2012年3月11日日曜日

2012年、サンフランシスコ・バレエの「ロミオとジュリエット」

2012年サンフランシスコ・バレエの、マリア・コチェトコワ(Maria Kochetkova)とヨアン・ボアダ(Joan Boada)が演じるロミオとジュリエットは素晴らしかったです。

第一幕:ロミオがジュリエットの家の庭に忍び込んで始まるバルコニーの場面。愛を告白し合う2人は青春のまっただ中。見つめ合ったり、だきあったり、ふざけたりして、溢れるばかりの情熱と喜びで舞台上を駆け巡ります。お互いの感情だけが世界ーーそんな2人を見てて、思わず、あ〜、私にもこんな時代があったなーと、一瞬、フワァーと、タイムマシンに乗って、自分の過去に飛んでしまいました。
写真:リンクしたサイトから。これは2011年公演の時の写真です

第二幕:ティボルト一派と、ロメオ一派の立ち回り:さすがハリウッドの第一人者がコーチした立ち回り、演出もいいし、皆さん、剣さばきが上達。ダンサーなんで、感がいいんですね。ティボルトがマキューシオを刺殺、ロメオが逆上してティボルトに復讐しますが、事態の重大さに愕然としたロメオ、許しを乞おうとします。

第三幕:一晩を共にしたロミオとジュリエットの別れの場面。パーフェクトな踊りとかなんとかかんとか以上のなにかで観客の心と目をしっかり2人につなぎとめ、観客も2人の動きを追います。美しいプロコフィエフのテーマにのって、ロメオとジュリエットは、澄んだ瀬せらぎの水のように、舞台上を走り、流れ、縺れ、絡み合い、輝き、滑ります。
写真:ロサンジェルスタイムズから。2011年の写真とレビュー。記事の真ん中あたりに、青いハイパーリンクがありますが、それをクリックすると写真が見られます。

ロミオとジュリエットが秘密で結婚してしまったのを知らないキャプレット大公夫婦、ジュリエットをパリスと結婚させようとしますが、ジュリエットは拒否。父親に自分の気持ちをわかってもらおうとするジュリエット、怒る父と母。ジュリエットに同情して、私は涙を流してしまいました。

ジュリエットが一時的に死んでいるだけなのを知らないロメオが、悲しみのうちにジュリエットの亡がらを抱き上げて踊ります。

ロメオが毒薬を飲もうとするとき、私は「ロメオ、早合点しないで!」と言いたくなってしまいますが、しょうがありません。

ロメオが自殺したあと、ジュリエットが目を覚まします。ロメオの死骸を見て愕然とし号泣。私も、さらに涙を流してしまいました。

ただの男の子から恋する青年へと変身、その喜びあふれる気持ちと情熱を、体全体で、ためらいもなく大胆に表現できるヨアン、この点では男性ダンサーの中では希有で、ロミオ役がぴったり。片手でマリアを高々とかかげて踊れるのは、今のところ、彼だけ。ちょっと背が低いのがダンサーとして難点と言えば難点ですが、ロミオ役をやってるときは、まるで気になりません。

目差しや体の動きでジュリエットの気持ちを伝えるマリアは、サンフランシスコ・バレエを代表するに相応しいプリマドンナに成長、ヤン・ヤン・タンがトップの時代に終止符を打ってしまいました。感情表現と技術がマッチするマリアーーこれからどのように成長するかは想像もつきませんが、成長し続けるのは確か。

マリアの場合、大胆に表現するんですが、彼女のパーソナリティなんでしょうか、それとも先のあるダンサーが持ってる共通のものなんでしょうか、それがたずなをかけ、言葉にならない部分、つまり「...」の部分を、体の筋肉一筋、一筋の動きにして表現してしまうんですね。

ヨアンも「...」ができたんですが、今シーズンまで長い間、ちょい役ばかりやらされてたせいか、あまりそれが見られない感じ。ヘルゲイ(ディレクター)にヨアンの踊る機会をもっと作ってもらいたいし、ヨアンのもう一つの特徴である、腕と手の動きのまれな美しさをぐーんと伸ばして、もっと見せて欲しいものです。

カーテンコールの時、ヨアンは最近、必ずマリアの手にキス。プログラム3の「リミニのフランセスカ」の時もそうでした(これも本当に素晴らしかったです)。「マリア、君は最高だ、お陰で素晴らしいパフォーマンスができたよ、ありがとう!」という気持ちを伝えてるんだ思います。ペアが技術的にマッチし、100パーセントの信頼があってこそ。ヨアンだから、マリアも十分に大胆に、繊細に、好きなだけ気持ちを込めて、今、踊れるんだなと思います。

ジェームス・ガルシア・カスティラ
(James Garcia Castilla):ロミオの友達役。いつも足が後ろに高く良く伸びる美しいジャンプ。「にんじん」という孤児の話がありますが、そのにんじん的雰囲気と、チンピラ風の顔のおかげで随分、損してる感じ。SFゲートに写真が出てるのでリンクしておきます。

クィン・ワートン(Quinn Wharton)とルーク・ウィリス(Luke Willis):2人ともコールドバレエの一員なんですけど、体格がよく、パリスや、ティボルトの友達役をやってます。ジェレミー・ラッカー(Jeremy Rucker)もティボルト派の一員。

サラ・バン・パタン
(Sarah van Patten): ロメオを見つめるさい、クビがガクッとさがっていて上目使いになり、ちょっと変。なんでだかわかりません。でも踊りや表現はぐーんと上手になってます。演劇のクラスでもとったのかも。

サラはピエールーフランコイズ・ビラノバ(Pierre-Francois Vilanoba)と組んで踊ったんですが、2人の踊りは、マリアとヨアンが持ってるほどのお客をつかむ力はありません。踊りはあっち、観客はこっちという区分が乗り越えられないんでしょうね。ビラノバは踊ってる最中の感情表現はいいんですが、踊ってないときにただの人に戻ってしまうのに気づいて欲しいんですけど。

表情とダンスがマッチできるというのは、そうはたくさんあることではないのかも。例えばバネッサ・ゾッホリンの場合、きれいな人なんですが、顔に張りつけたような笑顔。自然に表情が出てないんで、踊りそのものも、自由の域に達してない感じがします。

SFgateの写真とレビューのリンク。2012年です。

こちらはビデオクリップ

ビデオクリップじゃないんですが、パーティの開始場面と第二幕の一部がよく見られます。話をしてる人はアニタ・パチアッチで、ジュリエッとの乳母役でもあり、バレエマスターでもあります。

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