2013年6月10日月曜日

檜の舞台と松の緑と晴れの空間

初めて「謡(うたい)」ジャンルを「どうかな...」って思いながら行ったんですけど。

渋谷でおりて「109」っていうビルの出口で地上へ浮上、そしたら「くじら屋」がありました。なつかしい! ゆるい坂あがってゆくと古いコンクリート3階立てのようなビル横に「観世能楽堂」の看板。「こりゃ、しまった」という感と、ちゃんと行き先についたホット感が交差したのでした。



シアター部分の扉をあけると... 昔の屋内の一部のような舞台と舞台の左に続く廊下が照明できらきらと浮かび上がります。全体で「L字型」の舞台、客席がゆったりとその周りに配置されて舞台を取り囲んでます。

前にせり出した柔らかくつやつやと光る檜の舞台。「『晴れ』の舞台」とか「『晴れ』の日」と使う「晴れ」の言葉の意味がわかるよう。正面舞台のバックの松の絵の青みがかった緑の色の美しさ、左側面の太竹の若い緑の美しさ。(下は観世能楽堂のサイトからのスナップショット)


舞台は突然始まります。

舞台の右端角から身をちょっとかがめて舞台左に4人、右に5人プラス一人が登場。どんなものかも知らない「舞囃子(まいばやし)」が始まります。左の4人が太鼓(たいこ)と大鼓(おおづつみ)と小鼓(こづつみ)と笛の担当というのがわかります。左側に、プログラムで「地謡」と書かれてる男性5人が、舞いと謡を行う和服の女性を頂点にして三角形に座ります。

「地謡」の人たちのよく通る声が最初の驚き。その声を切るように響き渡る大鼓と小鼓の音。合間に「オー」とか「エー」という体のどこからでてるの?と思わずにいられない、大きくて意外性のあるかけ声が入るんですけど、その組み合わせがきりりとしてリズム感があって素晴らしい。笛の音は笛の音で独自の物語を語るよう。

私の友達が舞いながら「右近」という謡もやったんですけど、あのか細い声の人にどうしてあんな大きな声が出るの?とこれもびっくり。すごい発声法。



「景清」とか「鸚鵡小町」とかまったくわけのわからないものの中に「井筒」とか「羽衣」とか、昔なんか聞いた事あるようなのとか、踊りのきりとして美しいのもありました。

舞いが好きだった織田信長とか、名も知れぬ武士たちのことが心をよぎります。

舞台は突然終わります。そして次の舞台が始まります。

「謡曲」をやる人たちがなんでそういう世界に惹かれるか納得。あのきらきらとしたピュアな晴れの空間、かけ声を重ね合う面白さ、空を切る楽器の音、どこからとも知れぬ深さからわき上がる声、真っ白な足袋がすべる檜の床、舞台左側廊下沿いの松と白い石、そして演じる人と見る人の距離の近さ。

今度来るときは、お話の筋を少し勉強してきます。

P.S.: 観世能楽堂の敷地内すぐ横にお稲荷さんがあるんです。一体どういう関係なのかわかんないんですけど。



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