2011年10月18日火曜日

サンフランシスコ・オペラの「ドン・ジョバンニ」

新しいプロダクション(制作)の初日だったんですが、皆さん、ウォームアップできてないのか、一幕目は声が小さくてパンチ無し。ルーカス・ミーケム(Lucas Meachem)のドン・ジョバンニ、一幕目は、サングラスをかけたただのおじさん、二幕目で、遅まきながら、女たらしの悪貴族風になりました。

ドンナ・アンナを演じたのは、去年、フィガロで伯爵夫人を演じたエリー・ディーン(Ellie Dehn)。声は好きなんですが、良くなったと思ってると、ウォームアップ状態に戻ったりの繰り返しをしてるうちに、オペラが終わってしまいました。見せ場の高音がちょっとはずれたりして、本人も当惑したような感じ。

ゼリーナの場合は、オペラ・ハウスで歌うには、歌手として、まだ未熟なのかも。サンフランシスコ・オペラ・ハウスは奥行きがメッツよりも深いので、かなりの発声量がないと声が通りません。このため、故パビロッティも、サンフランシスコに来るのを嫌ったと言われてます。(下にリンクしたビデオで最初のメヌエットを歌ってます。)

ドナ・エルビーラを演じたセリーナ・ファノッチア(Serena Farnocchia)は、最初から最後まで、安心して見てられました。声もいいし、張りがあるし、感情も注げるプロ。

一幕のしょっぱなで、ドンナ・アンナのお父さんの騎士団団長は、ドン・ジョバンニに殺されてしまいます。お墓には、生前の装束をまとって椅子に座っている大理石の彫刻(下の写真参照)。

真夜中、ドン・ジョバンニと従者のレポレッロがそのお墓の前を通りかかると、彫刻がちょっと動くような気がしたレポレッロ、「ギャアー!」。ドン・ジョバンニは、幽霊なんか怖くないとばかり、「今夜、是非、私の家へディナーに来てくれたまえ」と、彫刻を招待。すると大理石の頭が頭を上下にふって、承諾の意を示します。

騎士団団長の幽霊がディナーにやってくるんですが、ここは舞台制作上、いつも困る場面だと思います。例えば、ディナー・テーブル上に、突然、ブラックホールが出現した風だったり、爆弾炸裂風だったりで、それまでの話しの内容と比べると、あまりの深刻さ。私はいつも大しらけなんですが、今回の幽霊とのディナーシーンは、今まで見た中でベスト。

顔も手も、頭のてっぺんからつま先まで灰色一色の団長の幽霊。それが怨念をはらすために、墓場の墓石から降りてきて、ドン・ジョバンニの家に来るという、「怖さ」と「真実味」のあるストーリー展開。

残念ながら、この幽霊とのディナー・シーン以外は、あまりにありきたりで、チープで、退屈な舞台デザイン。モーツアルトをやればお客が入ってくると思って、制作費を節約したんじゃないでしょうか。

初日だったので、そのうち、本調子が出てくるとは思いますが、この初日、最後の30分が良かったです。

新聞のレビューと写真をリンクしておきます。

初日のビデオ・クリップをリンクしておきます。三人目のブルーのトップを着ているのがセリーナ・ファノッチア。次がエリー・ディーン。

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