シュトラウスの「アラベッラ」を初めて見ました。
貧乏貴族の年頃の娘達の「苦境とロマンス」ドラマで、エンターテイメントが今のようになかった当時、このような求婚者の「品定め」的なドラマは実感があって人気があったんだろうと思います。でも現代の私には退屈でしたが、第三幕でのヒロイン、アラベッラと、彼女に許しを請うマンドリカの歌唱とドラマは力ありで、私は救われた!という感じです。
一幕、二幕では曖昧で優柔不断のアラベッラが、第三幕で婚約者のマドリンカからあらぬ疑いをかけられると、背筋をキッとのばして、「私を信じられないならそれまで」と、大金持ちだけども素朴なマドリンカに毅然と言い放ちます。アンナ・ガブラー(Anna Gabler)演じるアラベッラが急に一人の存在感ある人間に見えてきます。
マンドリカが、彼女の妹、ズデンカをアラベッラと誤解したのに端を発した騒ぎなんですけど、娘2人はお金がかかりすぎてとても育てられない貧乏貴族が世を渡っていく手段として、ズデンカをアラベッラの弟とし、ご本人も納得して弟として生きてるわけです。だけどズデンカもお年頃なので、愛してしまったマッテオと、当時では絶対ノーノーの「ベッドを共に」してしまいます(一夜だけは女の子になりたい!)。それが暴露して世間から葬られそうになるズデンカを、ただ一人、アラベッラが、「何の見返りも求めないを愛を貫くあなたに、私は教えられました。... あなたを心から尊敬します。」そしてジェーン・オースティンの「プライドと偏見(Pride & Prejudice)」のエリザベスなみの落ち着きと、威厳と、気品をもって、アラベッラの確信がどうどうと歌い上げられ、ドラマは最高潮。私(も観客)もすっかり彼女に共感。
新国立劇場のホームページからのスクリーンショット
マドリンカを演じたヴォルフガング・コッホ(Wolfgang Koch)はベテランらしく安定感がありました。賭け事で浪費する父親貴族の役目をした妻屋秀和さんがすごくよかったです。
初めから終りまで青色を中心とした舞台、とくにメインの青い色のトーンと青ばかりのコスチュームは好きになれませんでした。青っていう色、難しいんじゃないの。まだ舞台のデザインもあまりにホフマン物語の舞台と似すぎてて「またこのトーンか」っていう感じ。特にいただけないのは、アラベッラがマドリンカを初めて目撃する第一幕の窓(オフィスの窓みたい)、そして第三幕のユーモアも魅力も格式も無いホテルのフロントデスク。なんかモーテルみたい。
アラベッラが最初に登場するときの乗馬服(だけど話では乗馬でなくてオペラに行ってたようだったけど)、マドリンカが最初に登場するときのコートはちょっと面白く、また舞踏会ではお母様のドレスと白いケープがよかったですけど、後はなんだが目につかなかったです。席もよくなかったし、前に頭の大きい人がいたこともあったし、その上、字幕についてゆくのに精一杯だったからかも。
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