マリンスキーバレエ(Mariinsky Ballet & Orchestra of the Mariinsky Theatre。元キロフ・バレエ Kirov Ballet)が3年ぶりにバークレー(Berkeley)を訪問、スワン・レーク(Swan Lake ハッピーエンド版)を日曜日まで上演中。
初日(10/10)は、エカテリーナ・コンダローバ(Ekaterina Kondaurova)のオデッタ/オディールと、ダニラ・コルスンツェフ(Danila Korsuntsev)のジークフリード。一緒にいった人が安い券を買ったのでゼラバック・ホールの天井に近いくらいでしたが、まあ仕方ない。よくフォーメーションが見えました。
エカテリーナとダニラのは、キロフの伝統的な「白鳥の湖」。ライトの色、光の当て方、コスチューム等は、バリュエーションがあるとはいえ、youtubeで見ているとおり。エカテリーナは決めるところはピシッと様式美を決め、エネルギーを出すときはバネのように前へ出て体が弓のようにしなります。ダニラはどちらかというと、温厚なプリンス。
翌日、まさかということもあると思って、ゼラバック(Zellerbach Hall)に電話したら、売れ残り券を安売りするというお知らせが! こういうの「ラッシュ券」って言うんですけど、ただちにバート(BART)に飛び乗ってバークレーへ。140ドルのオーケストラ席を20ドルで入手。会場は満杯でした。
その日は、ウラジミール・シクリャローフ(? Yladimir Schklyarov)の王子と、本当の新人のオクサナ・スコーリク(? Oksana Skoryk)。初めはアリーナ・ソーモワが予定されてたんですが、何かあったらしく、オクサナに変更。ウラジミールは、3年前のバークレー公演では代理出演、今はめでたくマリンスキーのプリンシパル・ダンサーに昇格してました。前回のウラジミールはイケメン中のイケメン、それから3年後、どうなってるかなーて見たんですが、きらきらと目のひかる天真爛漫なハンサムではなくなってました。失恋でもしたのかも。
オクサナは、まだまだ若ーく、舞台経験をつまなくちゃという段階。エカテリーナのようにはポーズがぴしっと決まらないうちに次のステップへいったりでしたが、マリンスキーが将来を託してる一人なんでしょう。まじめな普通の女の子という感じ。
面白い事、その1: 第一幕の最後に、王子が湖へ向かう前にソロで踊るところがあるんですが、ダニラとウラジミールの解釈に違いがあるよう。ダニラの場合は、お母さんの女王様から誕生日プレゼントで送られた弓をはやく使ってみたいという感じで湖へ急ぎますが、ウラジミールの場合は、パーティが終わって一人になると、愛する人がいない寂しさをそこはかとなく感じ、気を紛らわすために、弓を持って湖へ行くというストーリー。「自然愛護」が歌われて久しい現在、また男性も寂しいと感じるのは今は受け入れられてる事実なので、ウラジミールの解釈のほうがなじみやすいです。
面白い事、その2: ロクサナの黒鳥。昨今の伝統的なキロフの黒鳥は、頭に長い黒鳥の羽を二本つけて、鳥っぽくなります。エカテリーナも、下の写真のアリーナ・ソーモワの黒鳥も、頭に長い羽が二本の鳥人間。ところがオクサナは、コールドバレエの黒鳥がつけてる普通のジェットブラックの頭飾りに、小さなティアラをかぶっただけの無長羽登場。
もしかして、オクサナはまだプリマにはほど遠いということで(注:マリンスキーではという意味)羽無しなのかも。羽無しジェットブラックの黒鳥はバークレーの街角をかっぽしてる現代若者風。たった今テレグラフ通りから走ってきて舞台へかけこんだ風の登場なんで学生街の観客に親近感をもたせるのか、ものすごーい受け。カーテンコールはエカテリーナをしのぐ3回。オクサナは「エッー」て感じで、ちょっとオズオズ、カーテンから出たり引っこんだりでした。
個々の解釈の違いを許し、たとえプリマでも個々に長所や短所があるわけですから、異なったコスチュームや頭飾りをダンサーの個性や熟練度に応じて用意し、一人一人の個性を大事にするマリンスキーはさすが様々なダンサーを手がけ、さまざまな時代を生き抜いてきたバレエ団だなと思いました。
今回、かなり感動したのがコールドバレエ。動きの無い場面では、美しい造形を保ちながら、ピクとも動きません。ダンサー達の体や腕や足の重なり方、すきまの出来かたなどパーフェクトと言ってもいいすぎでなく、よく体に足や膝の位置を徹底的に覚えこませるものと感心。コールドバレエの作る造形は、オーケストラ席とそのあたりの目線で最高に見えるようにできてるっていうのがよくわかりました。
あまりに静かなので気になり、後の観客席を振り返ると、舞台の青っぽい光を反射した顔がすべて舞台へ向かって捧げられてるよう。舞台上で展開される物語に、魂が吸い込まれちゃってるんですね。
ゼラバックは、舞台の大きさはオペラハウス並みなのに、客席数は圧倒的に少ないので、出演者が近く、よく見られるていう利点あり。舞台上から、多分客席も、見えるのかも。サンフランシスコのオペラハウスでは、舞台からは客席は真っ暗で見えないと思います。
写真とレビューはこちら。
こちらへ行くとウラジミールが見られます。2枚目の写真。コールドバレエの写真はここで。
バークレーに来る前にロサンジェルスで公演した模様。ロサンジェルス・タイムズに写真とレビュー。ウラジミールとオクサナの写真をトップに全部で7枚ぐらい見られます。
マリンスキーバレエはロシアの宝です。
写真はオクサナ。ロサンジェルス・タイムズから。はっきりとしたことは言えませんけど、記事から見ると、アリーナが妊娠したみたい。残念! でもオクサナが見られたからいいかな... オクサナは、アメリカ初日公演のパドトゥのくるくるまわるとこで転倒したみたい。
やはりダイアナ・ビショネバとか、スベトラーナとか、アリーナ・ソーモワのようになるには大変なんだなと思いました。
10月14日: 土曜日の夜はオクサナとアレクサンダー・セルゲイエフ(Alexander Sergeyev)。アレクサンダーの王子が一番ぴったりの感じ。まだソロリストなのでダリアやウラジミールほどの余裕で演じてるんではなく、全身で打ち込んでるところが若い王子らしくてグー。
オクサナは数日まえよりはリラックス。黒鳥のパドトゥの最後で、トランペットの音色に乗って、王子へ近づいてゆく場面があります。王子の心を虜にしたのを確信、王子にくるくると回りながら得意満面で近づいて行くところなんですが、左足のトウが高く天を指すようひざをまげて、彼女なりの嬉々とした勝利の表現、よかったです。
2015年1月8日:オクサナとティモール・アスケロフ(Timur Askerov)のスワンレークが見つかったのでお薦めリンクしておきます。これは2013年5月にアップロードされてる事と、オクサナの動きから推察すると、私がバークレーで見たより後のパフォーマンス。オクサナの動きがぐんと優雅でバランスもよく、ポーズもバチッと決まるようになってます。特に手首の動きが美しくなり、そのおかげで長い腕の優雅さが香るような感じ。回転がちょっと遅いかなというとこはありますけど、上で私が「得意げ」って書いた足の動きは段々角度が大きくなっていて、ドラマチック。こういうのってパフォーマンスを重ねないと体得できないのかもね。お相手役のアスケロフは私生活上ではオクサナのボーイフレンドですが、彼の動きはぐらぐらするところもありますけど気品ありで、セルゲイエフより良いと思います。ジャンプがシャープでスピード感あり。特に両足が前後に伸びて後ろ足が高く上がる私の好きなジャンプは美しくて清々しく、将来、素晴らしく成長することを祈ります。
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