2012年7月1日日曜日

サンフランシスコ・オペラのグランドオペラ、「アッティラ」

2012年、夏のサンフランシスコ・オペラの第二弾はヴェルディの「アッティラ」。

お話: フンの国王、アッティラが、ローマ遠征にのぞみますが、捕虜にしたアマゾンのような女性軍団隊長のオダベラの意気が気に入り、自由だけでなく、自分の剣まであたえます。オダベラは野蛮人であるはずのアッティラの見かけとは違う寛容さに心をひかれるんですが、婚礼の夜、父王のかたきであるアッティラを刺殺、仇をとるというお話。

オダベラの他、ローマ王の使者である将軍、エジオと、アッティラの信頼の深い奴隷(昔は征服すると負けた側を奴隷にしたんです。労働者不足だったんですね。)のウルディオと、オダベラの婚約者、フォレスト、がメインキャラクター。2人とも道理あるアッティラにひかれ尊敬しますが、それそれ個人の思惑でアッティラを裏切ります。

エジオの場合: 「ローマ王といってもたかが子供、そんな子供がアッティラと和平交渉を結んだからすぐにローマへ帰れとはなんだ。ローマ王が一番恐れているのはアッティラでなく、武勇で名高いこの私。私はアッティラを討つ!」 というわけで、アッティラが主催する和平協定記念のディナーパーティーで、ウルディオを巻き込んで、アッティラを毒殺する計画を立てます。
写真はイタリア人バスのフェルシオ・ファラネット(Ferruccio Furlanetto)が演じるアッティラと、バリトンのクゥイン・ケルシー(Quinn Kelsey)が演じるエジオで二重唱。

オダベラの場合: 父の仇をとらねばと思いながら、「あのお酒を飲んだらアッティラは死んでしまう!」と、アッティラの手から毒入りの杯を叩き落とします。アッティラは彼女にご褒美として、自分のワイフ、王妃にしようとします。しかし父の仇をとらねば裏切り者になってしまうと、婚礼の夜にアッティラを刺殺。

フォレスト:オダベラを愛するフォレストは、オダベラがアッティラと話してるのを見て猛烈にジェラシー。「愛」という名のもと、オダベラに、「敵方の王と親しく話をするなんて、お前は裏切り者だ!」と決めつけ、最後までプレッシャー。攻めに出る直前に「こんなときに嫉妬してる場合じゃない」とエジオにたしなめられるほど。

アッティラは、「お前達3人は、ローマとの和平交渉が成立しても、まだ裏でこそこそと策略をねってるのか!」を最後の言葉に、オダベラの刃に倒れます。

久々のグランド・オペラ。コーラスの人たち全員とエキストラで舞台はいっぱい。コーラスが入るとオペラに厚みが出て本当に豪華。キリスト教臭いオペラはあまりにプロパガンダすぎて好きじゃないですが、のりとブリーチが効いてそうな白い法衣がライトを浴びてパーッと浮かび上がりサンサンと映えるとスペクタクル! キリスト教徒だと神々しく感じて、思わず十字をきるなんてことがあるんじゃないかと思います。もっともアッティラが支配してたのは5世紀、こんな真っ白な衣装はあり得なかったでしょう。

上のスナップショットで右端の法皇役を演じてるのはサミュエル・ラメイ(Samuel Ramey)。1991年、サンフランシスコ・オペラが同じアッティラを上演したとき、アッティラ役をやったのは彼でした。それを含めてサミュエル・ラメイを何度が聞いたことありますが、ワールドクラスのバスバリトン。現在70才ですが、さすが声は昔のまま。

オダベラを演じたのはベネズエラ人ソプラノのルクレシア・ガルシア(Lucrecia Garcia)。アニタ・ラチベリシビリに似てる、私の好きなタイプの声で、会場を圧倒。目がくりくりと大きく、ポケモンの可愛いキャラクターみたい、それが「胸にさらしをまいて戦う」と、大きな剣を空に振り上げてキッとにらむとなんか可笑しくて、会場に笑い声。もちっと痩せると前か後ろかがよくわかるようになると思うんですけど。2012年夏シーズンで最大のゴージャスな声をしたソプラノでした。

フォレストを演じたのはメキシコ人テナーのディエゴ・トルレ(Diego Torre)。よかったですけど、歌の最後、もうちょっと声をのばして聴衆を詠嘆させて欲しいというその手前で終わっちゃうんで、残念。

たまにはグランド・オペラもいいもんです。ここに初日の公演のビデオをつけておきます。 新聞の写真とレビューを見たい人はこちらへ

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