2014年12月9日火曜日

観世能楽堂の「半蔀(はじとみ) 立花供養(りっかくよう)」

渋谷の観世能楽堂で「半蔀(はじとみ)」を見られたのは本当にラッキーでした。津田和忠さんという能楽師さんが、観世能楽堂の移転より、この場所での能演は終わりつつあるという意識もあって演じた番組の一つだと思います。「半蔀(はじとみ)」とは、棒で支えて開ける、突き上げ窓のことを言うそうです。(下の写真)



お話は京の僧が90日修業後に、修業で使った花の供養をしていると、一人の女が現れ、五条に住んでいるものと名乗って白い夕顔の花を供えて消え失せます。五条は昔、源氏と一夜の契りを結んだ夕顔が住んでいたところ。不思議に思った僧が行ってみると、半蔀を下げた家から夕顔の霊が現れ、源氏との恋の思い出を語って踊り、再び半蔀の中へ消えて行きます。僧は目が覚め、果たしてこれは夢だったのか、それとも現実だったのかと思うところで終わります。

うす桃色(うす鮭色?)の袴に、3重に白の重ね着をした上に白いトップを重ねた夕顔の姿の大きさに気づいたごろから舞台に引き込まれてしまいました。それまで観客として、お面と気持ち的に関係を持てなくてよそよそしい感じがしてたんですが、ある瞬間から舞台上の夕顔が急に息づき、動き始めたたのです。私の座ってる方向に歩いてきたとき、お面の目と私の目が真っ向からばっちり合い、こんなことは想像もしてなかったので、すごい衝撃でした。

私が舞台に吸い込まれたのには、太鼓奏者、佃良勝さんの掛け声に負うところが大いにあったと思います。佃さんの掛け声の表現力は素晴らしいの一言、次第に消えいるように止んだり、上がり調子や下り調子、またはフラットでスィッと消えたり、力が入って終わったりと自由自在で、しゃべられる言葉がよくわからなくても、舞台の感情、人物の感情が耳から心に響いてきます。その変幻自在の掛け声のおかげで、雲に覆われた月の明かりに照らされた嵐山を背景にしんしんと低く入ってくる霧や、蕾みのほころんだの梅の木の枝々を通しての夕顔の姿を、私は見たのです。すごく感動しました。



写真上はここからのスナップショット。ここでは夕顔は赤い袴をはいてますが、観世能楽堂での能演ではうす桃色でした。下の写真は開演前の観世能楽堂です。



英語版はこちら。

2014年11月10日月曜日

ネトロブコの「イル・トロヴァトーレ」

ヴェルディの「イル・トロヴァトーレ(Il Trovatore)」を見て久しぶりに感激。

2014年ザルツブルク・フェスティバルで8月15日にライブでウェブ放送されたもののビデオ版のウェブキャーストで、アンナ・ネトロブコ(Anna Netrebko)がレオノーラ、プラシド・ドミンゴ(Placido Domingo)がルーナ伯爵、フランセスコ・メリ(Francesco Meli)という多分イタリア人がマンリーコ。

サンフランシスコ・オペラで「愛の妙薬」のアディーナ役を演じてデビューしたネトロブコを見たのが最初。まだ若くてほっそりとして色白で、今ほど自信たっぷりではなく、ちょっと神経質そうな感じがあった彼女が少女風にワゴン(?)から降りてきて歌うシーンが私の中に今でも残ってます。「この人、ちょっといいじゃん」と思ったけど、ロシアを代表する、世界の押しも押されぬトップ・ソプラノに成長するとは、そのときは知りようもありませんでした... ボヘミアンでマゼッタをやった彼女のキャラクターは薄っぺらな感じがしてあまり好きになれなく、残念でした。「椿姫」でバイレッタをやったとき彼女の声がひどく変わって深くダークになってたときのおどろき、そしてそれが出産後だったことを知ってさらに驚いた事... 今、彼女の「恋はバラ色の翼にのって(D'amor sull'ali rosee)」を聞いてますがこの公演では最高のパフォーマンス!椿姫の時のダークさはなくなってました。こんな声と歌い方、演じ方を創ったアンナ、嬉しいです。

中央がネトロブコ、向かって左がドミンゴ、右がフランシスコ・メリ。

今回の素晴らしい発見はフランシスコ・メリ。まわりのベテランにひけをとらない。まだ若い、素晴らしいテナー。「ああ、美しい人(Ah si, ben mio)」

ジプシー占い師のアズチェーナを演じたのはカナダ人のマリー・ニコール・レミュー(? Marie-Nicole Lemieux)。息のつぎ方とぶれるとこがちょっと気になるが声は悪くないので他の役をやったらいいと思うけど、ドロラ・ゼイジャック(Dolora Zajick)のアズチェーナを知ってる私にはちょっと不満。これからの人なんでしょう。

ネトロブコとダイアナ・ヘイラーのイネス

たとえウェブキャストでも、世界のオペラをこうして聞けるなんて感動!ああ、日本のオペラではちょっと寂しい。

2014年10月12日日曜日

衝撃! 小学校のクラス会

小学校のクラス会の案内状が来たときはびっくり、「まじで?」だって浦島太郎的に遠い過去で、そんなのがあるなんて予測もしてませんでした。(長いアメリカ生活での言葉との格闘で、過去を振り返る時間はゼロだったからかも。)

担任の先生も参加とあるので、S先生にお会いするのはこれが最後になるかもしれないと、他の約束があったんですがキャンセルし、参加のお返事を出しました。最後のクラス会は10年前との事、まだ私がアメリカにどっぷりいた頃だなー。

当日4〜5人くらいしか来てないだろうと思ってたんですが、行ってびっくり、13人も来てるじゃないですか。

私に会釈してるんだから私を知ってる人に違いない...

近況報告をし始めると...外見ではわからなかった人の話し方や話すときの癖で、無から記憶がよみがえってくるじゃないですか。そして埋もれた記憶の荒野に最初のシャベルの一振りが振り込まれると、か細くも芋づる式に思い出されてくるではないの。

色白で立ち居振る舞いも上品なあの人の、話す時の頭の振り方、あごの突き出し方、「あ、あの人は...!」小学校以来ぜんぜん変わってない! 無からの記憶の蘇りで2時間はあっという間。

数十年も別離していた老夫婦が再会したとき、顔ではわからなかったが、ふと出た昔からの癖で誰だかがわかり、再会の涙にくれるという森鴎外の「じいさん、ばあさん」って、多分、本人の体験に基づいてるんですね。

さらに驚いたのが二次会のとき。1メートルも離れてない距離で顔を合わせて話していたTさんの顔が小学生の頃の顔に徐々にしっかりと重なった。「U君が弁護士になってるんだけど何かの事で青山のオフィスに招待されたのよ。でもいつも腕をつねられて嫌だった。」すると今度は小学5・6年生の気持ちが共に蘇り体験できる驚き!

私  : U君って早熟だったのかもね。」

Tさん: そうね。XXさんのパンツに穴が開いてたの覚えてる?...

この言葉を聞いた途端、「毛糸のパンツ事件」が頭の中いっぱいにボワーッと浮かび上がった。二つとも別件ですけど、掃除中に起こった出来事という点で共通。

写真はカリフォルニア州ハーフムーン・ベイでハロウィーンのパンプキンを選ぶ人達。

私達の頃は小学校では「掃除当番」があって、放課後にクラスの部屋の掃除をさせられてました。グループで掃除するんですけど、そのうち必ずさぼる男の子がでてくる。それが必ず男の子。私だって特に好きでもない掃除をしてるのに、かといってさぼるのは卑怯なので、「XX君もちゃんとやってよ」と押し問答になる、これが当時の私という子供の最大の不快事。

当時、掃除当番は床のぞうきん掛けもやってたんですけど、ある日、「おまえ毛糸のパンツはいてんの。」という男の子の声で顔を上げると、ぞうきん掛けをしてるTちゃんのスカートの下からまるまる見えてる毛糸のパンツが目にとびこんできました。それは草色と黒とクリーム色の残り毛糸で編んだパンツ。からかわれたことに怒るTちゃん、突然子供達が男の子と女の子というジェンダーグループに別れ、「xx君もちゃんと掃除してよ」の押し問答が始まり、手に手に帚やモップやバケツを持ってるので「一揆」の様相。最後に憎っき男の子達が校庭に逃げ出して遊びだしたのです。この日、力で押し切られる男女不平等にはっきりと怒った小学6(5?)年生でした。

えっ、あの怒りが今の私の原点? あんな小さいときに私の雛形があったの?... 私の原点ってそんなに単純なこと? クラス会の帰りの電車で私は異常に興奮、今の私と連続するとは思ってもいなかった小学校時代の私に、私の雛形があったというお・ど・ろ・き!! ショックの、ショックの小学校のクラス会でした。

2014年8月20日水曜日

東京の自然: 庭の草取り、今年のびっくり、去年のびっくり

在米時には帰国したとき、帰国後は必要に応じて草取りをしてるんですが、ときどき変わった生物に出会います。私は東京にいるんですけど、今年8月のびっくりは、3センチにも満たない子供のカエル(写真下)。上部中央右に円柱形のものが草の茎上にちょっと写ってますけど、これは土蜘蛛の巣の一部です。



池なんかなくとも育つカエルがいるのかしらと思い、さっそくネット検索したところ、どうもヒキガエルのよう。ガマガエルとも言われるとの事。これで子供の頃からのナゾが解けました: ヒキガエルとガマガエルってどうちがうのかなって思ってたんです。私が子供の頃、庭に池があって金魚を飼ってました。卵も孵して、家では世話をしてる私だけがどの金魚がどの子供っていうのがわかってたんです。金魚ってみんな顔が違うのです。...そういうわけでときどき10センチはゆうにある、おっきなガマガエルが暗くなると出現。鳴くとうるさく、さわるといぼができる等々のうわさがあったので、近くにいったことはありませんでした。

正確な名前はアズマヒキガエルで、英語ではEastern-Japanese Common Toadだそうです。

去年のびっくりは心底びっくりで、初め、風化したプラスチックの切れ端が「おふ」のように小石の上側にひっついているように見えました。

ゴミかと思って木の枝で払おうとしたところ、ゆっくりと動きだし、輪じゃなくてヒモのような、長さ15センチはある、見た事も無い明るい黄色の生き物。きしめんのように扁平で、よく見ると上に5本くらいの茶色の線が入ってるじゃないですか。ゾォーとしたんですけど、もしかして珍しい生物かもしれないと考え直して、草むしりした後の日差しを浴びて死んでしまってはと思い、お隣の草の茂みへポイッ。その後、ネット検索したところ、オオミスジコウガイビルという生き物で、東京でよく見られるそう。70センチぐらいまで育つ事のあるらしい。そんな大きいのは見たくないっと再びぞーっとしましたが、このあたりは猫が多いので、多分、食べられちゃったんじゃないかな。今年は見ませんでした。

なおオオミスジコウガイビルの写真はリンクされてるサイトからお借りしてきました。ゾーッとしたので写真とるどころではなかったんです。

2014年7月5日土曜日

台北故宮博物院特別展に白菜を見にいく

午後一時ちょっとすぎに上野の国立博物館についたんですけど、「翠玉白菜」だけ別部屋にあって2時間待ちと言われました。どうしようかなと思ってトイレに行って出てきたところ、「一時間40分待ち」と言われたので、列に並ぶ事にしました。

これから見ようとしてる人、本持参がお薦めです。館内敷地で涼しい風を心地よく受けながら七割がたは日陰で読書を楽しむ事ができます。

暗闇のなかで光をピカーッと反射し、濡れているようにキラキラ輝く「翠玉白菜」は、一瞬、石であることを忘れるくらいきれい。でもこの白菜、日本で見る白菜とちょっと違うので、見る人はそのことを知っておいたほうが、心休まるかも。



中国では日本とはちょっと違う、スリムな白菜もスタンダード種として店頭に並んでるようです。初めて見たのはサンフランシスコのチャイナタウンで、日本で見る丸型の白菜とは区別されました。白菜の白いところが日本のより薄くて丈は長く、ひしゃげた筒という感じで、その点では「翠玉白菜」は実物をかなり正確に描写してます。日本の丸型より見た目がちょっと貧相でしたが試してみたところ、丸型より甘みと野菜っぽさがありました。また縦長なので冷蔵庫にしまいやすく、米国居住中には中国型白菜を食べる方が多かったです。

展示されてた磁器、特に「白磁」の高度な技術には感心しました。

また刺繍には感心を通り越して仰天。海の波がうねっているさまを描いた刺繍の掛け軸がありましたが、絹の光り方という特性を知ればこそ作れる作品。中国風の着物を着た数十人の女性が数ヶ月という時間をかけて、一針一針刺してゆく様子が目に浮かびました。

最後の方に「永楽大典」。テストのために制作年号を覚えたのはこの本かと高校の歴史の時間を(とんだところで)思い出し、墨でくっきりと軽快に書かれた表紙のタイトルを見つめながら、ちょっと感動的な、数十年ぶりの過去との「再会」でした。

午後5時半頃館内から出てきたら、白菜待ちの行列がえらい短くなってたので、このあたりの時間帯に行くのが賢いかも。

2014年6月16日月曜日

新国立の「パゴダの王子」

一番印象に残ったのはサラマンダー(イモリ)の動き。黒白の縦縞模様のボディスーツで覆われた全身で、首を伸ばしたりかしげたり、フロアの起伏を上がったり下がったりする動きの一つ一つはインパクトありでした。頭髪を含めて顔の作りは不気味なんですけど、サラマンダーの持つパワーと、知的な用心深さ(実際にはイモリってインテリジェンスはあまり感じさせない生物ですけど。失礼、いもりさん)を感じさせる動きでした。そのため、顔が不気味という印象が薄れ、むしろ内に隠れてる知的さの証のように見えてきます。

第二幕でインドネシア楽器の「ガムラン」もしくはガムラン風の音が演奏に加わり、西洋楽器だけの音とは異なった世界、熱帯森林の奥深くに静かにしっかと存在する世界、その由緒正しさと美しさと落ち着きとを感じさせる響きでした。熱帯のジャングルに咲く、肉厚な花弁を持った香り高い花を連想させます。また、さくら姫の踊りのなかにバリ舞踏の動きが入るのがとてもよかったです。なんか心を落ち着かせる動きです。

同じく第二幕だったと思いますが、高齢王様の動きがなんとなく認知症っぽくて、こういうテーマをダンスに取り入れるのって大胆だけども現実的だし、面白いと思いました。別の日に見た友人は「リア王」がイメージの出所じゃないかと言ってました。



確かにこの「パゴダの王子(Prince of Pagoda)」というバレエ、さまざまな音楽や古典を思い起こさせる場面の連続です。例えばさまざまな国から来た王様達がさくら様に求愛する場面は「眠りの森の美女」の王子達の求愛の場面、またサラマンダーがさくら姫を伴って火の国、水の国を通過しながら試練を受けるところはまるで「魔笛」、立ち回り場面はシェークスピアの「ロメオとジュリエット」を思い起こさせます。という意味ではあまりにもいろいろな山場が短い間隔で詰まりすぎてて、慌ただしい感じがしました。もっとすっきりさせた方が踊りを引き立てると思うんですけど。振付けや舞台の作り方を変えるとぐーんと良くなるのかもしれません。舞台上部の大きな花はとくになくてもいい感じ、舞台のふちを額縁風に飾るトゲは意味がわからず、ちょっと目障りでした。

小野綾子さんのさくら姫はストーリーを語れたと思うし、湯川麻美子さんの目力は劇的でよかったです。

2014年6月6日金曜日

少子化と年金?、少子化とロボットじゃないの?

日本の少子化問題が、将来の年金額との関係で論じられてるのを聞いて奇妙感を感じました。2014年の年金生活者は月給の56パーセントを保証されてるが、今より出生率が下がった最悪の場合、2050年高齢者の年金は月給の34パーセントしか保証されないとのこと。でも少子化問題をこういう切り口で論じる奇妙感がふっきれず、「この切り口、どうして?」という疑問に。

でも、これは政府のディスクレイマー(免責事項)的意味もあると考えれば、なんとなく納得がいく。「政府は、2014年度出生可能世代に、あなたがたが子供を生まないと、その世代が高齢者になったときに年金が先細りすることを数字をもって公表し、警告したはず。あなた達にも責任はあるよ。」

少子化問題をいろいろな角度から切って分析するのは賛成ですが、いまだに余り論じられてないのはロボットの工場生産への導入との関係。

アップル社が「人件費の高くなった中国での生産を止めて、アメリカへ戻す」と発表したのは2012年頃。当時まだアメリカにいた私は、このニュースで「仕事が増える!」とアメリカ中が湧いたのをよく覚えてます。



確かに生産工場は南部のテキサス州かなんかに建設されたんですが、実際に生産が始まると、広い工場で働いてるのはロボットだけ。そのロボットを運転・管理するために工場のとなりのオフィスで働いてる人間はたったの四人。ロボットは休憩も休暇もいらないし、24時間ぶっ続けで働けるので、この人数は多分一シフトの人数だと考えると、「4人X3」で12人。警備員なんかを含めると20余人あたり! 地域住民に就業機会はほとんどなかったのです。

オックスフォード大学のロボット・リサーチ・グループに所属するマイケル・オズボーン博士(Michael Osborn, Robotic Research Group)によると、20年後のアメリカでは、現在の全仕事のうち47パーセントはロボットによるオートメ化が進むとの事、この数字は博士の母国でもあるオーストラリアでも同様だそうです。 

だとすると、日本でだって、同じ割合でロボット化・ソフトウェア化されると考えても的外れではありません。現在、日本の就業者数、つまり総仕事数は6400万。このうち47パーセントがロボット化すると、2034年の総仕事数は3400万になります。このような観点から少子化を考えると、少子化現象はこのような仕事数の減少を先取りしていることになり、傾向としては理にかなってる事になります。

ではどんな仕事がロボット化もしくはソフトウェア化されにくいか? これを考えるのか重要。

私が思うに、いわゆる女の仕事とされてきた低賃金労働の保母さんや幼稚園の先生、看護師さん、ヘアスタイリスト等は生き残るでしょう。

お医者さんや弁護士業は、けっこうな部分がコンピュータ化されると思います。他には何かな?

2014年5月27日火曜日

新国立劇場の「アラベッラ」

シュトラウスの「アラベッラ」を初めて見ました。

貧乏貴族の年頃の娘達の「苦境とロマンス」ドラマで、エンターテイメントが今のようになかった当時、このような求婚者の「品定め」的なドラマは実感があって人気があったんだろうと思います。でも現代の私には退屈でしたが、第三幕でのヒロイン、アラベッラと、彼女に許しを請うマンドリカの歌唱とドラマは力ありで、私は救われた!という感じです。

一幕、二幕では曖昧で優柔不断のアラベッラが、第三幕で婚約者のマドリンカからあらぬ疑いをかけられると、背筋をキッとのばして、「私を信じられないならそれまで」と、大金持ちだけども素朴なマドリンカに毅然と言い放ちます。アンナ・ガブラー(Anna Gabler)演じるアラベッラが急に一人の存在感ある人間に見えてきます。

マンドリカが、彼女の妹、ズデンカをアラベッラと誤解したのに端を発した騒ぎなんですけど、娘2人はお金がかかりすぎてとても育てられない貧乏貴族が世を渡っていく手段として、ズデンカをアラベッラの弟とし、ご本人も納得して弟として生きてるわけです。だけどズデンカもお年頃なので、愛してしまったマッテオと、当時では絶対ノーノーの「ベッドを共に」してしまいます(一夜だけは女の子になりたい!)。それが暴露して世間から葬られそうになるズデンカを、ただ一人、アラベッラが、「何の見返りも求めないを愛を貫くあなたに、私は教えられました。... あなたを心から尊敬します。」そしてジェーン・オースティンの「プライドと偏見(Pride & Prejudice)」のエリザベスなみの落ち着きと、威厳と、気品をもって、アラベッラの確信がどうどうと歌い上げられ、ドラマは最高潮。私(も観客)もすっかり彼女に共感。

新国立劇場のホームページからのスクリーンショット

マドリンカを演じたヴォルフガング・コッホ(Wolfgang Koch)はベテランらしく安定感がありました。賭け事で浪費する父親貴族の役目をした妻屋秀和さんがすごくよかったです。

初めから終りまで青色を中心とした舞台、とくにメインの青い色のトーンと青ばかりのコスチュームは好きになれませんでした。青っていう色、難しいんじゃないの。まだ舞台のデザインもあまりにホフマン物語の舞台と似すぎてて「またこのトーンか」っていう感じ。特にいただけないのは、アラベッラがマドリンカを初めて目撃する第一幕の窓(オフィスの窓みたい)、そして第三幕のユーモアも魅力も格式も無いホテルのフロントデスク。なんかモーテルみたい。

アラベッラが最初に登場するときの乗馬服(だけど話では乗馬でなくてオペラに行ってたようだったけど)、マドリンカが最初に登場するときのコートはちょっと面白く、また舞踏会ではお母様のドレスと白いケープがよかったですけど、後はなんだが目につかなかったです。席もよくなかったし、前に頭の大きい人がいたこともあったし、その上、字幕についてゆくのに精一杯だったからかも。

2014年5月14日水曜日

ルクレシア・ガルシアが新国立劇場デビュー

2012年にサンフランシスコ・オペラが「アッティラ」を上演したとき、アッティラの新婦、オダベラを演じたのがルクレシア・ガルシア(Lucrecia Garcia)。アニタ・ラチベリシビリ以来に見た、パワフルな新人ソプラノです。当時はエラく太っていて、前か後ろ姿なのか分かりにくかったんで、せっかくなので、なんとかして欲しかったんですけど、今日から5月30日まで、新国立劇場で演じられる「カバリア・ラスティカーナ」に出演するようです。

私は行けるかどうかわかりませんが、彼女は聞きがいがありなので、推薦です。アニタ・ラチベリシビリのほうがちょっとすごいとは思いますけど。でも私が聞いたのは2年前なので、今は見違えるように成長してるかも!

2014年5月11日日曜日

ああ、スマホが...!

象の写真をとっていると...

久しぶりにげらげら大笑いしました。リンクはこちら。 最後までエンジョイ!



2014年5月8日木曜日

最新の5分間ビデオ、「チェルノブイリの動物」

ニューヨーク・タイムズ紙が5月5日付けで「チェルノブイリの動物」という記事を発表。

チェルノブイリのアップデートにちょうどいいので、その記事と、記事中にある5分間ビデオをここにリンクしておきます。

記事のリンクはこちら。

サウスカロライナ大学のティモシー・ムーソーさん(Timothy Mousseau)は1999年から継続的にチェルノブイリを訪問、鳥類や昆虫、こうもりなどの観察を行ってきたそうです。当時はこのような事故はもう二度とおこらないと思い、個人的に観察していたそうですが、福島の原発事故以来、福島地域も観察対象に加えて公的な研究に変更。

チェルノブイリ原発事故で人間が出て行ったあと、まるで「現代のエデンの園」のように自然界が復帰したと言う人がいるけれども、ムーソーさんによると、決してそうではないそうです。鳥類や昆虫、こうもりなどの観察をすると、チェルノブイリで「ホット地域」と呼ばれている高放射能地域では、動物種数は半減、考えられていたより自然の復帰は遅いとのこと。また鳥などでは外観から観察出来る腫瘍とかクチバシの変形などの異常発生率が、放射能汚染地域外と比べて、高い頻度で観察されるそうです。

またホット地域にいるある種の鳥は「自然淘汰」で放射能に対する適応を高めているのが観察されてますが、面白い事に、同種の鳥で放射能汚染の低い地域にいる場合は適応できず、DNAの異常が起こっているようなふしがあるそうです。

ビデオ中にも小さい赤い昆虫がでてますが、ホット地域に近づけば近づくほど、以前とは異なったパターンの羽柄が高い頻度で観察されるそうです。(下の写真)



また木の年輪を観察すると、1986年の原発事故以来、はっきりとした変化が見られるものがあるとのこと。下の写真では、1986年を境に(濃い茶の線がひいてあるところ)、年輪の色が異なるのがわかります。



去年、福島を訪問したとき、ムーソさんは蜘蛛の巣のパターンが少しおかしいのに気づき、以来、チェルノブイリでも、できるだけたくさんの種類の蜘蛛の巣の写真を撮り、研究室の学生に分析させているそうです。

2014年4月27日日曜日

新国立劇場の「ファスター」と「カルミナ・ブラーナ」

ディビット・ビントレー(David Bentley)の振付けを見に新国立劇場へ。

「ファースター」は、ロンドン・オリンピックがどうのこうのとか書いてあったので、どんなのだろって思ってたんですけど、振付けを創る気になれなかった振付けという感じ。ダンサーもしなやかにも優雅にもなりきれず、かといってアスレチックでもなく、私はと言えば、舞台とは切り離されたままで、居所無しでした。北島八郎の「祭り」のバックで踊りの振付けやダンサーの方が面白いというのが本音。

「カルミナ・バラーナ」については歌唱付きという事だけ知ってて、それに興味を持ったので、楽しみにしていました。

合唱から始まるんですけど、イントロの運命の女神のパフォーマンスの後、白くて長いドレスを着た3人の女性が登場。お腹あたりの線が変だな、ドレスのせいかなっと思わず座席で座り直して見ると、3人とも妊娠5ヶ月ぐらい?! それが、舞台いっぱいにはられた洗濯物の前を、細い体にお腹をゆるり、ゆるりと、ドレスのすそをふりながら入場してくるのが意表をついてて、また白い素敵なコスチュームのおかげ大で面白く、楽しく見え(この部分を演じたダンサーの皆さんに拍手!)、このとき初めて、リベレットの日本語訳がないのに気づき、残念に思いました。

新国立劇場のホームページからのスナップショット

すごく印象に残ったのは2幕目から歌いだした、萩原潤さんのカウンターテノールのクリアーではっきりとした声。アメリカでも何人かカウンターテナーを聞いた事がありますが、今まで聞いた中ではピカ一。新国立劇場はサンフランシスコ・オペラ・ハウスのサイズの約半分強なので、彼がサンフランシスコで歌った場合、どのくらい声が届くかはわかりませんが、是非、アメリカでオーディションに出て、世界のドアをノックして見て欲しいと思いました。

合唱に関しては、以前、ホフマン物語を聞いたときも思ったんですけど、声が若くてエネルギッシュでストレートでいいんですが、しばらく聞いてると、ただそれだけで、声のバラエティーがなく、単調。 サンフランシスコ・オペラ合唱団の場合、いろいろな年齢の人がいるので、声にもっとバラエティがあり、合唱全体の声に深さと幅があります。アメリカでは、年齢差別は憲法違反なので、もっと幅広い年齢層が合唱団にも入っているせいじゃないかと思います。それが喜びとか悲しみとかを表現する際、大きなプラスになってると思いました。

日本の仕事に対する年齢制限が、こんなとこまで響いているとういうことがあるとしたら悲しい事です。合唱団、せめて特殊事情を理由に、合唱団員の幅を広げてみるのはありなんではないでしょうか。

パフォーマンス後に、ディビット・ベントレーさんの作品のビデオがあり、彼が「パゴダの王子」というのを日本で、多分、新国立劇場バレエ団のために、制作したのを知りました。なんとなく、ケイス・マクシミリアンの作品に似たところがあるので、是非見たいと思ってます。

2013年12月28日土曜日

中之条の「目の青い赤とい名の白猫」

中之条ビエンナーレについてのブログで、

「膝丈ズボンをはいた、子グマのプーさん的な伯爵綽々(はくしゃく しゃくしゃく)さんという人を滞在中2度も別々の場所で見かけ、何者なのかなーと思ってたら歌人でした。伯爵さんの短歌をいくつか書き留めておいたんですけど、紙をなくしちゃったみたい。」

と書いたら、それを伯爵綽々(はくしゃく しゃくしゃく)さんが見て、中之条で発表した歌をコメントに書き込んでくれました。伯爵さん、どうもありがとう。なお、伯爵さんの本当の歌人名は「北夙川不可止(きたしゅくがわ ふかし) 」さんだそうです。クールな名前!

北夙川不可止さんの歌をコメントのなかに入れたままにしておくのはあまりにももったいないので、ペーストします。

”北夙川不可止 さんのコメント...

ぷーさんですw  僕の短歌ですが、中之条で発表したのは以下の通りです。

風が吹くひうひうと吹く夜の獄の孤獨を猫の聲が撫でゆく

轟々と水音高き四萬川の碧く澄みつつ風を呼びけり

山深き出湯の里は靜かにて夏もあい冷たきせせらぎを聽く

枯れ葉積む街道の果て茅葺の舊家の庭に絶えぬ水音

桑を食む蚕の音のざわざわと靜かな里の午後を震はす

赤といふ名の白猫の目の青く六合(くに)村の名は去年消えたり

散りかけし櫻に小雪吹きつくる四萬の眞晝間空は晴れつつ

浴場は洋舘にして蒸風呂に籠れば翁の笛に驚く”

中之条でなくて、都下御嶽渓谷の写真。

猫の歌はモンドリアン風にカラフル。モンドリアン風の壁なんて村にあるはずないんですけど、そんな壁に向かって白猫が猫らしくゆるゆると歩いて行き、猫が振り返ったとき、青い目をしてるのがわかったというのが私のイメージ。六合村は中之条に吸収されて本当に無くなったんですけど、昔はかいこで栄えていたらしい地域なので、シャム猫が当時、村に紹介されたのかもしれません。それとも「青い目」は伯爵さんの想像なのかな。

蒸し風呂の歌は、和風の旅館に泊まったら洋風の蒸し風呂、「へぇー」と思ってたら笛の音が空間を切るという、ちぐはぐなアンバランスが面白いなというのが私の感想ですけど、もしかしてぜんぜん違う事なのかもしれません。

「ひうひうの夜の獄」は凄いっていう感じ。「待つ」ことが無いのは良いことでもあるのね。

伯爵こと北夙川不可止さん、歌を書き込んでくれて、そして「歌」と「句」の違いを教えてくださり、たいへん、どうもありがとうございました。2014年が北夙川さんにとって素晴らしい年になるように!

2013年12月7日土曜日

新国立劇場の「ホフマン物語」

サンフランシスコでは見逃した「ホフマン物語(Les contes d'Hoffmann)」を見に行きました。新国立劇場は初めて。観客席内部の年季の入った木の床の温かみ、背もたれが長くてリラックスしやすい座席などグー。サンフランシスコ・オペラハウスは客席数が約3200、バークレーの(カジュアルな)ゼラバック・ホールは2100席くらいですから、それより小さいんですけど、ゼラバックよりはえらく大きく感じるし、座席よし、品格ありで好きになりました。

そんな新国立劇場サイズのオペラって、想像してたよりもっとエンジョイできました。合唱団(新国立劇場合唱団)はエネルギッシュだし、ホフマンの第三の恋人、ジュリエッタを演じた横山恵子さんの厚みも深さもある声とアンドレをやった高橋淳さんの声もよかったでした。こういう経験ある声の人を聞けるとは思ってませんでした。また第二の恋人、アントニアを演じた浜田理恵さん、歌の最後がちょっとぶれちゃった感じ、野心よりか不安を強調した日本的女が彼女の解釈だったんですけど、日本では成立しやすいストーリーかも。彼女もよかったです。

アルトゥーロ・チャコン=クルス(Arturo Chacón-Cruz)のホフマンはあまりピンときませんでした。スカラを含めて同役こなしたというには、なんだかよくわかんないんですけど、役者としてはちょっとスロッピーで脇役化しちゃったという感じ。サンフランシスコ・オペラで2012年に彼がリゴレットでマントヴァ伯爵役をやった事あるんですけど、その時は声のプロジェクションがあまり良くなくてがっかり。新国立ではもっとボリュームが出るんじゃないかと思ったんですけど...

アンジェラ・ブラウワー(Angela Brower)は、私が見逃したサンフランシスコ・オペラのホフマンでも同じニクラウス役を演じたようなので楽しみにしてたんですけど、まず衣装が気に入りませんでした。ちょっと素直すぎる感じ。

オーケストラは驚くほど素晴らしかったです。

というふうに、個々、いろいろいい点があったんですけど、一つ一つが独立しちゃってて、全体が結びついた一体感がないかんじ。例えばオーケストラは舞台の上とは切り離されて単独演奏をしてるみたい。ホフマンはホフマン、ダンサーは除いた人たちの踊りは踊りと、各部分が舞台という仮想空間上で絡み合わない、各吹き出し内部の出来事のようなんです。こういうことからだと思うんですけど、エンジョイしましたがなんか不消化感が残り、家に帰っても?という感じでした。マーク・S・ドス(Mark S. Doss)さんがバラバラな部分をつなげてたっていう感じ。彼は真のプロって言う感じで、各役目をしっかり演じて歌も安定しててよかったです。

ミューズの歌を聞いてるとなぜかやたらとお酒が飲みたくなります。飲んでるシーンが多いせいからじゃありません。「死の都」の夢のような歌を思い出させます。

2013年11月7日木曜日

NSAスパイ事件その後ー1)米ハイテク産業に悪影響?

エドワード・スノーデンさんがNSAのスパイ活動を告発したのが今年の6月中旬。その直後、この事件がアメリカのコンピュータ産業に対する国際的信用を傷つけ、米国製品(特にクラウド技術)離れを引き起こすなどの「米ハイテク産業に悪い影響を及ぼす」という趣旨の記事(Edward Harrison)を見たんですが、サンフランシスコの企業家/起業家/作家のウォルフ・リッチャー(Wolf Richter)氏の10月17日発表の記事によると、その予言の一部は当たりつつあるよう。

まず10月14日に、ビッグデータを扱うためのソフトウェアを販売しているアメリカのテラデータ社(Teradeta)が、四半期の事業結果を発表。それによると、これから売り上げがさらに伸びると期待されていたアジアでの販売が21パーセント、中東とアフリカでは19パーセント、それぞれ減少。

10月16日発表のIBM事業報告では、中国での販売が大下降。IBMのさまざまなビジネス部門のうち、バードウェア部門のシステム・技術部の収益が17パーセント減少、特にユニックス・リナックス・パワー・システム・サーバーの売り上げが38パーセント激減。

IBMのローリッジ最高財務責任者(CFO)は、「去年はハードウェアの販売が牽引力になり、全体で売り上げが19パーセント上昇したのに、今年40〜50パーセント激減したのは、中国の経済改善計画がまだはっきりしてないため」と説明。

しかし8月中旬の「上海有価債券ニュース(Shanghai Securities News)」の報道によると、エドワード・スノーデン氏が暴露したNSAスパイ事件で、「中国公安部(Ministry of Public Security)と中国閣僚レベルのリサーチセンターがアメリカのIBM,オラクル、EMC社をマーク」したと報道。IBMの苦戦はこの影響というほうが筋が通る。(*こちらの記事を見てくれれば理由の一つはわかるはず。「裏口=バックドア」に注目してください。)

IBMの株価の動き。2013年1月から11月5日まで。

NSAスパイ事件についてはあっち、こっちで触れてきましたが、現在までにさらに深刻な情報が、英国紙やニューヨークタイムズで、いろいろ暴露されてます。日本人は人事と思ってるのか、日本の新聞社が「特定秘密保護法案」を通したい政府の顔色を伺っててわざと知らんぷりしてるのか、それとも日本の産業に与える影響が大きすぎるのを恐れてなのかわかりませんが、ほとんど一般紙で報道されていません。不思議です。

なぜアメリカのコンピュータやコミュニケーション産業が打撃をうけるかのはかなり深刻な事情があり、普通の日本人も知っておいた方がいいと思うので、その2)でわかる限り説明するつもりです。

2013年11月2日土曜日

「ニートの歩き方」と「貧乏人の逆襲:増補版」とTOEIC

日本に帰ってきてすごく良い事は、いろいろな日本語の本が読めること。最近読んだ本で面白かったのはphaさんの「ニートの歩き方」。

「ニート」ってアメリカにいた頃からよく聞く言葉だったので、何だろうと思って読んだんですけど、phaさんは、一日8時間労働(実は10時間以上)で無意味に拘束される必要性を感じないとか、それを実行するために増えたり、その他のばかばかしい消費には興味がないっていう点は、日本的資本主義と阿部政権の敵。共感です。

phaさんよりか「軽症」のニート志望の方には、フランス語の勉強をお勧めします。フランス人エンジニアとたまたま電車で乗り合わせ、いろいろ話したら(英語でですけど)、一日7時間労働とか言ってました。あそこはバケーションも長いし(夏は一月)、日本語プラス何かプログラミング等のエンジニアリング関係ができれば就職できると思います。ただしフランスは、普通の日本人だと違和感を強く感じるほど、アメリカ以上に個人主義が徹底してるので、フランス映画をよく見る等の社会勉強をしてから、実地検分した方が良いです。



pha氏の冒頭の分析に寄ると、今、多くの人が日本で生きる事に閉塞感を感じるのは「日本の経済がまだ成長してない頃に作られたルールや価値観が生き残っていて、それがみんなを縛っているせいじゃないか(p8)」。これ、当たってると思います。阿部さんのやり方なんか、昔の高度成長経済を復活させようとしてるようで、もうちょっと違うビジョンがないのかと思います。日本の大企業(トヨタとか電気機器)は、トップがインターネットの意味を理解してないとしかいいようがありません。

ハウツー物の本って、通常、一冊(260ページ)に一つぐらいしかいいこと言ってないけど、「ニートの歩き方」には「アリの話」を含めて5つぐらいあったので、まだ読んでない人、お薦めです。

本の中でphaさんが推薦してる本のリストがあるんですが、そのうちの松本哉さんの「貧乏人の逆襲:増補版」を読んでみました。これ、かなり傑作、久しぶりにギャーギャー笑って読んでしまいました。おなかの筋肉ひきしめには効果大、また現代の日本には考え方にバラエティがあり、許容性もあるようなので安心しました。高円寺の方にはあまり行く事ありませんが、機会があったら「素人の乱」っていうお店、是非覗いてみたいです。

ところで最近、英会話を教えようと思ってます。ビギナーでも社会人やり直し英語でも、脳活発化等の理由で英会話やってみたいとかご興味のある方、メールください。日本人の皆さんの間で評判が高いTOEICを受けてみたところ、970でした。

2013年10月19日土曜日

Kカンパニーの「白鳥の湖」

日本では初めてのバレー、Kカンパニーの初日の「白鳥の湖」を東京文化会館で見てきました。

しょっぱなのオーケストラで管楽器の音が「ギャー」と響いてえらく度肝を抜かれました。大きめの管楽器は難しいのかなー。でもいつ聞いても美しく、若々しいところのある曲です。

Kカンパニーの熊川哲也さん、パフォーマンスは全体的に爽やかで、ジャンプも軽快、第一幕では王子様の青年らしい悩みなどがよく表現されててよかったです。お妃候補たちの踊りの後、お妃選びのために一人一人のお姫様を王子様が見るところがあるんですが、その目差しが、ダンサーに対して「今の、よかったよ」って言ってる感じで、この人、自分のカンパニーの人達の踊るのが本当に好きなんだなって思いました。また舞台が住処か、住処が舞台かというぐらい舞台になじんちゃってて、パフォーマンスの最中、無意識にちょっと足を組んでタバコでも吸うんじゃないかと思うほど。第二幕で着ている王子様の衣装なんかまるでTシャツを着てるみたい(もしかしてコスト節約の一環かも)。こういう感じが出てくるのはベテランだからなのかもしれません。マリンスキーのダニラ・コルスンツェフ(Danila Korsuntsev)のベテラン性にもそんな感じがしました。

コールドバレエも4人とか8人のグループの踊りも良かったです。でも時々グループの踊りでは、体の動きが全員小さくまとまりすぎてるかなって思うところがありました。踊りはそろってるんですけど。もしかしてこれは日本という文化に規定されてしまってる「女」という「体」が踊るせいなのかもしれません。日本の文化は体の大きな動きを「品がない」として嫌うということもありますが、場所が物理的に狭いので、日常から自然に体を小さく動かす訓練が日常的にされちゃってると思います。

「黒鳥/白鳥」は「キャラクターが作れてないな」って感じました。2羽の白鳥や四羽の白鳥は悪くないのに、キャラクターを作ってストーリーを語るというのは一段上へ飛ぶリープが必要なのかも。

魔法使いロットバルトの後からの黒鳥の登場とか、オディール・バリエーションは、実際で見たのは初めて。また王子がロッドバルトに2度にわたって「神にかけて愛を誓え」と迫られ、ためらいをふりきってオディールに愛を誓うというストーリー展開を見たのは初めてでした。こっちの方が、王子を大人とみなすと、プロットとして納得がいくし共感がわきます。

舞台は2幕目の宮殿の上からつりさがってる金色の飾りみたいなのがよかったです。白鳥達の衣装はオデッタと差別化するためでしょうか、でも何かもたもたぎみの感じがしました。

ロッドバルトを演じた人、何となくマシュー・ボーンのバレエ・カンパニーを思い出させる体でした。

ベンノを演じた井澤諒さんもすがすがしく、また二羽の白鳥や四羽の白鳥もよかったです。

久しぶりのバレエなのでエンジョイしました。

2013年10月6日日曜日

中之条ビエンナーレと四万温泉

群馬県の中之条で現在進行中の「中之条ビエンナーレ」へ。私の英語のスキルをボランティアで提供したかったので主催者側にコンタクトして行ったんですけど、よかったぁ。

ビエンナーレ本部事務所を兼ねた中之条町の展示場「SATORI」でおずおずと見習い案内人から始め、次の日ははやくも一人立ちして、中之条町内の旧六合村(くにむら)で案内人兼番人をやりました。これは主催者と地元のボランティアさんの配慮のおかげで、中之条町エリアと六合エリアの作品はボランティアをしてる間に一応全部見る事ができました。四万温泉エリアはボランティアを終えた翌日に行きました。

美術館をとびだし、人々の生活領域に入ってきて展示されると、作品がのびのび、見る方ものびのびで、こういうやり方は思いのほかよかったです。緩く曲がった道路伝いに古い民家がひょいひょいと見えてくる道を歩きながら、場所を提供してる民家に上がって見てくというのが意外にいい。始めは靴を脱ぐのが面倒くさかったんですけど、そのうち、家を訪れる感覚になり、次に来るときは、はいたり脱いだりしやすくて歩きやすい靴で来ようなんて、いつのまにか思ってました。

稲刈りが到着の翌日から始まりました。地域の人が共同作業してるのを目にして、人々の助け合いが必要条件の村の生活のただなかで、自己や自我を表現するために孤独も物ともせず的な作品を見てるとなんか始めはそぐわない感を抱きましたが、黄金の稲の垂れ穂がそんな違いは小さい、小さいと言わんばかりの圧倒的な量感であちこちを覆ってます。これが農家の作品ですね。

元呉服屋さんだった建物、SATORIの二階に女の子の大きな顔の絵。通常は私の好みじゃないんですけどよかった。この良さの50パーセントは、元呉服屋さんの低い天井と畳、今まで見た事無い装飾の鴨居で仕切られた静かな空間に、作品がはまってることから来てるのは確か。古い民家のつくりが貢献してるって強ーく感じました。作者はそんなこと聞いたら嫌がるって思うけど、これだけの力は画廊に置いただけでは得られないですね...

SATORIのそばの旧廣盛酒造に、ゴールデーンゲート・ブリッジのようなガラスとメタル製の大きな吊り橋の作品。それだけだったら心に残らないと思うんですけど、キューンという金属的な音が吊り橋の起伏に合わせて走ったとき、「あーっ!」ってイメージが湧きました。作者は小さめの窓からの外光を希望に見立てるイメージのようでしたが、私のはその逆で、明るい外から細くて不確かな橋を伝いながら暗闇に下降してゆくストーリー。古墳内を下って行くような感じです。音が暗闇の中で遠近感を出すのに成功。酒造の空間をうまーく使った作品、もともとの壁の色も過ぎ去った長い年月を感じさせます。

残念ながらカメラ持ってくの忘れたんで、中之条ビエンナーレのサイトからのスナップを拝借。藤原京子さんの「ビフレストー橋」の完成前の写真。酒造はこんなに明るくないです。音が作品に生命を与えてるって感じ。

六合村では高野長英の隠れ家が展示場の一つ。隠まった村の医者が残した押し花が圧巻・感動でした。今も色が残る200年前の押し花、医師作家の草木とむかう静かな時間が感じられます。この押し花がいつまでも残る事を祈ります。(国立博物館、なんとかせよ!)

四万温泉エリアでは、裸の男の人が3人、プールで泳いでるビデオが意に反して面白かったです。なんつーか、ランダムに泳いで画面に入ってきたり出たりするのがめだかのようでもあり精子のようでもあるのが。ビデオの質はよくないんですけど、そこが懐メロチックな雰囲気を出してました。

膝丈ズボンをはいた、子グマのプーさん的な伯爵綽々(はくしゃく しゃくしゃく)さんという人を滞在中2度も別々の場所で見かけ、何者なのかなーと思ってたら歌人でした。伯爵さんの短歌をいくつか書き留めておいたんですけど、紙をなくしちゃったみたい。六合村が中之条町に吸収されたことや、かいこの桑の葉を食べる音が響く静かな午後のことなどでした。

この滞在をすごくよいものにした最後のとどめは、美しいの四万川と川沿いの豊富な湯量の四万温泉。たっぷり浸かっていい気持ち。積善館のそばのおそばは腰があって美味しかったです。

2013年9月20日金曜日

ドイツ政府、機密保全のため政府機関にウィンドウズ8を使用しないよう通達

ドイツ連邦安全保障省(Federal Office for Security)が主要政府機関にウィンドウズ8を使用しないよう通達した文書が漏洩(リーク)したようです。オリジナルの記事はこちら。

ウィンドウズ8で使われているトラスティッド・コンピューティング(TS: Trusted Computing)を通して、マイクロソフト社が遠隔操作で個々のコンピュータに秘密裏に介入、コントロールすることが可能なことを、ドイツのIT専門家が発見したためだそうです。漏洩を伝えたオリジナルのドイツ語記事はこちら。

今年6月にエドワード・スノーデン氏がNSA(アメリカ国家安全保障局)の情報収集をすっぱぬいた事実を考えると、マイクロソフト社を通してにアメリカ側に情報が筒抜けになる恐れが大。

NSAと、マイクロソフト、グーグル、ツィッター、フェースブック、アップル等の関係についてはこちらを参考にしてください。米大手テク会社とNSAの関係についてはブログに書くひまがありませんでしたが、上記各社が自社のサーバーがNSAのサーバーに直結してること、それにかかる諸経費をNSAから受け取ってる事をを8月中旬から下旬にかけて認めだし、米国内で論議が拡大してます。

ウィンドウズ8とは、タブレット用にマイクロソフトが市場に紹介した最新のオペレーション・システムで、使用されてるトラスティッド・コンピューティングは、シスコやヒューレッドパッカード、マイクロソフトやインテルが共同で10年前に開発したシステム。TMP(Trusted Platform Module)と呼ばれる半導体チップとそれを動かすウィンドウズ8のようなオペレーション・システムで構成されてます。

もともとトラスティッド・コンピューティングが開発された理由は、海賊版ソフトウェアや不正規入手されたソフトウェアやビールスをコンピュータ上で走らせないようにするため。

ところがTPMがアップデートされてTPM 2.0が登場してから問題が深刻に。両バージョンとも、コンピュータ上に搭載されてるソフトウェアを識別して、走らせたり不活性化するソフトなんですが、古いバージョンではユーザーがその機能をオン・オフすることができました。しかしTPM 2.0では、コンピュータを初期起動するとディフォールトでTPM 2.0が自動的にオンになり、ユーザーに気づかれる事無く、マイクロソフトが遠隔操作で介入できるように設計されているそうです。同漏洩文書によると、ウィンドウズ7は2020年までは安全に使えるとのことなので、古いのを使ってる人は、将来どのオペレーションシステムを使うか考える時間が十分あるようです。

写真:サンフランシスコに今も残っている大日本帝国時代の領事館跡。パールハーバー奇襲の前日、すべての重要書類を消却処分したそうな。垣根のバラがきれいです。

マイクロソフトが密かに介入できるのは秘密のキーの存在。もともとチップとキーは別々に作られ、最終的にチップ上で合体させられるんですが、その間にキーのコピーを取るのが可能。そしてこのようなTPM 2.0に対してNSAが「賛意を表した」ということも同漏洩文書に記録されており、ベルリン所在のベウス技術大学(Beuth University of Technology)のロジャー・ウェイス教授(Rüdiger Weis)によると、「NSAにとっては夢のような」チップ。

それだけでなく、このチップは「NSAの手の届かない中国で生産されてる」ので、中国側に情報が筒抜けになる可能性も現実的に大きいそうです。むむむ... 確かに...

  アップルもTSを使っていた時期があるそうですが2009年に停止。リノックスは始めからこのようなスタンダードを使用しない選択をして今日に至ってるそうです。またリノックスには非利益団体なのでNSAが自分たちのやり方を強要できないのが上記会社等とにはない長所。

なおマイクロソフトによると、各コンピュータハードウェアメーカーは、上記のような機能(もしくはチップ)を不活性化するという選択ができるので、コンピュータを購入する人はしっかり事前にチェックしてみた方が安心でしょう。

追記 2013年9月22日: 9月18日付けでインターネット出版された記事によると、リノックス開発者、リーナス・トーバルズ(Linus Torvalds)がニューオリンズで開かれてたリナックス会議で、「NSAからオペレーション・システムに『裏口(を作ってNSAと直結させるという意味)=バックドア』を作るよう要請があったか」という質問に対し、言葉では「いいえ(No)」と否定しながら、頭を縦に振るボディ・ランゲージでyesを表明。なおエドワード・スノーデン氏はリノックスにも裏口があると書いたツィートを2013年9月21日午後8時56分付けで流してます。

2013年8月26日月曜日

ビックサイトで鉄道模型コンベンション

高校時代のクラスメートから東京ビックサイトでの助っ人頼まれ、鉄道模型コンベンションに一日参上。

そのちょっと前テレビのニュースを見てたら、どこかの路線を走っていた車両が最後のお目見え、そのイベントに鉄道ファンが押しかけて云々という報道に、このクラスメートが首からカメラをぶらさげて、にやにや笑い顔で全身写っているではないですか。本格的鉄道ファンだったんだなー。

ゆりかもめの「国際展示場正面」駅で下車、ビッグサイトのシンボルみたいな赤い立体マークがカリフォルニアチックで気に入りました。

コンベンション会場に一般人の入場が始まると、思ってたよりか賑やかで盛大。

写真:写真を背景に走る電車

大小さまざまな電車の模型が、模型の山や川や町中や写真の風景を背景にして、ところ狭しとばかりウィーン、ウィーンとうなり音を立てながら走り回ってるのはけっこう圧巻。会場のあっちこっちで上がったり下がったりしながらぐるぐる回ってる。こういう真に迫ったミニチュアの世界に夢中になる人たちの気持ちがなんとなく分かり始めます。

写真:よーく作ってある箱庭を走る鉄道模型。

コンベンションを訪れる鉄道模型ファンは、Tシャツに袖付きシャツをはおる、ちょっとお腹のでかかった30代から40代の男性が主流。女性は少ないんですけど、それでも最近は増えてきたそうな。話した感じではエンジニア女子のような人が多かったです。子ずれのおとうさんのような親子ファンもけっこういて、(女性でなくて)子供達がコンベンションに(元気な)花を添えてました。中国人やドイツ人も来てました。



「三番ホームに電車が来ます。... 2番ホームに列車が通過します。... 危険ですので白線の内側に下がってお待ちください」等の女性の声のアナウンスには聞き飽きててうんざりという感じが一般人にはするじゃないですか。しかし鉄道ファンには究極の愛の対象なのか、模型列車が模型駅を通過するたびに甘い声のアナウンスを(頻繁に)流してるブースがありました。何度見ても心騒ぐ模型電車、何度聞いても愛しいアナウンス、ああ、心揺さぶる声だけの存在、そんな松本零士的親密な感情を誰にも遠慮せずに表現できるオタク的ファンの安心感を感じました。

写真:鉄道模型より箱庭的風景すごい。河合隼雄氏がみたらすごーく喜ぶに違いない。



上の写真は私が一番気に入ったブースの展示物の一つ。下のハンドルをまわすと半球の部分がぐるぐる回り、半球底の新幹線の風景が360度かわるしくみ。りんごやさんまや貝などの各地の名産が見られる。

作者曰く「私は実は鉄道ファンじゃないんですよ。でもこういうの作るのが大好きで出品してるんですよ。」



同じ人の作品。背景の青がきれい。「うにを入れて『あまちゃん』にしてNHKに連絡したらきっと官九郎さんが気に入ってくれますよ。」これ、本気発言です。

8月26日追記:もしかしてこの人たち(ご夫婦のようでした)、「あまちゃん」の中の商工会議所にある模型を作ってる人たちなんじゃないかと思い始めました。