サンフランシスコでは見逃した「ホフマン物語(Les contes d'Hoffmann)」を見に行きました。新国立劇場は初めて。観客席内部の年季の入った木の床の温かみ、背もたれが長くてリラックスしやすい座席などグー。サンフランシスコ・オペラハウスは客席数が約3200、バークレーの(カジュアルな)ゼラバック・ホールは2100席くらいですから、それより小さいんですけど、ゼラバックよりはえらく大きく感じるし、座席よし、品格ありで好きになりました。
そんな新国立劇場サイズのオペラって、想像してたよりもっとエンジョイできました。合唱団(新国立劇場合唱団)はエネルギッシュだし、ホフマンの第三の恋人、ジュリエッタを演じた横山恵子さんの厚みも深さもある声とアンドレをやった高橋淳さんの声もよかったでした。こういう経験ある声の人を聞けるとは思ってませんでした。また第二の恋人、アントニアを演じた浜田理恵さん、歌の最後がちょっとぶれちゃった感じ、野心よりか不安を強調した日本的女が彼女の解釈だったんですけど、日本では成立しやすいストーリーかも。彼女もよかったです。
アルトゥーロ・チャコン=クルス(Arturo Chacón-Cruz)のホフマンはあまりピンときませんでした。スカラを含めて同役こなしたというには、なんだかよくわかんないんですけど、役者としてはちょっとスロッピーで脇役化しちゃったという感じ。サンフランシスコ・オペラで2012年に彼がリゴレットでマントヴァ伯爵役をやった事あるんですけど、その時は声のプロジェクションがあまり良くなくてがっかり。新国立ではもっとボリュームが出るんじゃないかと思ったんですけど...
アンジェラ・ブラウワー(Angela Brower)は、私が見逃したサンフランシスコ・オペラのホフマンでも同じニクラウス役を演じたようなので楽しみにしてたんですけど、まず衣装が気に入りませんでした。ちょっと素直すぎる感じ。
オーケストラは驚くほど素晴らしかったです。
というふうに、個々、いろいろいい点があったんですけど、一つ一つが独立しちゃってて、全体が結びついた一体感がないかんじ。例えばオーケストラは舞台の上とは切り離されて単独演奏をしてるみたい。ホフマンはホフマン、ダンサーは除いた人たちの踊りは踊りと、各部分が舞台という仮想空間上で絡み合わない、各吹き出し内部の出来事のようなんです。こういうことからだと思うんですけど、エンジョイしましたがなんか不消化感が残り、家に帰っても?という感じでした。マーク・S・ドス(Mark S. Doss)さんがバラバラな部分をつなげてたっていう感じ。彼は真のプロって言う感じで、各役目をしっかり演じて歌も安定しててよかったです。
ミューズの歌を聞いてるとなぜかやたらとお酒が飲みたくなります。飲んでるシーンが多いせいからじゃありません。「死の都」の夢のような歌を思い出させます。
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