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2013年3月17日日曜日

2013年、サンフランシスコ・バレエのプログラム3

2013年サンフランシスコ・バレエのプログラム3で、最初の二つ、「不思議な場所への案内書(Guide to Strange Places)」と「かっこいい男(Beaux)」は去年発表された作品。

マーク・モリス(Mark Morris)の「かっこいい男」はよくなってました。ちょこちょこした動きを取り除いてシンプルにしたのかもしれません。のびのびとした印象を受けます。踊り手は全部男でオレンジやピンクが基調のボディスーツを着てるんですけど、各ダンサーがカラフルなコスチュームに馴染んできた感じ。踊りもリラックスしてて可愛く、今回は、プログラム中で一番良かったです。



「不思議な場所への案内書」はニューヨークの夜のハイウェイとか、「ウェストサイド・ストーリー」を思い起こさせる、アスレティックなピース。アッシュレー・ページ(Ashly Page)という人の作品。最近、「シンデレラ」というストーリー・バレエを創作したそうなんで、機会があったら見たいです。



最後はユーリ(Yuri Possokhov)の作品。今年がストラビンスキーの「春の祭典」初演100周年記念にあたり、それを記念してユーリが「春の祭典」の振付けに挑戦。

人身御供を捧げる部族の祭を描いたのが「春の祭典」だっていうのを、今回始めて知りました。

白地に若草色の模様がついてるコスチュームが、動きにあわせてゆらゆらゆれる感じが命の芽生える春らしく、さわやかで気に入りました。

ただ、部族のなかから人身御供を選ぶ年寄りを悪役としてしまうユーリの解釈が好きじゃありません。悪意からではなく、部族のために年寄りは人身御供するんですから、「にもかかわらず」今と違ってもっと生き生きとした古代人がいたというような、違った描き方があったんじゃないかなぁ。

2012年2月20日月曜日

2012年、サンフランシスコ・バレエのプログラム3

サンフランシスコ・バレエの2012年プログラム3はお薦め。

プログラム最後の「動物のカーニバル」を見に行ったようなものですが、ショッキングだったのは二つ目のユーリ・ポゾホフ(Yuri Possokhov)の新作、「フランセスカ・ダ・リミニ(Francesca Da Rimini)、リミニのフランセスカ)」。

ユーリはストリーを語るのが好き。フランセスカとパオロの恋は、ダンテの話の中で有名なんだそうです。「すべての道は『地獄』に通じるなんてあんまり!」というのが私の直後感、私の見る世の中はこんなふうには見えない、こんなハズはないと、とやりきれない気がしました。

タイトル・ロールをやったマリア・コチェトコワ(Maria Kochetokova)、止まらないエンジンのように、ますます上手になってます。去年のコッペリアで到達したレベルをぐーんと超えて、「夫より愛する人を持つ妻」を美しく表現できるようになってるんですよ。

体の横とか、背中の真ん中とかの筋肉が伸縮するのが感じられるようで、また、舞台に繰り広げられる踊りが流動性と透明性を得てきていて、もう一歩高い段階に進んだんだな、と思いました。自分の踊りを踊ってるんですね。「愛」というのが見せる自然で無謀儀な流動性、よどみのない動きなので、途中で、なんかにぶつかった拍子に、体が粉々になってしまうんじゃないかと、心配になったりしました。
写真:マリアとボアダ。出典はここから。レビューも読めます。

ロダンの作品に「接吻」というのがありますが、これはフランセスカとパオロの話に基づいたものだそうです。

やはり、やはり、愛にまつわる身体表現は、伝統的にそれを許す文化圏に育った人たちの方が、中国とか日本とか、そういうのを許さない伝統で育った人よりか、消化・昇華できるというか...

相手役、パオロをつとめたのがヨアン・ボアダ(Joan Boada)。以前から、感情表現がばっちりできて優雅に動ける数少ない男性ダンサーで好きでしたが、ヘルゲイ(SFバレエのディレクター)の元ではあまり日の目をみることがありませんでした。今回のユーリによる起用、ウェルカムです。彼の優雅さを十分引き出さない振付けでしたが、ジャンプは力強かったです。この役をできる人は、今のところ、SFには、彼をおいて他にいないでしょう。

フランセスカの夫役は、これもプリンシパルの一人の、タラス・ドミトス(Taras Domitro)。尊大に振る舞い、怒りで激情する役、よくやりました。こういう役をやるの合ってるみたい。これは私の知ってる限りでは、彼にとって、初めての大役。

フランセスカとパオロの衣装は、2人の愛の純粋性を象徴しているようで、言わば、彼らの愛の隣に口を開けてる地獄とよい対照。カップルを際だだせ、踊りをいっそうはかなく、この世のものではないような高貴な印象を強めます。

三人の男性ダンサーが、ロダンの地獄門の彫刻のトップにある、かの有名な地獄のゲートキーパー役。彼らが地獄へ罪ある人を引きずる執行人。演じたのはジェレミー・ラッカー(Jeremy Rucker)、クゥイン・ワートン(Quinn Wharton)とルーク・ウィリス(Luke Willis)。
地獄門のトップ:リージョン・オブ・ホナーにロダンの彫刻が収集されてるので、そこで撮ってきた写真です。

コスチュームの色と刷り込んである影の模様でしかとは判別できませんけど、この3人のうちの一人、多分、ルーク・ウィリスじゃないかと思いますが、歴々のサンフランシスコ・バレエの男性中、今までで一番、美しい体の持ち主(去年の感想ですけど)。初めて舞台上で見たとき、その神々しさにハっとしました。スーパーマンかはたまた若ーいギリシャ神かと畏敬の念をおこさせます。あまりの神々しさに顔の方の印象が薄く、今だに誰の体だったんだか、はっきりとわからないんですけど。

ヘルゲイの振付けは面白くないんで好きじゃないんですが、「トリオ」は良い方。サラ・バン・パターン(Sara Van Pattern)が踊ってましたが、彼女も上手になってます。

「動物のカーニバル」は楽しい作品。サンフランシスコ・バレエのために振付けられたものです。これだけでも、見に行く価値あり。

2012年4月9日追記: ビューティフル・ボディの謎の男性ダンサーは、なんて発音するのかよくわかんないんですけど、ガエターノ・アミコ(Gaetano Amico III)じゃないかと思い始めました。髪が黒いのが大きな理由の一つ。じゃなければ、どうしてスーパーマンなんて連想をしたかと思うんですけど。是非もう一度あの美しいボディを見たいので、気になってます。

2011年2月6日日曜日

ユーリの新作バレエ、「RAkU」とヤン・ヤン・タン

ボリショイのスターだったユーリ・ポゾホフ(Yuri Possokhov)は、サンフランシスコ・バレエのプリンシパル・ダンサーを経て、振付家。ダンサーを引退する前後頃から、振付けを発表しだしたんですが、才能あり!

今まで10作くらい発表してますが、斬新な作品が多いです。強い印象を受けたのが、3作くらいあり、できればまた見たいものです。一作ごとにフォームや動きに独特さがあるんです。いろいろなアプローチを試してるのかも。だから面白いんでしょうか。

そのユーリの最新作が「RAkU」。大きな冒険をした作品。ロシアのダンスには「スパルタクス」などの、男性のボディと力を中心に展開するダンスがありますが、アメリカでは珍しい、マスキュリン・ダンス。日本の剣道の動きを取り入れた部分もあります。ビジョアル的仕掛けもあり、お客さんの受けは大! 

武者の衣装が、秦の始皇帝のお墓から出てきた戦士の人形に似てて、はじめは中国の話かとおもったんですが、僧侶と、燃え上がった火が寺院が焼け跡にしてしまう背景を見て、「あ、これは金閣寺の話!」と、思い当たりました。

三島由紀夫の小説、「金閣寺」は読んだ事ないんですけど、「RAkU」によると、武者の妻に恋した僧侶が、夫が戦争にいったすきに、女をさらい、多分、強姦してしまいます。その直後、女は、夫が戦士した知らせを受け取ります。金閣寺は僧侶の放火で灰と化し、女は灰と化した夫の亡がらと剣を受け取って悲しみます。

武者の妻を演じたのはヤン・ヤン・タン、その夫はダニエル・スミス(Damian Smith)、気の狂った僧侶を演じたのは、パスカル・モレー(Pascal Molat)。


California Literary Reviewの写真から。このリンクをたどると、プロブラム2の、その他の写真とビデオクリップが見られます。

ヤン・ヤン・タンは、昨シーズンにマーメイドを演じて絶賛を受けたのですが、今回の「女」の演技は迫真に迫り、内的苦悩を伝えるのが、本当に、本当に上手になりました。彼女は、ついに、演じる人を舞台上で生きる、真の「アーティスト」なったんだなーと思いました。

パスカル・モレーは、気が狂った僧侶などの、ちょっとふつうじゃない役をこなすのが上手。彼ならではの僧侶でした。

RAkUの写真がもう一枚見られるリンクをつけておきます。

なおヤン・ヤン・タンの「ジゼル」は、あまりよくありませんでした。「愛」とか「好き」とかの表現が彼女の大きな弱み。好きになるという自然の感情の自由な表現を奨励しない、中国文化の中で育ったというのが、彼女の表現を大きく制限してるんだと思います。日本のダンサーも同じと思います。

2012年3月6日:RAkUのビデオが見つかったんで、リンクします。

2012年4月1日:RAkUのDVDが、ジョージ・ルーカスのスカイ・ランチで制作されました。SFフォペラハウスのギフトショップで売ってます。ヤン・ヤン・タン紹介のビデオにもRAkUが入ってます。