、愛にまつわる身体表現は、伝統的にそれを許す文化圏に育った人たちの方が、中国とか日本とか、そういうのを許さない伝統で育った人よりか、消化・昇華できるというか...
相手役、パオロをつとめたのがヨアン・ボアダ(Joan Boada)。以前から、感情表現がばっちりできて優雅に動ける数少ない男性ダンサーで好きでしたが、ヘルゲイ(SFバレエのディレクター)の元ではあまり日の目をみることがありませんでした。今回のユーリによる起用、ウェルカムです。彼の優雅さを十分引き出さない振付けでしたが、ジャンプは力強かったです。この役をできる人は、今のところ、SFには、彼をおいて他にいないでしょう。
フランセスカの夫役は、これもプリンシパルの一人の、タラス・ドミトス(Taras Domitro)。尊大に振る舞い、怒りで激情する役、よくやりました。こういう役をやるの合ってるみたい。これは私の知ってる限りでは、彼にとって、初めての大役。
フランセスカとパオロの衣装は、2人の愛の純粋性を象徴しているようで、言わば、彼らの愛の隣に口を開けてる地獄とよい対照。カップルを際だだせ、踊りをいっそうはかなく、この世のものではないような高貴な印象を強めます。
三人の男性ダンサーが、ロダンの地獄門の彫刻のトップにある、かの有名な地獄のゲートキーパー役。彼らが地獄へ罪ある人を引きずる執行人。演じたのはジェレミー・ラッカー(Jeremy Rucker)、クゥイン・ワートン(Quinn Wharton)とルーク・ウィリス(Luke Willis)。
地獄門のトップ:リージョン・オブ・ホナーにロダンの彫刻が収集されてるので、そこで撮ってきた写真です。
コスチュームの色と刷り込んである影の模様でしかとは判別できませんけど、この3人のうちの一人、多分、ルーク・ウィリスじゃないかと思いますが、歴々のサンフランシスコ・バレエの男性中、今までで一番、美しい体の持ち主(去年の感想ですけど)。初めて舞台上で見たとき、その神々しさにハっとしました。スーパーマンかはたまた若ーいギリシャ神かと畏敬の念をおこさせます。あまりの神々しさに顔の方の印象が薄く、今だに誰の体だったんだか、はっきりとわからないんですけど。
ヘルゲイの振付けは面白くないんで好きじゃないんですが、「トリオ」は良い方。サラ・バン・パターン(Sara Van Pattern)が踊ってましたが、彼女も上手になってます。
「動物のカーニバル」は楽しい作品。サンフランシスコ・バレエのために振付けられたものです。これだけでも、見に行く価値あり。
2012年4月9日追記: ビューティフル・ボディの謎の男性ダンサーは、なんて発音するのかよくわかんないんですけど、ガエターノ・アミコ(Gaetano Amico III)じゃないかと思い始めました。髪が黒いのが大きな理由の一つ。じゃなければ、どうしてスーパーマンなんて連想をしたかと思うんですけど。是非もう一度あの美しいボディを見たいので、気になってます。
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