去年、バークレーのゼラバック・ホールで見た、「バリ島の家(House in Bali)が面白かったんで(去年見たオペラの中では、歌力は劣るとはいえ、一番、面白でした)、ゼラバックには、グッドなプログラムを選ぶ力があるとみて、今年はブリテン作曲、「ルクレティアの陵辱」を見に行きました。で、予想通り、予想外に良くて大満足!
「ルクレティアの陵辱(Rape of Lucretia)」は、絵の題材にもなってる有名な話なんですが、私には個人的な思い出があります。アメリカの大学に入って間もない頃、必要に迫られてとった、英文学のクラスかなんかの最初の課題がこの本。全然わからなくて、「なんでこんなの読むの?」今回、プログラムのイントロを読んで、はじめて、話の内容がわかった次第。もっともオペラとお話は違いますけど、だいだいは同じ。
コラティヌス(Collatinus)とユニウス(Junius)とタルクィニウス王(Tarquinius)が戦争の陣中で、妻たちが何をしてるか気になり、使いを送って調べると、コラティヌスの妻のルクレティアだけが貞淑にしてるのがわかります。当時、上流階級の妻は、旦那がいなくなると、好きなことをやるのが常識。ユニウスとタルクィニウス王は、美しくて貞淑な妻を持ったコラティヌスに嫉妬をいだきます。
タルクィニウス王は嫉妬心を押さきれず、ついに陣中から馬を疾駆してローマへ戻り、留守宅のルクレシアを訪問、泊めてくれるように頼みます。悪い予感がしたんですが、王の要求を断る訳にはいかず、ルクレティアは王をゲスト用寝室へ案内。その晩、タルクィニウス王は、ルクレティアの寝室に侵入、夫と勘違いはしたんですがすぐに間違いに気づきますが、強姦されてしまいます。
翌朝、直ちに帰宅するようという妻の伝言を受けたコラティヌス、ルクレティアからすべてを聞き、嘆く妻を、「体は奪われても、心を奪われたわけではないので、忘れよう」と慰めますが、ルクレティアは「盆からこぼれた水は元にはもどらず」と嘆き、その場で自害してしまいます。
これを見ていたユニウス、タルクィニウス王(エトルリア人)の、ローマ人を抑圧する横暴政治はもうたくさんと、ローマ人に剣を持って立ち上がるよう呼びかけるところでオペラは終わりますが、この事件、共和制ローマ建国のきっかけとなったと言われてます。
舞台ですが、ステージングは素晴らしく、ディレクター(William Kerley)の力に感服しました。特に、悪い事をするのがわかってるが自制できずに、馬に乗って急ぐタルクィニウス王(2009年フィラデルフィアのがあったんで参照にリンクしておきます)、王がルクレティアの部屋へ忍び込む様子、さらに強姦のおこる場面は、ミニマリズムのさっぱり表現ですが、話を熱く語り継いで、観客の注意をそらしません。
若くてフィットな歌手も、全員が思った以上の歌唱力。なかでも、タルクィニウス王を演じたマシュー・ワース(Mathew Worth)は実力ありで、いずれはサンフランシスコ・オペラにも出るようになるかも。
さらに、カラフルな花を使って、暗い話を、必要以上に暗くしない気遣いなど、全体がうまく相乗して、ローマ共和制建国伝説を語るのに成功。
リンクしたYoutubeから。タルクィニウスが馬に乗ってローマへ疾駆する場面。背中がロープで後方につながれてます。やってはならないという意識をロープで表し、そのロープに反して、疾駆する王の心理状況がうまーく描かれてます。
楽器の使い方も面白かったです。携帯電話の呼び出し音みたいのが聞こえたので、誰かが携帯をオフにするのを忘れたのかなと思いましたが、ハープでチョロリ、チョロリと出してる音とわかりました。
上でリンクしたビデオをみると、最後のところでハープのチョロリが聞こえます。
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