2012年5月7日月曜日

2012年、サンフランシスコ・バレエの「ドン・キホーテ」

2012年、サンフランシスコ・バレエのプログラム8は、新制作の「ドン・キホーテ」。

マリア・コチェトコワ(Maria Kochetokova)とタラス・ドミトロ(Taras Domitro)がキトリとバジル。

タラス・ドミトロがストリー・バレエで大役を演じるのを初めて見たんですが(「リミニのフランセスカ」を除いて)、さわやかでキリッとした動きは、嬉しい驚き。彼が初めてのジャンプを見せたとき、観客の息を飲む音で場内がざわっとし、コンパスのようにピシッと伸ばした両足を空中で素早く交差させ、空気を大きくカットしたときは、「オォッ...!」。まっすぐですらりとした足なので、舞台に立っただけでも体の線がリンとしてきれい、ジャンプがさわやかに見えます。

3〜4年ぐらい前に入団したんですが、サンフランシスコ・バレエにとって大きな財産。なんか、ちょっとおでこがはげてきたような感じではあるんですけど、まあそれはいいことにします。



マリアの動きもいつもどおりよかったんですが、タラスの高くて、クリスプな45度ジャンプで、その夜の主役を完全に奪われてしまった感じ。

こういうコンビだと、2人で踊るときはもっと素晴らしい踊りを見せると思ったんですけど、初めてのコンビのせいか、マリアとボアダ(Joan Boada)や、マリアとゲナディ(Gennadi Nedvigin)が持ってるような繋がりが見られず、1+1が3になる踊りの弁証法は成立しませんでした。

今のマリアには、キトリの役がピタッとこない感じがあります。

タラス以上に嬉しい驚きは、ジプシーの女を踊ったコートニー・エリザベス(Courtney Elizabeth)。今まで何度がドン・キホーテで、ジプシーの長に振られた女の踊りを見てきましたが、コートニーの踊りが今までで最高、その怒り、苦しみ、悲しみと哀訴をよーく表していました。振付けがさっぱりして、以前よりかよくなった感じがします。

彼女は一年前に、コールドバレエからソロリストに昇格したんですが、以来、着実に上手になってます。これで、将来、プリンシパルに昇格する道が開けたかも。

カーテン・コールで、普通マリアは、送られたブーケから花を一本抜き、パートナーにあげて感謝の気持ちを表すんですが、タラスにはあげませんでした。何か、気に食わなかったのかも。でも、このコンビには、いずれ成功して、素晴らしい踊りを見せて欲しいと思います。

バネッサ・ゾッホリアン(Vanessa Zahorian)とダビード・カラペティヤン(David Karapetyan)のコンビのも見たんですが、マリアとタラスの踊りの質にはかないません。バネッサとダビードは去年、結婚、以来、ダビードから、ちょっと緊張の感じが抜け、動きがキリッとしなくなった感じ。でも、アドリブ的に、いたずらっ子のような表現や、自然な笑い顔を舞台上で見せられるようにはなったんですが...



ここに行くと上のバネッサの写真(ソース)と、評論が見られます。

ダビード、怪我をして、第二幕目からヨアン・ボアダに変わったんですが、ボアダが見られたのでグー。

総じて、今回のドン・キホーテは、全体に、ミスが多かったです。タラスが着地後にクラっとして手をフロアについたり、キトリの友達を演じたドレス・アンドレ(Dores Andre)の落とした扇子が舞台を走ったり、バネッサの最初のジャンプはタイミングを逃して体が空中で開いてしまうような、危ないのがありました。

衣装は、ジプシーの女の衣装は以前よりかさっぱりし、新しい色を使ったメルセデスのはすごーくよくなってました。またドン・キホーテの夢の場面のサファイア色のチュチュが幻想性をまし、以前のよりかだんせんよくなってました。でもエスパーダの衣装が、お菓子のおまけにつくような、黄色と黒の漫画的雰囲気でがっかり。スター性がなくなってしまったんです。

タラスのジャンプが見られるビデオをリンクしておきます。3分20秒目ごろに見られます。今の彼は、もっと高く、速くジャンプができると思います。5分30秒から、彼のPDが見られます。これはタラスがまだキューバにいたときのビデオ。

ここをクリックするとHuff Post に載ったバネッサとボアダの写真が見られます。

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