2010年12月25日土曜日

今年最後のブログ: ダンジョネス蟹と映画、「黒鳥」

日本への渡りの日が近づいてきたんで、今年はこれが最後のサンフランシスコ発。

年末の締めくくりとして、サンフランシスコ名物のダンジョネス蟹(Dungeness Crab)を食べる事にしました。
近所の魚屋さんへ行って、元気良さそうなのを2匹購入。今年は蟹がこぶりですが、エラく安価。後ろの蟹の方が元気で、写真を撮ろうとすると立ち上がって写真のようなポーズ。



いつもは沸騰するお湯の中でゆでるんですが、今年は、蒸すことにしました。

生き物を殺生することになるので、無駄な食べ方はしませんという誓いと、感謝の気持ちで心を100パーセントいっぱいにして、おなべに、背中を下にして入れます。

中国人は、ゆでるとき、ヒネショウガの荒せんぎりをおなかの上にのせてから紹興酒を振りかけてますが、私は、きれいに洗ってから、ただの素蒸し。15分ちょっと蒸します。美しい、真っ赤な色になります。


ソースは使いません。ほのかに甘い、ダンジョネスの肉を楽しみます。

映画「黒鳥(Black Swan)」

ナタリー・ポートマン(Natalie Portman)が主役のダンサーを演じます。「白鳥の湖」のオデッタ/オディールに抜擢された彼女が、黒鳥を踊るにふさわしくなるまでの成長を描いたサイコ(精神)ドラマ。主役に抜擢された人には、敵あり、迷いあり、いやがらせを受けたり、自分が小さく見えたり、まわりに迷惑かけながら、黒鳥を踊れる自分を創っていくという話。

こういうこと、会社でもしょっちゅう+頻繁にあるので、そういうパースペクティブで見れば、新入社員にはオリエンテーションにはなるかも。でも解決策は提示されません。



映画の宣伝用トレイラーをリンクしておきます。

映画が始まるとすぐにリンカーンセンターが出てくるのでニューヨーク・シティ・バレエが舞台でしょう。ディレクターを演じる人が、マーク・モリス(Mark Morris)にそっくりなので、可笑しくなりました。

サスペンスと思ってゆくとがっかりすると思いますが、確かにヒッチコック的クラッシックなところあり。ところで一番最後なんですが、もう終りかと思って注意を払わなかったら、わけのわからない結末になってました。一緒にいった友達に聞いたんですが、私と一緒に立ち上がり、見てなかったんでわからないから教えてくれって、アメリカ人のくせに言うんです。知ってる人、教えてください。

追加: ナタリー・ポートマンは子どもの頃、バレエを習ってたそうです。この映画の撮影に入る一年前からバレエの練習を始めたそうです。

2010年12月21日火曜日

サンフランシスコ・バレエの「くるみ割り人形」

サンフランシスコ・バレエのくるみ割り人形は、縫いぐるみの熊さんが登場したり、アラビアン・ナイトぽくなったり、手品ありで、大人も子供も楽しめる楽しいバレエ。

数年前に比べると、30分くらい短くなってるようですが、子供にはちょうど良い長さかも。

第一幕の見所は、ビクトリア調時代(フロイドが活躍した頃)の、豊かな家の、家族とゲストで祝う、クリスマス風景。

雪がしんしんとふるなかで、雪の女王様と王様、そして雪の精が踊る場面も、チャイコフスキーの美しい音楽とともに、心に残る場面です。

第二幕では、ロシアの木こりのダンスが、いつもやんやの喝采を受けます。

見所は終わり近くのグラン・パ・ド・トゥでしょう。

去年、ソフィアン・シルビ(Sofiane Sylve)がコンペイ糖の国の妖精となって出てくる「くるみ割り人形」は、見たくないと書きましたが、ご本人、今年は去年に比べて、ずいぶん、明るくなった感じ。サンフランシスコ・バレエに入団して一年たったんで、落ち着いてきたんでしょうか、以前、彼女を取り巻いていたグレーのイメージは消えてて、チュチュも似合ってたし、グラン・パ・ド・トゥをていねいに踊ってました。

彼女のパートナー(くるみ割り人形)は、今シーズン入団した、新顔のアルテム・ヤチメニコフ(Artem Yachmennikov)。初めて見る人なんですが、手のひらや指の動き(腕じゃなくて)に表情があること、相手をちゃんと見つめてニコニコしたりなどの感情の表現が上手で、プロという感じ。体の動かし方が優雅で、サンフランシスコ・バレエにとっては、たいへんなプラス、思わぬ才能を確保したと思います。

男のダンサーで、表情のある人って以外と少ないんですね。感情を見せるのは男らしくない思ってるんじゃないかと思います。サンフランシスコ・バレエでは、ヨアン・ボアダ(Joan Boada)が、感情表現を目一杯やります。悲しいときは悲しい表情、嬉しいときは満面の笑み、そしらぬ顔をするときはポイと横を向いたりと、上手だと思いますが、新顔アルテムは、どんな悲しみの表現を見せるのか楽しみです。ヨアンより背が高く、多分若いので、これから先が楽しみです。

サンフランシスコ・バレエのくるみ割り人形のビデオをリンクしておきます。


写真は、マリア・カチェコーバ(Maria Kochetokova)とディビッド・カタパリアンのグラン・パ・ド・トゥ。彼女も去年より、優雅になったようです。ディビッドも上手。

追記(2011年4月):マリア・カチェコーバとディビッド・カタパリアンのグラン・パ・ド・トゥのビデオが見つかったので、リンクしておきます。二つあります。二つで、全部見られます。

ヨアン、アルテム、ディビッドが、男性のトップ3でしょう。

女性は、ヤン・ヤン・タン(Yuan Yuan Tan)、マリア・カチェコーバ、ソフィアン・シルビがトップ・スリーだと思います。

2010年12月6日月曜日

久しぶり、ロサンジェルスの休日


写真はロサンジェルス植物園で見たバナナの花。直径約30センチ。ガクを含めた花の長さは75センチくらいかな。

感謝祭休日(Thanksgiving Holiday 11月25日から28日)を利用して、ロサンジェルスへ。

ハイウェイ880から、580経由でハイウェイ5に入り、ロサンジェルス入りという、通常のルートです。

一番気をつけなくちゃいけないのは、ベーカーズフィールド(Bakersfield)を過ぎて、ロサンジェルスに入る直前にある、通称、グレープバイン(The Grape Vine)。道路がまるで地面を這い上がる、ブドウの蔓のようだというのが名前の起源だそうです。

結構、急でスケールの大きい上りが続くだけならいいんですが、おっきなトラックがばんばん通ることと、晩秋から早春にかけて、道路が凍る事があるので、出発の前々日から気象情報には注意しておかなければなりません。地球温暖化のため廃業したのか、スキー場のリフトがなくなっていたような感じでした。

突風も危険事項の一つ。私は経験した事ないんですが、ベンツに乗ってる友達が突風にあおられてハイウェイの中央分離体に衝突、レッカー車が来たそうですが、再び突風に襲われ、今度はレッカーにぶつかってしまい、その日はローカルホテルに泊まり、翌日、車は修理屋においたまま、飛行機で帰ってきたそうです。その話を聞いて始めて、何にもない変なところの道路の両側に、ブレーキ修理工場や、ホテルがけっこうある意味がわかった次第です。

そういうことを除けば、呆然とするほどの美しい景色がダイナミックに続くのがグレープバイン、それを見たくて、今回、ドライブすることにしました。

帰路のグレープバイン沿いの休憩場(Rest Area)からとった写真。前日に雪が降った雪がパウダーシュガーのよう。


友達の家で七面鳥を食べた翌日、午前中はロスの植物園へ。友達が熱帯植物ファンなんです。くじゃくが放し飼いされているのが気が利いてていい感じ。バナナとか、カカオなんかが植わってました。入場料8ドル。


午後はパサディナの、ノートン・サイモン美術館(Norton Simon Museum)へ。ここ、美術館ファンにはお薦めです。ゴーギャンの作品が多くありましたが、目玉は、モネのスイレンの池を連想させる池のある彫刻ガーデン。

屋内の展示を見た後、コーヒーかなんか飲みたくて、大きなガラスのドアを押して庭に出るんですが、あやめのようなのが生えている池がキラキラを光って目に飛び込んできます。するとコーヒーなんかどうでもよくなり、池沿いに巡らしてある小道を散歩したくなります。



人間の知覚を十分に考慮して設計された、優れたデザインの彫刻ガーデン。池のまわりの小道沿いには、嬉しくなるほど、ほどよい間隔で、ムーアやマイヨールの作品が置いてあります。池のまわりの小道からは、違った角度から、違った雰囲気の池の様子が見られ、風で揺れる水際の植物やまわりの木々を、心から楽しめます。なお、入場料は8ドル。



翌日は、サンタモニカ・マウンテンへ約6時間のハイキング。ロスを離れて北方へ2時間くらいドライブ。ロスへパプリカやアーティチョークを提供してる農業地帯を過ぎて海岸沿いから山に入ります。

サークルXランチでおトイレを済ませてからハイクを開始。サンフランシスコ・ペイ・エリアとは違う山の雰囲気を十分楽しみました。


もう少し写真を見たい人はこちらへどうぞ。

2010年11月22日月曜日

カリタ・マッテイラの「マクロプロス事件」

レオシュ・ヤナーチェク(Leos Janacek)の「マクロプロス事件(Makropulos Case)」というのが順等なんでしょうが、カリタ・マッテイラ(karita Mattila)に敬意を表して、上記のタイトルにしました。

ノルウェー人ソプラノのカリタ・マッテイラは、昨今わりと頻繁にサンフランシスコ・オペラに来るんですが、評判負けというのが、私の感想でした。

ところが、今回の「マクロプロス事件(Makropulos Case)」で演じたエミリア・マーティはダイナマイト・パフォーマンスで、今までの印象は帳消し。演技力抜群の、別格オペラ・シンガーへと認識を新たにしました。今回も、一応見ておこう程度で、見たんですが、すでに有名な歌手でも、突然、飛躍して、自分を乗り越えるってこと、あるんですね。それも感動しました。

オペラの筋はというと、世界的なオペラ歌手、エミリアは、実は御年337才。ハプスブルグ家の錬金術士だった父が調合した「不老」の薬を無理矢理飲まされたため、長生きしてるんですが、再び、薬を飲まなければならない時期がやってきました。

薬の処方箋は、昔々(100年前頃)、彼女の生んだ子供を相続人に指定した遺言状と一緒に、タンスの引き出しにしまってあるんですが、そのタンスは、自分の孫にあたるアルバートが相続争いをしている家の中、そして家の現住人は、敵方のプルス男爵。

エミリアはアルバートを助ける気はさらさらないんですが、処方箋を得たいがために、遺言状のありかを教えようと、アルバートとその弁護士に近づきます。そこからこのドラマは始まります。


写真:美しく魅力的なエミリアと、向かって左から、エミリアが自分のおばあさんとは知りようもなく、彼女に恋するアルバートと、やはり彼女に惹かれるプルス男爵。その隣は弁護士のアシスタント、弁護士、プルス男爵の息子の恋人のクリステナ。息子はエミリアに一目惚れ、父親の男爵がエミリアと関係を持つのにショックを受け、自殺してしまいます。

舞台は、白い壁に、黒のペン書きのイメージが基調。エミリアのドレスも白で、全体的にフレッシュな感じで、ファッション誌、ボーグ的な味のある、舞台となりました。
 写真:ウィスキーを飲みながら、エミリアは自分の秘密を明かします。

カリタ・マッテイラは、マノン・レスコーのように、すでに設定されてるような役をやるより、自分でもっと創れ、演じられる部分のある役のほうが、彼女の持ってる力が引き出されれ、向いてると思います。

彼女のアクターとしての才能が光り輝いたパフォーマンス、さらにプルス男爵を始め、まわりのパフォーマンスが標準を上回り、またコミカルな部分もたくさんあって、思わず笑ってしまうオペラなので、お薦めです。
写真:弁護士事務所で出会うエミリアと男爵

初日のパフォーマンスのビデオクリップをリンクしておきます。

写真を見たい人は、こちらへどうぞ

ただし、英語の字幕を読みつけてない人は、見に行く前に、ネットで筋ぐらいは読んでから言ったほうが、楽しめると思います。

2010年11月8日月曜日

プッチーニの傑作「蝶々さん」と「芸者」のイメージ

今シーズンから新しいプロダクション(制作: 新しい舞台デザイン)になったんですが、こんなに違うかというほど、見られる舞台になりました。

日本人である私には、19世紀後半のヨーロッパが見た日本を、現代アメリカで再構すると、中華風日本民家になるという奇妙さがなじめないんですが、今回初めて、それはさておいといて、プッチーニのマダム・バタフライ(蝶々さん)に、ちょっとだけ心が開いたという感じです。

プッチーニが、同名のお芝居をパリで見たとき、蝶々さんがピンカートンを一晩待ち明かすのを、当時の最新照明技術を駆使して表現したのに感動。夕方が深夜になり、朝焼けがくるのを音楽で表現してみせると言って書かれたこのオペラ。

今回、光っていたのはピンカートン。演じたのは、ステファノ・セッコ(Stefano Secco)。ファースト役を演じたときは失望したんですが、今回のピンカートンは、いままでみた蝶々さんのなかで一番の出来! セッコ、汚名挽回。

今回のパーフォマンスのビデオクリップをここにリンクしておきます。

蝶々さんとピンカートンの新婚の夜。写真はSFgate.com and by Cory Weaver

芸者に売られた(多分武家か公家出身の)蝶々さんは15才でピンカートンと「結婚」、もちろん人身売買を正当化するための結婚ですが、蝶々さんは本気の結婚と思い込み、キリスト教に改心。このため家族から縁を切られたその3ヶ月後、ピンカートンはアメリカに帰国。

3年後、アメリカ人妻をたずさえて、ピンカートンが佐世保に戻ってくるのが、2幕目。

ピンカートンは自分を迎えに戻ってくると憑かれたように信じる蝶々さん。お金も底をつき、少しおかしくなってきてるんですが、それが子供っぽさと混じり合ってかなり不気味。それが絶頂に達するのが、プッチーニの美しい音楽が流れるなか、ピンカートンを窓辺で待ち明かす一晩。聴衆は、ここに怨念執念のおどろおどろしたものを感じるんでしょうが、アメリカに住む、現代日本人の私には、理解をチョウ超え。この場面は、以前の制作のほうが異常性を示唆する点で優れてたかも。

ギリシャ悲劇の「メディア」は、夫の血をひいている子供、三人を殺して夫へ復習しますが、蝶々さんの場合は、生き甲斐である子供の将来が確かなものになると、自分の生きる事には意味がなくなり、死を覚悟。

以前、アメリカ人の「芸者」に持ってる「おどろおどろしい」イメージについて、書いた事ありますが、今も執拗に変わらぬこのイメージ、プッチーニの「マダム・バタフライ」にも責任はあるんじゃないかと思い始めました。

ラ・ボヘメ、トスカと大ヒットを飛ばし、そのすぐ後に創作したのが、「蝶々さん」。今でも、世界で一番良く上演されるオペラのトップ10に入っているし、サンフランシスコ・オペラでは、トップ3に入ると聞いた事があります。蝶々さんを上演してれば、お客さんが入ってくるので、資金調達のため、2〜3年に一回、上演。こんな事情で、いわゆる西欧諸国で、「不気味な芸者」のイメージが定期的に、再生産されてるんじゃないでしょうか。

今回の蝶々さん、最初からあっと言わせる舞台のお披露目法、また蝶々さんを演じたスベトラ・バシレバ(Svetla Vassileva))も、2幕目では劇的な演技を展開するので、オペラファンにはお薦めです。

もっと写真を見たい人のため、新聞のレビューをリンクしておきます。

2010年11月1日月曜日

ドミンゴの「シラノ・ド・ベルジュラック」

さすがプラシド・ドミンゴ、券が売れて、久しぶりにサンフランシスコ・オペラハウスが満杯、観客の体温で、場内がいつもよりむっと温かい。

70才近いドミンゴ、主役のシラノ・ド・ベルジュラックをどこまで演じ、歌えきれるか、皆、興味津々だったと思いますが、さすが大物プロ、ここぞというところにエネルギーを集中させ、歌い演じきる事をちゃんと心得ているのに感心。


そして集エネの二場面に、私のソウルは感動したんですが、その前に、ちょっと説明。

シラノは剣豪で詩人、哲学者でもあるという、大変、優れた実在の人物なんですが、醜い鼻のため、いとこである、美しいロクサナに愛を告白する事ができません。

そんな気持ちはつゆ知らず、ロクサナは、シラノの部下の兵士で、ハンサムなクリスチャンに恋してることをシラノに打ち明け、危険な前線で、クリスチャンの命を守ってくれるよう頼みます。

クリスチャンもロクサナを好きなんですが、なんせ野暮なんで、気持ちをうまく表現できず、ロクサナの「精神」を満足させることができません。

クリスチャン:ロクサナ、ボクはあなたが好きです。
ロクサナ:  (うっとりとして)どのように好きなのか言って...
クリスチャン:どうって言われても... ムムッ... あなたを好きなんです。
ロクサナ:  だからどのように...? (ちょっとイライラ)

これに困ったクリスチャンは、シラノに相談。するとシラノは、「面白い事を考えついた。君は身体の『存在』をつらぬけ。ボクが言葉を考えよう。」つまり2人で分業して、一人の人間を演じるという提案をします。

(影に見えるのがクリスチャン)

ここで第一の感動の「ベランダ」の場面が始まります。夕闇のなか、シラノは影からクリスチャンに、二階のベランダに出てきたロクサナに語りかける愛の言葉を、伝えます。暗くなって誰が誰だかわからなくなると、シラノは前面に出てきて、ロクサナを愛する気持ちを、とくとくと伝えます。感動したロクサナが、ベランダから降りてくるすきに、シラノとクリスチャンは場所を交換。クリスチャンとロクサナは熱烈な愛のキスをかわします。



結局2人は結婚するのですが、軍人のシラノとクリスチャンは前線に送り出されます。そして前線から、シラノは一日、二通、クリスチャンの名で、愛の手紙をロクサナに送り続けます。

手紙を読んで感動したロクサナは、「この手紙には、私が愛してやまないソウルが、久しぶりに感じられる...」と、危険を犯して前線を訪問。驚いたクリスチャンはシラノに、「ロクサナが本当に愛しているのは、ボクではなく、この手紙の書き主であるあなただ!」と悲しみながら告げ、シラノに真実を告白するようにせまります。

ところが、運命のいたずらで、その日シラノの書いた愛の手紙をふところにいれたまま、クリスチャンは敵の銃弾に倒れます。

夫の死をいたんだロクサナは修道院に入居。シラノは、決まった時間にロクサナを訪問する毎日を送ります。

クリスチャンの死の数十年後、シラノがいつもより遅い時間にロクサナを訪問。自分の死を予感しての最後の訪問なんですが、ここで、2つ目の感動の場面が繰りひろげられます。



ロクサナがふところからクリスチャンの血で汚れた最後の手紙を出して、シラノに差し出すと、シラノは手紙を声をあげて読み始めます。

ロクサナ:「もう暗くなって手紙が読めないはず、それなのに、なぜまるで手紙の内容を知ってるかのように読めるの?」
シラノは手紙を読み続けます。
ロクサナ:「もしかして、手紙を書いたのは、あなたなんじゃないかと思う事があるんだけど、あなたなの?」
シラノ: 「いいや、断じて私じゃない!」

否定を続けているうちに、椅子から転げ落ち、息をひきとります。最後まで、手紙を書いた事を強く否定して...

この場面には、私のソウルもタッチされ、思わず、涙がほほを伝いました。

私:「なぜ、死に際に本当の事を伝えないの?」

シラノの「醜い鼻」は、ほとんどの人が持っている、「劣等感」の代名詞だと思います。私たち、醜い鼻は持ってなくとも、さまざまな劣等感を持ってる事ってあります。

クリスチャンは「体」だけの存在だとしても「美しいマスク」を持った身体、「醜い」が「頭の良く教養のある」シラノと同じように、ロクサナを愛していたのだし、その美しい存在にロクサナは恋をしたのですから、2人に優劣はつけがたいところがあります。

ただ愛した対象が、「洗練された」階級のロクサナだったので、ロクサナの精神は、「洗練された」シラノの精神に感動し、愛したのだと思います。とすると、問題は、「劣等感」ということになります。劣等感のため、愛を告白できないけれども、自分の感情を表現したかったシラノは、クリスチャンの身体を使うという、「戦術」に出たことになります。

ロクサナに告白したとしても、シラノの思った通り、拒絶されるかもしれません。だけど、少なくとも、ロクサナは、「美しいマスク」か、それとも「洗練された心」かというチョイスがあったんではないでしょうか。そして、数十年という時間を、納得して生きる事ができたと思います。

とにもかくにも、私のソウルは、この二つの場面を、熱く、気高く演じたシラノに感動。心を動かせる歌の不思議をまたまた体験したのです。

ビデオクリップをリンクしておきます。

普通の日はまだ券が残ってるんじゃないでしょうか。券が買えれば、お薦めのオペラです。

サンフランシスコの新聞のレビューと写真はこちらで見られます。

2010年9月30日木曜日

サンフランシスコ・オペラ制作の「フィガロの結婚」

サンフランシスコ・オペラの、今回のフィガロは、イタリア人のバスバリトン、ルカ・ピサローニ(Luca Pisaroni)、婚約者のスザンナは、アメリカ人ソプラノのダニエレ・デ・ニース(Danielle De Niese)(写真下)。

このフィガロ、パフォーマンスがまだらで、良いときがあったかと思うと、冴えないときがあったりなんですが、フィガロの役のベテランという感じで、演技は、今まで見たフィガロの中で、一番上手。とにかく愉快で、客席、笑いがあふれてました。サンフランシスコ・オペラ喜劇主演俳優賞というようなのがあったら、私は彼を第一位にノミネートしたいと思います。



スザンナは、始めの方は「大丈夫?」というくらい、声が伸びなかったんですが、緊張が解けてきたのか、だんだんよくなり、2幕目では、フィガロと一緒にのってきました。

歌の方の最大の収穫は、伯爵夫人を演じたエリー・ディーン(Ellie Dehn)。サンフランシスコ・オペラ初出演なんですが、ルース・アン・スワンソンと同じぐらい声が伸びるので、ちょっと驚き。(写真下)


サンフランシスコ・オペラの「フィガロの結婚」は、いつも同じ制作、つまり、舞台デザインも衣装も皆、同じ。どこかの倉庫に保存しておいた舞台装置を引っ張りだして使ってるんだと思いますが、なかなかうまくできてます。

そういえば、伯爵夫人のガウンの色がラベンダーから、ゴールドに変わってました。

サンフランシスコ・オペラの「トスカ」も、いつも同じ制作なんですが、ストーリーをたいへん上手にサポートする舞台デザイン。他のオペラカンパニーのトスカもテレビで見ましたが、サンフランシスコの方が、荘厳。変えてほしくないと思ってます。

話がずれましたが、フィガロはお薦めです。舞台のビデオクリップをリンクしておきます。

新聞の批評をここにリンクしておきます。写真がよく撮れてます。

2010年9月27日月曜日

シーズン開始を祝う、カル・パフォーマンス・デイ

秋の訪れとともに、アメリカ中で演奏会シーズンが始まるんですが、今年初めて、カル・パフォーマンス・デイ(Cal Performance Day)が設けられたので、日曜日(25日)に、バークレーへ。

不景気で客層が減るのを心配したカル・パフォーマンス(注参照)が、先手を打って、オムニバス式一日無料コンサートを開催。客層を広げようという試みと読みました。

午前中の目玉は、クロノス・カルテット(Kronos Quartet)。バークレーで、時々、コンサートを開くのですが、いつも売り切れ、今回初めて聞きました。



バイオリニストとか、セロ演奏者という感じじゃなくて、楽器を奏でる職人さんという感じ。英語で、アルティザン(artisan)というんですが、ぴったり。技と音に感動。

オープニングは、多分、フィリップ・グラスの曲。よかったです。この曲じゃないかと思いますが、もっと音質がよく(生なのであたりまえかな)、劇的。

この曲も演奏したと思います。このビデオは2008年となってますが、クロノスの面影を忠実に伝えてます。

無料コンサートなのでプログラムはなく、何を演奏したのか思い出せないのが残念ですが、クロノスのCDをうんと聞いてみるつもり。

注:「カル・パフォーマンス」とは、カリフォルニア大学バークレー校の、ゼルバック・ホール(Zellerbach Hall)を中心に行われる演奏会の総称で、有料と無料のがあるんですが、一般公開されてます。

2010年9月20日月曜日

絶賛、ジュール・マスネの「ウェルテル」

サンフランシスコ・オペラ、2010年、秋の公演が始まったんですが、ゲーテの「若きウェルテルの悩み」をもとにした、「ウェルテル(Werther)」は、すっごくよい出来!!

まず第一に、出演者のほとんど全員が、最高のパフォーマンス!

シャーロッテを演じたアリス・クーテ(Alice Coote)。今回が3度目のサンフランシスコ・オペラ出演なんですが、歌手として、今が最も円熟している時ではないかと思います。深ーい響きのある歌い方で、耳経由でなく、直接、体の中に入ってきて、心の壁をノックしてやまない感じ。滝になったり、せせらぎになったり、しぶきをあげたり、鏡のようにまわりの景色を映したりする、流れのよう。

「ウェルテル」はかなり近代的なオペラで、シャーロッテは、愛を打ち明けられてあせったり(「私のこと何も知らないのに、どうしてそんなに愛せるの?」)自分の気持ちを否定したり(「私にはフィアンセがいる!」)、ウェルテルの心配に捕われて取り乱し、夫をしらけさせたりという、心の動きの表現が求められるんですが、アリスは、声と演技でやってのける、大変な演技派。

シャーロッテの妹、ソフィイを演じたハイディ・ストーバは、サンフランシスコ・オペラは初出演なんですが、嬉しい事に、アリスに、十分に太刀打ちできる声の持ち主。

写真はシャーロッテとウェルテル。サンノゼ・マーキュリー・ニュースから。

前回、グノーの「ファウスト」で、バレンティンの役をやったブライアン・ムリガン(Brian Mulligan)が、シャーロッテのフィアンセ/後に夫役で、揺るぎないパフォーマンス。

ウェルテルを演じたメキシコ人テナー、ラモン・バーガス(Ramon Vargas)は、絶賛を受けてました。一幕目、アリア数曲のしめくくりが、ちょっとずれるような気がしたんですが、2幕目が進行するにつれ、迫真の演技。

リブレットもよかったです。「君の瞳はボクの地平線」とか、恋をしてる人にしか言えないような台詞が一杯。

ウェルテルは初めて聞くんですが、オーケストラも凄く良かったです。曲の流れや、楽器の使い方が(どこにどの楽器を使う)大変面白いだけでなく、個性のある音色の楽器を使って舞台を進行させるので、上の4人に加えて、5人目の登場人物であるかのような感じ。

ゲーテのオリジナルは読んだ事はないんですが、このオペラを見ると、結構おもしろそうなので、学生のころ、読んどけばよかったと、ちょっと後悔。

ビデオクリップをリンクしておきます。最初の二つがラモン・バーガス、次がアリス・クーテで、オーケストラの面白さがちょっと味わえます。赤いドレスを来たのがハイディ・ストーバ、次が夫役を演じる、ブライアン・ムリガン。

心と外界を舞台化したような、地下と地上のある舞台。地下でウェルテルの心の動き、地上はシャーロッテとの関係や、2人をとりまくまわりの環境が表現され、うまく作ってあると思いました。ただ、根元が銀で、葉っぱがスクリーン・ディスプレイの木、もうちょっとなんとかならないかな。例えば、スクリーンをもっとおっきくし、緑の美しさを強調するとか...

私はアリスに最大の拍手、オーケストラと指揮者のエマニュエル・ビローメ(Emmanuel Villaume)にも、次の最大の拍手を送りたいと思います。

2010年9月14日火曜日

ポイント・レイズのエルク

ゴールデンゲート橋を渡って、一時間くらいドライブすると、ポイント・レイズ連邦海浜公園(Point Reyes National Seashore)という国立公園があるんですが、そこへ一日ハイキング。

この日は霧がひどく、集合場所のマクリュアズ・ビーチ駐車場(McClures Beach)へ向かうにつれ霧が濃くなり、車の先端しか見えなくなった時はさすがに道路上停車、引き返そうかとも思いましたが、対向車が来るのさえ見えないので、そろそろ前進。

駐車場へ着いたら、けっこうたくさん車が停まってたので一安心。さっそくタマルズ・ブラッフ(Tamels Bluff)へ向かいます。

霧の中、はるか向こうに小さくエルクの群れを見たときは、「お久しぶり!」

2度目はけっこう近場で、その場にいあわせた、ハイカー全員の足を釘付けしてしまう自然のドラマに遭遇! 

写真:道ばたに残されたエルクの糞。おおきなソラ豆ぐらいの大きさなんですが、もっと厚いです。

エルクの親分1が、5〜6匹のメスを先導して、右手に登場、池に水を飲みにやってきました。

親分1が、のどかに水を飲んでるメスの群れを突然、威嚇、押し戻します。いったいどうしたの? 

ややっ!、左手、山の向こうに、成熟したオス2が登場! まるで、親分に挑戦するかのように、いななきながら、しっかとした足取りで、山を下ってくるではないですか! そのうち、中央の山からも、ハーレムを率いた、オス3が出現!

YouTubeにこの模様を、アップロード
しておきましたが、エルクの「いななき」と言うんでしょうか、それを聞いたの、初めて。聞きたい方は、是非、YouTubeへ行ってみてください。2本目リンクはこちらです。



水を飲み終わった、親分1と、そのハーレム(写真上)。ここには見えてませんが、少し離れた左側に、3〜4匹の、若いオスの群れが、休んでました。同じグループのようです。

この立ち会いのお陰で、特別ハイクとなりました。

帰り道で、またもやエルクに、極近出会いをしましたが、なぜかカメラが休憩モードで、写真を撮れず、残念!
写真:ポイント・レイズの最北端の断崖、タマルズ・ブラッフ。

2010年9月6日月曜日

失望、 ジョージ・クルーニーの「アメリカ人」

働く人の日記念日をはさんでの三日間連休が始まりました。

で、9月3日(金)は、ジョージ・クルーニー主演の「アメリカ人(The American)」を見に行ったんですが、プレビューの印象とはぜんぜん異なる、地味な映画。

「特殊銃作成を依頼され、イタリアの田舎町で、ひっそり手作り銃を作る、雇われ殺し屋の、つまらない日常」を描いた作品といった方が正解。

2つ席向こうのおじいさんなんか、途中で高いびき、奥さんに注意されたりしちゃって。

ま、ともかく、そんな田舎の狭い路地で、車とオートバイの華々しい追っかけ殺人がおこるんですが、そういう筋が信じ憎いです。騒ぎで、年寄りが心臓マヒを起こす場面なんかあったら、もちっと信じやすいかも。

ジョージ・クルーニーはこの映画の出資者の一人。自分で出資して、「孤独と恐怖に一人で耐えるボクは、まさに『The American』、この映画で、ボクの俳優生活XX年の記念にしたい」というナルシズムがじゃらじゃら見られる映画。その証拠に、ベスト・アングルで撮影した、ハンサムなジョージ・クルーニーが、たっぷり見られる、クルーニー・ファンには、ばっちり楽しめる映画。

「The American」は、アメリカの暗い将来を反映したような映画とも言えます。心理学に興味ある人には、多分、原作の方が面白いかも。

2010年8月30日月曜日

高満足度の、ロブスター・シャック!

サンフランシスコからパロアルトにいく途中に、レッドウッド・シティ(Redwood City)っていう町があるんですが、そこがロブスター・シャック(Lobster Shack)のホームタウン。

ハイウェイ101をサンホゼ方面に南下、Wipple Blvd でハイウェイを出てそのまま、ストレートにダウンダウンに行く、道路の左側、「イン・アンド・アウト・バーガー(昨日オープンしたばかり)」の直前にあるんですが、外見の印象では、高級食材を扱うレストランのイメージがゼロ。大丈夫かな...

中に入ると、レジでオーダーしてお金を払い、それから開いてるテーブルにつくという、カフェテリア式。スタンフォード大学のカフェテリアの方が、よっぽどフォーマルな感じ。

ここまで来たら、観念して、とにかく食べてみよーっと。おなかも空いてるし...

ここによく来るといういう友達のオーダーに右ならいし、「ロブスター・ビスク」をオーダー(7ドル75セント)。(写真下)

コーヒーマグに盛ったこのビスク、えらいカジュアル、ロブスターを高級化しないところが、気に入ってきて、「こうじゃなくちゃ、ロブスターなんで気楽に楽しめない」と、お店の経営方針の正しさを直感!

金曜日のディナーにしては早めについた私たちはテーブルをとるのに、なんの苦労もなかったんですが、急にがたがたしてきたなと思って振り向くと、大きな窓越しの向こう側には、長い列ができてるじゃないですか。

マグが空になった頃、殻からとりだしてマヨネーズで合えた風の、「ネイクド・ロブスター・ロール(Naked Lobster Roll (18ドル50セント)」が。これが、歯ごたえも、香りも、色も新鮮で、だからこそ美味のロブスター! (写真下)

今まで、ロブスターを特においしいと思った事はなかった私ですが、生きたロブスターのゆで方を心得てる人がゆでたロブスターを、これほどカジュアルに、食べた事がなかったからに違い無し。

ネイクド・ロブスター・ロール、本当は、フレンチフライがついてくるんですが、カロリーをやたら取りたくないので、コールスローに変更してもらいました。干しぶどうが入っている、ちょっと甘い、私好み風コールスロー。


ご主人のラッセルさんは、ボストンで、ロブスターの輸出業に従事。友達の紹介で、サンフランシスコ・ベイ・エリアの女性と知り合い、数ヶ月後に結婚、生まれ故郷のボストンを引き払って、2006年に、レッドウッド・シティに引っ越してきたそうな。

そこで思いついたのが、自分の知識と経験を生かせる、メインロブスターのお店。ロブスターの専門店のないサンフランシスコ・ベイ・エリアで、これが、ヒットしたというわけです。

東海岸から空輸されるロブスターを、サンフランシスコ空港へ取りに行くのはラッセルさんの役目。

家族のメンバーで営業している店では、お客さんのオーダーが入ってから、タンクに入ったロブスターを捕まえて調理するとのこと。

私の友達は、本当に常連らしく、車の窓越しから、外に出てるラッセルさんと、帰り際にひとしきりおしゃべり。開店祝い中の「イン・アンド・アウト・バーガー」のお客さんが、ロブスター・シャックの駐車場を占領してしまわないよう、駐車場の見張りと、車の整理をしてる、ああそうか、大変だね等々、話してました。

ロブスターを高級料理にせず、カジュアルに、食べさせるこのお店、気に入りました。

ロブスターが好きな人、ロブスターに興味はないけど、試してもいいという人は、ハイウェイ101を、南に下る価値、おおあり。

2010年8月16日月曜日

初期印象主義絵画展 at デ・ヤング美術館

サンフランシスコのデ・ヤング美術館で、オルセー美術館所蔵の、「初期印象主義絵画展」を開催中。そろそろ見ておいた方がよいと思っていったところ...

展覧会場へ入るといきなり、正面に、ブグローの大作、「ビーナスの誕生」でが〜ん、右に、ルフェーブルの傑作、「真実」」でが〜ん! この二枚を見てたじたじとするだけでも、行く価値あり!

マネの作品は7品くらい来てました。「笛を吹く少年」は、以前、見た事ありますが、照明のせいか、ぐっと良い感じ。



展示されてる作品をリストしておくと...

ホイッスラー 「母の肖像」:けっこう大きな絵。
カイユボット 「床を削る人」: すがすがしく、美しい、労働者の絵。
ドガ 「バレエのレッスン」: 子供の頃、カレンダーの絵でみたのを覚えてます。その他5品くらい来てました。
セザンヌ 「首つりの家」。この他、数点、来てました。
ピサロ 「赤い屋根の家、冬の効果」。ピサロのも数点来てました。
シスラー 「洪水と小舟」 その他数点。
モリゾ 「ゆりかご」
モンテッセリ 「白い水差しのある静物画」
バジール 「家族の集まり」

この他、ルノアールやバジールや、名前は思い出せませんが、写真などで見た事のある絵が、たくさん来てました。

有名な絵をど〜んとたくさん持ってきてみせる、アメリカ式展覧会は、見ごたえあり。

バジールは、マネやルノアールと親しかったらしく、バジールが青サギの死骸の静物を描いているところを、ルノアールが描いたり(この作品はモネが購入、今はオルセー美術館蔵)、そのとき一緒に、青サギを描いた他の画家の静物画(モンテッスリ?)が、展示されてましたが、こういう、画家たちの交流が、絵でうかがえて、面白です。

2010年8月11日水曜日

サンフランシスコ・バレエ at スターン・グローブ

先週末のスターン・グローブ、夏のコンサートシリーズは、サンフランシスコ・バレエの出番でした。

朝からフォグが覆う寒い日で、あまり人は来てないんじゃないかと思ったら、大間違い。一時間前についたのに、良いスペースは、ほとんど残ってなかったのでがっかり。やっと舞台左前にもぐりこみました。

開演ちょっと前から、バレエ団のメンバーが、舞台上で思い思いにウォーム・アップを始めたところが下の写真。おんぶされてる女の子が可愛くて撮ったのですが、左後方に、団員でソロリストをしている、山本帆助(はんすけ)という、日本人ダンサーが写ってます。入団して、かれこれ、5〜6年。その後ろの茶色のジャケットを着ているのがジェイミ・ガルシア・カステラ、彼はプリンシパルで、上手。


マリア・コチェトーバ(団員)は、今回は非番で、観客席から公演を見ていたようです。彼女がアップロードしたスターン・グローブの写真をリンクしておきます。一時、霧がひどくなって霧雨っぽくなったとき、公演が一時中止になったんですが、そのときの写真です。

最後に踊ったのは、マーク・モリス(Mark Morris)の、サンドペイパーバレエ(Sandpaper Ballet)。軽快で楽しい作品で、大好きです。

2010年7月30日金曜日

87才と97才の新婚さんがロンドンで誕生

(写真:BBCのニュースサイトから)

BBCのインタビューのビデオは短いんですけど、かなり面白いんで、お薦めです。内容は、次のとおりです。

97才とはとても思えぬヘンリーさんと、87才のバレリーさんが出会ったのは、ロンドンの老人ホーム。

今から4年以上も前に、ヘンリーさんはバレリーさんに惹かれている自分を発見。

「自分みたいな年寄りに、こんな『若い女性』が興味をもつわけがない」と思ったのだそうですが、ある日、冗談まじりに、「もしぼくが結婚してと言ったらなんていう?」と聞いたところ、「バレリーが、突然ギャーギャー笑いしだし、テーブルに顔をつっぷして、涙を流しながら笑い続けたんだよ。」

毎日、「ぼくと結婚しない?」と、聞き続けた、4年後のある日。

「『これを最後にもう二度と聞かないけど、ぼくと結婚してくれない』と言われたとき、いいわよと言ったのよ」とバレリーさん。

80人のゲストを老人ホームへ迎えて挙式、そのあと、ハイ・ティーで結婚を祝ったそうです。

新婚旅行は、老人ホームのお庭。

年をとっても、一人じゃ寂しいんですね。お幸せに!

2010年7月27日火曜日

サンフランシスコ交響楽団 at ドロレス・パーク

先週の日曜の、ドロレス・パーク(Doroles Park)でのサンフランシスコ・シンフォニーのコンサート(無料)は、最高でした。

今年は、「祝メキシコ独立200年」という、特別タイトルつきで、前半はメキシコの作曲家の作品を4曲やったんですが、これが意外に面白かったです。欧米のメロディーや、楽器の組み合わせ方・使い方とはちょっと違う、そこが新鮮!

ゲストの指揮者が、アロンドラ・デ・ラ・パラ(Alondra de la Parra)という、ニューヨークベースのメキシコ人女性というのも、さらにグー。

ながーい波に乗って、波乗りをしてるような指揮ぶり、美しい指揮棒の手さばきは、堂々プロフェッショナル。スペイン語と英語を交えての曲の合間の説明にメキシコ人の誇りが感じられます。それが観客に伝わるだけでなく、ちょっとハスキーな声でにこやかに語りかけるフレンドリーなのが受けて、やんやの喝采。


「メキシコ系の人、手を挙げて!」というアランドラのリクエストしたのに応じてあげられた手は、結構な数。

指揮者は、男性の仕事という感じでしたが、このドロレスパークでのコンサートが、その観念を、見事に「くずかごのくず」にしてしまいました。

メキシコ系の子供たちもたくさん来てましたが、ポニーテールをしっぽのように振り回して、指揮するアロンドラを見て、「私も、自分のなりたいものになれる!」と思った女の子が、必ずいたと思います。


「Sobre las Olas」という曲の演奏のビデオをYoutubeにアップロードしました。

誰でもが聞いた事のあるこの曲は、メキシコ人作曲家、Rosasの作品と解説すると、聴衆は大喜び。テーマの部分が繰り返されるとおこる拍手に、皆さんの喜びはよくわかるわよと、アロンドラが半分聴衆に向き直って、笑顔を見せて答えます。

サンフランシスコの風が彼女のジャケットを揺らします。

Marquez作の Danzon No.2というのも、なかなかよかったです。こちらにさわりをアップロード

第二部は、ドボルザークの「新世界」。彼女らしい、チョイスでした。久しぶりに全曲聞いたんですが、こういうイベントにぴったりのマスターピース。

2010年7月18日日曜日

携帯で視力検査の時代!?

開発したのはMITのメディア・ラボ(MIT Media Lab)。

ネトラ(NETRA)と名づけられた、この装置、携帯電話の上からかぶせる、高さ8センチくらいの、プラスチックの「覗き装置」と、アプリで構成されてます。

携帯の画面に乗っけた、四角いつつを覗くと、緑と赤の線が見えます。この線が重なったときに「矢印」キーを押すことで、視力を測定。


片目づつテストして、両眼の検査にかかる時間は約2分。

目医者さんで、定期的に目の検査をしてもらうのは、脳の一部である、眼球全体の健康をチェックするために大事ですけど、視力はこの装置でオッケー。

眼科で使う、視力測定器(とんぼのめがねのような大きい器機)が高価で購入できなかったり、装置を使いこなせる、訓練を受けた人がいない、発展途上国で役に立つとのことですが、とんでもない、アメリカの都会の真ん真ん中でも、十分役に立ちます。

視力は育ち盛りにの時に、悪くなったりするもの。ですから、視力を月に一回検査する習慣を作って、勉強するとき、前屈みにならないよう、自分で姿勢に気をつけたり、採光に気をつけたりして、近視になるのを、未然に防ぐ事ができるじゃないですか。

また、こういうデータを、スピーディーに大量に集められるので、まだよくわかってない、コンピュータの使用と視力の関係、またもっと踏み込んで、コンピュータ使用と眼球の健康の関係を解明する、手助けになるかもしれません。

私の行ってる目医者さんは、サンフランシスコのダウンタウンにあるんですが、視力検査結果(処方箋)を、渋々にしか、くれません。

「このメガネ、うちのじゃないわね。どこで作ってるの?」
「日本のメガネのレンズはうすいので、日本でつくってるの。アメリカでは、こんな薄いレンズは、法的に禁止されてるでしょ。」そう言っても、「うちで作って」と懇願されるので、困っちゃうんです。ですから、視力を簡単に測れれば、すごく便利。

2010年7月12日月曜日

サンフランシスコ・オペラ at スターングローブ

7月4日のアメリカ独立記念日と、毎年、恒例のスターン・グロープ、夏のコンサート・シリーズ日(Stern Grove)が重複。

この日は、たまたま、サンフランシスコ・オペラの番で、独立記念日を祝して、パトリシア・ラセットと、ジョン・リエラという大物を、この無料コンサートに出してきたので、行ってみました。

いつもは、けっこう早い時間にフォグ(霧)が入ってきて薄寒いスターングロープも、この日は、芝生で音楽を楽しむのに最適の気候。ヤンマーサイズの大きなとんぼが、けっこう、いっぱい飛んでます。

大人、子供、おばあさん、赤ちゃん、恋人同士、家族、友達、たくさんの人。私はコンサートが始まる一時間前に、理想的な場所を確保。おしゃべりしたり、プログラムを見たり、ひなたぼっこしながら、開演の午後2時を待ちました。

ジョンのパフォーマンスをビデオで撮ったんですが、長過ぎてアップロードに失敗。パトリシアのビデオは撮影自体が失敗。で、写真にします。(下)舞台上のパトリシア。


アンコールも3回くらいやった、楽しい屋外コンサートでした。

今日は、サンフランシスコ・シンフォニーが出るので、行く予定。でも午前10時現在、ファグが厚く空を覆ってる状態、12時には、散って欲しいんですけど。するとまた、午後は最適な気候になるんですが...

アップデート:やっぱりフォブのため、ちょっと寒かったです。

2010年7月4日日曜日

アメリカ西海岸都市の不景気対策

オレゴン州のメイトレクリークという町で、街灯を消して、年間、約12,000ドルを節約するという案が、先週、町議会を通ったそうです。

電気がともらない街灯には、ピンクのリボンがつけられます。

「夜、暗いのはいや」という人は、年間160ドルを町に払うと、街灯を復活してくれるそうです。

サンフランシスコでは、激減した市の収入をカバーするため、サンフランシスコに入ってくる車の橋、ベイブリッジ使用料を、7月1日から1ドル値上げ、6ドルになりました。

サンマテオブリッジとダンバートンブリッジも同時に1ドル値上げ、市外で働いてる私にも影響有りです。

サンフランシスコのベッドタウンでは、カープールという、車の相乗り”制度”が、市民のあいだで自然に発達して、かれこれ40年以上はたつはず。橋によって人数は違いますが、規定の人数が乗車していると、専用レーンが使えて、橋使用料無料、プラス時間節約でたいへん便利。このカープール専用橋通行料が、2ドル50セントと有料化。

サンフランシスコ市内では、道路沿いの駐車メーターの数を、ぐーんと増やすために、公聴会を行ったばかりです。

2008年9月のバブルの崩壊後、市町村の金詰まり、ついにここまで、もっといきそーという感じのニュースが増えてます。

(1929年大恐慌時に撮られた写真)

2010年7月1日木曜日

母親グマが子グマを助けようとして...

若木に子グマが登ってしまいましたが、おりてくる事ができません。

なんとかして、子グマを木から下ろそうとする、母親グマの努力...

ついに実ってよかったですね。

2010年6月21日月曜日

ワーグナーのヴァルキューレ、What a DRAMA!

サンフランシスコ・オペラ、夏のシーズンの2作目は、ワーグナーの「ヴァルキューレ」。

クリストファー・ベントリス(Christopher Ventris)とエヴァーマリア・ウェストブルク(Eva-Maria Westbroek)が演じる、シグモンド(逃亡者)とシグリンデ(不幸な人妻)の出会いから始まるんですが、二人の最初の歌の掛け合いで、オペラのサクセスは、8割がた確定。

(初日のパフォーマンスは、こちらのビデオクリップで見られます。)

シグモンドとシグリンデは結ばれるのですが、同時に昔、離ればなれになった双子という、運命の絆も発見します。

ところで、開演直前に、「ブリュンヒルデを演じる、ニーナ・シュテンメが風邪で調子が悪いので...」という場内放送が流れたとき、劇場内に、がっかりの大きなどよめき。「でも、風邪を押して出演することになりましたので、ご了承ください。」 場内拍手!

(写真:ニーナ・シュテンメのブリュンヒルデ。San Francisco Chronicleから。サンフランシスコ・オペラのヴァルキューレの写真は、全部で7枚、こちらへ行くと見られます。)

これが本調子じゃないなら、本調子の時はいったい、どんななんだ! 最初から最後まで、声のぶれとかずれがなく、(多分正しい)発声法を保ち、徹底的に、力強く歌ってゆく力。

彼女はスエーデン人なんですが、ヨーロッパのオペラの伝統の中で育くまれた歌手と、アメリカの歌手との違いを感じます。

ニーナは、2011年の夏のオペラ、「リング」シリーズで戻ってくる予定なので、楽しみです。

第三幕に、ヴォタン(ギリシャ神話のゼウスのドイツ版と考えてください)の娘たちが8人集まって歌うところがあるんですが、このあたりから二流の歌手が出るんじゃないかと思っていたら、ほとんど皆、実力派だったので、4時間近くの大河ドラマ、最初から最後まで、十分に楽しみました。

ところで、ヴァルキューレ(リングの第二部)ですが、日本風に言うと、古事記や民話や言い伝えが混じってできた話。

不倫と近親相姦は許せない、という結婚の女神の訴えにより、ヴォタンは渋々、最愛の娘、ブリュンヒルデを送って、シグモンドを、罰として殺そうとします。しかし、シグモンドのシグリンデ(ビデオでは緑のドレス)に対する愛の深さに、心を動かされたブリュンヒルデは、命を助けてしまいます。

そして姉妹たちにシグリンデを引き合わせ、「この人は子を宿してます。その子の名はジークフリード、いずれ、世界を救う、英雄中の英雄になるはず」と予言し、母親を託します。

娘の裏切りに怒ったヴォタン(ビデオ内では黒い片眼鏡)は、シグモンドを即座に殺した後、罰として娘に、「お前から神の力を剥奪し、眠らせよう。最初にお前を起こした男がお前の夫、たとえどんな奴でも、そいつのいいなりになるがよい!」

ブリュンヒルデは父神に、「私は、あなたの理性ではなく、感情が願っていた事を実行して、シグモンドを助けただけ。どうせ誰かのものになるなら、私に相応しい、英雄にして」と懇願。

娘を哀れに思ったヴォタンは、ブリュンヒルデの眠る岩のまわりを、神の火で囲い、その火を超えることのできる英雄が彼女の夫になることを約束します。

ヴァルキューレの中では触れてませんが、話のいきさつ上、人間となったブリュンヒルデの、将来の夫は、英雄中の英雄、まだ生まれてない、ジークフリードであることが示唆されます。

ところで、双子のシグモンデとシグリンデは、神、ヴォタンの、人間の息子と娘。ですから、ブリュンヒルデも、長い眠りの後に、血族結婚することになります。でもこの話は、リングシリーズ、第三部の、「ジークフリード」のお楽しみとしておきます。

こういうヨーロッパの昔話に、「眠りの森の美女」の話の原型があるんですね。

2010年6月19日土曜日

ヤフーがプロフェッショナル・ブロガーを募集中!

日本ではブロガーは高く評価されてません(「タレントばっかり」等)が、アメリカでは、さらに高く評価される傾向にあります。

その証拠というのも変ですけど、ヤフー・ファイナンス(YAHOO Finance)が、プロフェッショナルのブロガーを募集しだしました。募集開始日は、2010年4月12日。まだ閉め切られてないので、条件を見たい人、募集してみたい人は、こちらへどうぞ



日本語ヤフーでも募集するかもしれません。この就職難、先手を打って、コンタクトを取るのも一つの手。

ルーター(Ruters)には、すでに有名なブロガーがいて、最近はテレビにも招待されるようになりました。でもルーターがお金を払ってるかどうかは、知りません。

「ハッフィングトン・ポースト Huffington Post」という、通常のブログ以上に成長してしまったブログサイトがあるんですが、発表ブログや、引用掲載、またリンクされたブログや記事に、一日、10万通のコメントがよせられるため、それを処理するために、ハイテク会社、アダプティブ・セマンティックス(Adaptive Semantics)を買収! 6月17日付けで発表されました。

思わぬ形でブログが、日毎に発達。わくわくします。

アメリカで、政治経済系のブログが盛んになる理由の一つは、テレビや新聞に対する不信が大きいと思います。

CNNだって、ブッシュ政権のとき、イラク戦争に都合の悪いことは報道しないし、インタビューされた人がしゃべってる肝心の点が、同時表示される英語の字幕では落としてあったりで、あきれてしまいました。今はインターネットがあるので見る頻度ゼロ。

NBCはGE(General Electric)が親会社なので、GEや、GEの株価に影響あるようなことは、無視したり拡小解釈したりするというのをわかった上で、朝のニュースを流してます。ハイウェイの混み具合や、日中のお天気予想を見るためです。

アメリカ三大ネットーワークは、「大統領の要求」で、報道を「自己規制」することがあり、また報道内容が似ているので、不信は健康的とすら言えます。日本でニュースを見ると、アメリカの報道ではカットされていることが当然のように報道されることがあるので、びっくりすること(「えっ!戦争の死傷者って、こんなにすごいの?」)が、あります。ま、これがBBCを聞くきっかけになったんですけど。

ウォール・ストリート・ジャーナルは、2年くらい前に、オーストラリア大資本に買収されて以来、これも用心。購入主の名前はど忘れしてしまいましたが、大金持ちで、社会の利益より、自社の利益を優先、報道にプレッシャーをかけるので有名な人です。

フォックス・ニュース(Fox News)は、もう、ジョーク。「Today's Show」という人気コメディ番組のホスト、ジョン・スチュワートの、辛辣な政治批判のいいネタです。

私のニュース源は、ノンプロフィット団体がやっているローカルの放送局(視聴者の寄付で運営)が流すBBCのニュース。BBCが国外に販売しているニュースには、5種類ぐらいあって、アメリカが購入してるのは、アメリカ批判が一番少ない版だそうです。それでも、アメリカの放送より、心を許して聞けます。

あとはほとんど、インターネット。10ぐらい、無料のブログのサイトがブックーマークしてあるので、毎日、かならず、3つくらいは、チェック。読者になって購入してるブログのようなサイトが一つあります。

ボーグとかエレなどのファッション雑誌。米語版ボーグは結構面白い記事が載ってる事があります。

アップデート(6月20日)フォックス・ニュースとウォール・ストリート・ジャーナルのオーナーは、ルーパート・マードック(Rupert Murdoch)。オーストラリア国籍だったんですが、アメリカ人しかアメリカのテレビ局のオーナーになれないという法律をクリアーするために、アメリカ市民になったようです。

2010年6月7日月曜日

グノーのファウスト

2010年、サンフランシスコ、夏のオペラシーズンは、グノーのファウストで6月5日に幕開けしました。

自分の欲しいものを手に入れるため、悪魔に魂を売る年老いたファウスト博士は、何を望むかで3っに分けられます。

1) 女性
2) 名声と富
3) 知識

おなじみ、ゲーテのファウストは3)ですが、グノーのファウストは1)で、自分にはなかった青春を取り戻し、女性のあこがれの的になりたくて悪魔に魂を売ります。このため、グノー版ファウストは、「下賎」とされてますが、私はグノーのファウストの世界を4時間ちかく、たっぷりと楽しませてもらいました。

その理由は、出演者が4人とも、実力ある歌手だったこと。マルガリータの兄役はブライアン・ムリガン(Brian Mulligan)という、聞いた事もないアメリカ人バリトンでしたが、力と張りがある伸びる声で、うれしい驚きでした。パトリシア・ラセッテ(Patricia Racette)に次いで、初日最大のパフォーマーでした。

メインの出演者全員が、それなりの水準を満たした歌手であることは以外と少ないんです。目玉歌手一人とその他というのはよくあるんですが...

第二は、パトリシアのパフォーマンス。声を発したあとに、ざーっと息を吸う音が聞こえる事が多かったので、あまり好きじゃなかったんですが、今回のマルグリットには、すっかり引き込まれ、時間を忘れました。SFGate.comの写真から。こちらへ行くと他の写真も見られます。

感情表現がすばらしく、ファウストから、通りすがりに好意を示されたときの、あたりさわりのない断り方、後で、あの人はどんな人なのかしらという好奇心や胸のはずみ、ファウストに捨てられ、まわりからのけものにされる辛さが伝わってくるパフォーマンスは、聞き手を巻き込まずにはおきません。

初日のパフォーマンスのビデオはここをクリックすると見られます。(青い軍隊の制服を着たのがムリガン。)

ファウストを演じたステファノ・セコー(Stefano Secco)もよかったんですが、ラセッテの堂々として説得力のあるパフォーマンスには、たじたじとするしかなかった感じです。

私の真の目的は、メフィストフェレス役をやったジョン・レリア(John Relyea)。2〜3年前、セビリアの理髪師で、フィガロ役をやっていらい、サンフランシスコへ再来訪くれるのを心待ちにしていました。

サンフランシスコオペラ座のそばの話なんですが、誰もいない静かな秋の夕方、ダッフルバッグを持った背の高い、学生風の人が突如現れ、道路を大きく横切って私の方にやってきてました。スェットシャツのたっぷりとしたところ、風を切ってゆれるちょっと長めでゆるくカールした髪、すてきな人じゃんと思ったら、その晩、その人が舞台でフィガロをやってるではありませんか。これがジョン・レリアとの初めての「出会い」です。

ジョンのメフィストフェレスは大胆でコミカル、観客の喝采を浴びてました。でも、すっかりおじさんになっていて、始めは誰かわかりらず、びっくり。今は、もう、舞台の大ベテランなんですね。背が高いので映えます。

ビデオの中で、道化のコスチュームを着てるのがジョンです。またビデオの最後で、階段上部で、タキシードを着た悪魔を演じてるのも彼です。

サンフランシスコ・オペラの付属学校で、育て上げられたジョン(パトリシアもそうです)、今はニューヨークのメトロポリタンオペラ(メッツ)を中心に活躍しているので(パトリシアもメッツで歌います)、サンフランシスコで見るよい機会です。

7月1日頃までやってます。

2010年6月6日日曜日

メキシコ湾沖、原油漏れ事故

メキシコ湾で原油漏れ事故が起こってから58日目。深海漏れしている原油の50パーセント以上を海中回収できるようになったようです。グッドニュースですが、海中漏れは続いてます。



そのため、膨大な数の生き物が、酸欠になったり、食物チェインが破壊されたりして、危険にさらされていると言われてます。

「深海の原油漏れ事故が起こる可能性は非常に少ないが、もし起こると、大変大きな事故になる」と、ブリティッシュ原油会社では、考えられていたのですが、このような事故が起こった場合の対策は、ほとんど無かったとのこと。

2008年の、ウオール街から始まった経済危機勃発と、発想が似てる感じ。「起こる可能性が少ないから、起こる可能性を無視する」という点です。

ブリティッシュ原油会社のホームページに行くと、オイル漏れの状況をインターネット放送しているのが見られます。通常、リアルタイムです。

テレビカメラが備わったロボット数台による実況中継です。もしスタートしなかったら、通常、「Play」のボタンがあるところをクリックすると、始まります。

深海での事故なので、修理など、すべての行動はロボットが行ってます。

ボストングローブ紙が報道した、原油漏れの赤裸々な現状の写真はこちらで見られます。

2010年5月14日金曜日

薔薇とワインと新緑のソノマ

ソノマ(Sonoma)は、今が一番、美しい時期!

ワイン・ツァーというと、ほとんどの人がナパ(Napa)へ行ってしまいますが、ソノマはナパのように、ツーリズムずれしてないところが良いところ。

サンフランシスコから、ナパよりちょっと近めの、車で約一時間半。都会とは、若葉の色が違います。

若葉の量かもしれません。柔らかい緑が上にも下にも、右にも左にも。すると、久しぶりの若葉の匂いがかぎたくなって、ハイウェイ121沿いに、思わず車を止めました。

ごく普通の小規模のぶどう園。真ん中の建物には、水のくみ上げポンプとタンクが収容されてます。


ソノマのダウンタウンを通り越して、ハイウェイ12沿いのワイナリーを、まず、訪問することにしました。

「ベンジガー・ファミリー・ワイナリー(Benziger Family Winery)」。名前の刻まれた看板を見て、気まぐれに入ったのですが、ものずごく気に入りました。

ゲートらしきものをはいると、空に向かって、無数の針のようにのびる若い小枝や、さまざなトーンや形や大きさの新緑、咲き乱れる薔薇、紫の花が、目にたまっていた汚れを洗い流すかのよう! こんなにもたくさんの緑色があったんだなーと、目にうるおいとみずみずしさが、急に戻ってきた感じ、思わず、身を乗り出します。

いろいろな植物を、ぶどうと混ぜて育てています。いわゆる、「バイオダイバーシティ」。植物の多様化という意味ですが、そうすると、ぶどうに虫がつきにくくなるだけでなく、土の成分を変えて、ブドウの味を調節することもできるそうです。

私にとっては、バイオダイバーシティは「自然の色のカクテル」、そしてそれを味わう喜びです。

薔薇はハチをブドウ園に引きつけておくため。はちはブドウの受精になくてはならないので、ミツバチも飼っています。ハニーは家族で食べてしまうそうです。

もぐら等の根を荒らす動物を退治するため、園内に、天敵のフクロウが気に入るような、人工巣を設置します。

ひつじ等を飼ってるのは、ブドウの肥料にするため。ぶどうのジュースをしぼったあとのブドウの皮なども、すべてリサイクルして、肥料にします。

ミニツァーに参加する事にしました。一人15ドルで、最後にワインテースティング付きです。


バスから見たブドウ園。バイオダイバーシティ化されてない、従来のブドウ園の部分です。


通常、ワインには防腐剤が入ってるんですが、ベンジガーのワインには、混ぜ物はいっさい無し。そのせいか、味が澄んでる感じ。美味しいです。

ちょっと酔いを飛ばしてから、12沿いにソノマのダウンタウンへ戻り、「エルドラド(El Drado)」で遅い昼食。母の日の週末と重なり合ったので、レストランはどこも満員。エルドラドはオープンキッチンで、ソノマではちょっとは知られたレストラン。でも昼はブランチしかなくて残念。おごりで、フリーレンジ(自然の牧草を食べる放し飼い)ビーフのハンバーガーを食べたんですが、これもえらく美味しかったです。これだけでお腹いっぱい。

目の「垢」が洗い流される、素晴らしい週末でした。

2010年5月3日月曜日

ロミオとジュリエット

昨日はサンフランシスコ・バレエの今シーズン最後のプログラム、「ロミオとジュリエット」の初日でした。

数年前に見たのと同じプロダクションですが、モンタギュー家とキャピュレット家の立ち会いシーンは、前より短い感じ。アクションにコミカルなアドリブがつき、変化があってずっと面白くなっているような気がしました。

でも最大の見せ場は、栄華の頂点にたっているモンタギュー家が、その威信をかけて開く、仮面パーティだと思います。

とくにその中でも、モンタギュー家当主のリードで、舞踏会の開催を告げる、パーティ参加者全員で行うダンス。プロコフィエフの、自信と権威に満ちた音楽が、当主(パトリアーク)の自信と誇りを伝えます。

政治的宿敵のパーティにいたずらで入り込んだロメオが、初めてジュリエットに出会い、二人が恋におちいるパーティでもあります。

ロメオにひかれたジュリエットが、ロメオの仮面をはたき落とし、素顔のロメオに真向かい、恋に落ちます。向かって左側前列が、ロメオとジュリエット。踊ってるのは、サラ・バン・パテン(Sarah Van Patten)と、ピエールフランソワ・ビラノバ(Pierre-Francois Vilanoba)。


サラは、特に好きなダンサーじゃないんですが、ちょっとは上達していて、多少、優雅さが増しました。でも、ロミオと初めて目を合わせるマジカルなモーメントの感動が伝わってきません。また、彼女の悲しみの表現は雑というか、表面的というか、内部からの悲しみが伝わってきません。サラ本人が、感情的というより、冷静な性格の人なのかも。

二人が初めて出会う、マジカルな瞬間の写真。ソースはこちらです。

ピエールは、いつもあまり表情がない人なんですが、今回はわりと表情豊か。本当は、マリア・カチェトコーバと、ヨアン・ボアダのが見たかったのですが、マリアの首の筋肉に故障をおこしたとこと、残念!

でも最後は、涙が一粒でてしまいました。

どちらかというと、マスキュリン(男性)なこのバレエ、5月9日までやってます。音楽はドラマチックで素晴らしく、コスチュームは豪華で、お薦めです。

2010年4月25日日曜日

アイルランドの火山の写真

ボストン・グローブ紙が、4月16日に爆発した火山の、新しい写真を公開しました。

写真(by REUTERS/Lucas Jackson)はその一枚です。噴火と溶岩の熱で、特別な気候環境(マイクロクライメット)がつくられ、稲妻が発生しています。

この写真を含めて、35枚の素晴らしい、自然の驚異の写真が、こちらで見られます。

「Eyjafjallajokull」というのが、この火山の名前ですが、発音は、BBCによると、「エーベゼーベツ」のようですが、英語版Wikipediaによると、「エイエフエフライアオクツ」のようです。

BBCのが現地発音で、英語版Wikipediaのは、火山名の英語読みなのかもしれません。

今、発見したんですが、上の35枚の写真中、33枚目からの写真を提供してる、オリビエ・バンデギンステ(Olivier Vandeginste)という写真家のサイトへ行くと、そこでも素晴らしい写真が45枚見られます。スライドショーのをリンクしましたが、スライドでなかった場合、サイト上の「Show as slides」をクリックしてください。

2010年4月18日日曜日

新作バレエ: アンダースキン

「アンダースキン(Underskin 皮膚の下)」を見ました。

レナート・ザネラ(Reneto Zanella)が、アーノルド・シェーンベルグ(Arnold Schoenberg)の Verklarte Nacht(意味は不明です)という曲に振付けした、サンフランシスコ・バレエのための、新作バレエです。

幕開けのシーン: 深い森の中を連想させる舞台の奥に、スポットライトを浴びた裸の背中が三つ。メインキャラクターのソフィアン・シルビ(Sofiane Sylve)が登場すると、暗闇に消えてしまいます。「これから何が起こるのか」と思わさせる出だしです。

ソフィアンのために作られたようなメインキャラクター:

不思議な人です。くるみ割り人形の「雪の女王」や「コンペイ糖の精」の役が似合わず、私の見る日には、出てこないで欲しいと思うほど。微笑んではいるんですが、表情がありません。チュチュが似合うとは思えないときさえあります。色でいうとグレー。

その彼女が、現代バレエになると、まるで別人。体全体が表現しだすので、不思議です。手のひらを上に向けただけで、横を向いただけで、皆既日食のコロナのように、強烈なメッセージが発信されます。弓をしぼったようにぎりぎりとしなる胴体、振り子のように揺れる手や足。強靭で伸縮自在の、大人の筋力、そのものです。

写真はアンダースキンを練習中の、ソフィアン。


コスチューム: ソフィアンは、アイヌの渦巻き文様のような黒いパターンが、全体に浮き上がるボディタイツ。真っ黒に染めた髪を顔にぴったりとはりつけ、太く長い毛をひもでたばねたつけ毛を後ろにたらし、まるで「くの一(女忍者)」風。

彼女は、うっそうとした森というミステリーを表現してるんだと思います。

アンダースキンをYoutubeに流したら、ソフィアンは、一躍、有名になるんじゃないかな。

渦巻き模様が、ダンサーのコスチュームの、テーマになってます。

写真は、準メインの、カキータ・ワルドー。今シーズンで引退するので、これが最後のパフォーマンス。彼女の衣装だけ、皆と違って、渦巻き模様がありません。舞台は抽象化した森です。


このリンクをたどると、2分20秒経過してから、アンダースキンのパフォーマンスが見られます。

このリンクをたどると、アンダースキンの創作過程について、ザネラが語っているビデオが見られます。