2010年6月7日月曜日

グノーのファウスト

2010年、サンフランシスコ、夏のオペラシーズンは、グノーのファウストで6月5日に幕開けしました。

自分の欲しいものを手に入れるため、悪魔に魂を売る年老いたファウスト博士は、何を望むかで3っに分けられます。

1) 女性
2) 名声と富
3) 知識

おなじみ、ゲーテのファウストは3)ですが、グノーのファウストは1)で、自分にはなかった青春を取り戻し、女性のあこがれの的になりたくて悪魔に魂を売ります。このため、グノー版ファウストは、「下賎」とされてますが、私はグノーのファウストの世界を4時間ちかく、たっぷりと楽しませてもらいました。

その理由は、出演者が4人とも、実力ある歌手だったこと。マルガリータの兄役はブライアン・ムリガン(Brian Mulligan)という、聞いた事もないアメリカ人バリトンでしたが、力と張りがある伸びる声で、うれしい驚きでした。パトリシア・ラセッテ(Patricia Racette)に次いで、初日最大のパフォーマーでした。

メインの出演者全員が、それなりの水準を満たした歌手であることは以外と少ないんです。目玉歌手一人とその他というのはよくあるんですが...

第二は、パトリシアのパフォーマンス。声を発したあとに、ざーっと息を吸う音が聞こえる事が多かったので、あまり好きじゃなかったんですが、今回のマルグリットには、すっかり引き込まれ、時間を忘れました。SFGate.comの写真から。こちらへ行くと他の写真も見られます。

感情表現がすばらしく、ファウストから、通りすがりに好意を示されたときの、あたりさわりのない断り方、後で、あの人はどんな人なのかしらという好奇心や胸のはずみ、ファウストに捨てられ、まわりからのけものにされる辛さが伝わってくるパフォーマンスは、聞き手を巻き込まずにはおきません。

初日のパフォーマンスのビデオはここをクリックすると見られます。(青い軍隊の制服を着たのがムリガン。)

ファウストを演じたステファノ・セコー(Stefano Secco)もよかったんですが、ラセッテの堂々として説得力のあるパフォーマンスには、たじたじとするしかなかった感じです。

私の真の目的は、メフィストフェレス役をやったジョン・レリア(John Relyea)。2〜3年前、セビリアの理髪師で、フィガロ役をやっていらい、サンフランシスコへ再来訪くれるのを心待ちにしていました。

サンフランシスコオペラ座のそばの話なんですが、誰もいない静かな秋の夕方、ダッフルバッグを持った背の高い、学生風の人が突如現れ、道路を大きく横切って私の方にやってきてました。スェットシャツのたっぷりとしたところ、風を切ってゆれるちょっと長めでゆるくカールした髪、すてきな人じゃんと思ったら、その晩、その人が舞台でフィガロをやってるではありませんか。これがジョン・レリアとの初めての「出会い」です。

ジョンのメフィストフェレスは大胆でコミカル、観客の喝采を浴びてました。でも、すっかりおじさんになっていて、始めは誰かわかりらず、びっくり。今は、もう、舞台の大ベテランなんですね。背が高いので映えます。

ビデオの中で、道化のコスチュームを着てるのがジョンです。またビデオの最後で、階段上部で、タキシードを着た悪魔を演じてるのも彼です。

サンフランシスコ・オペラの付属学校で、育て上げられたジョン(パトリシアもそうです)、今はニューヨークのメトロポリタンオペラ(メッツ)を中心に活躍しているので(パトリシアもメッツで歌います)、サンフランシスコで見るよい機会です。

7月1日頃までやってます。

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