オスカー・ワイルドの劇、「サロメ」をベースにしたシュトラウスの同名のオペラ、観客を最後まで引き込む力満点のパフォーマンスでした。
成功の理由その1)三つの巨大な円をモチーフにした舞台装置をあげたいと思います。写真左の大きなマンホールが下手で、メインのキャラクター(サロメ、ヘロデ王と王妃)はみなここから登場します。
二つ目は、舞台上の光の円、月光。ほとんどのアクションはこの円内で起こります。
三つ目は写真では見えませんが、舞台正面の巨大な錠付き円蓋で、予言者ヨハネが閉じ込められている地下牢への入口です。
舞台そのものは広々としてるんですが、三つの円のために、潜水艦の中にいるような圧迫感を感じさせます。
(写真:ヨハネの首を見つめるサロメと、それを見つめる母親の王妃。)
その2)サロメを演じる Nadja Michael(ナジャ・マイケル)の声は、暗闇に満月の光を浴びてぎらりと輝く、長い剣のよう! 闇夜に響き渡る最初の一声で、オペラ、「サロメ」のサクセスは約束されたと思うほどです。
技術的にどうのこうのというより、「あのほっそりした体で?!」と、聞く方がうろたえるほど、迫力のある声です。(写真:サロメのローカットのドレス。後ろにぼんやりと牢獄へ続く円蓋が見えます。)
その3)兵隊が常時舞台にいるんですが、その黒いレザーの衣装が、サドマゾチック。さらに舞台に圧力を加えます。
対称的に無防備な肌を見せるのは、サロメ姫と、彼女が一目惚れする若き予言者ヨハネ。このコスチュームの対称性もドラマを盛り上げます。
その4)踊りを披露すれば願い事をかなえてやると約束したヘロデ王の懇請により、サロメが「7つのベールの踊り」を踊りますが、驚きなのは、ナジャ・マイケルは踊れる! 最後のベールを取るさいには、ワイルドの「サロメ」の伝統通り、一瞬ですが、しっかり裸になりました。
(ヨハネの生首を手に入れたサロメ、混乱しつつも状況を理解しようとするんですが...)
16才のサロメが、聖者ヨハネに「あなたの体にさわらせて...(ヨハネは ためだ!) あなたの髪に触らせて...(だめだ) あなたの唇にキスさせて...(だめだ)」と、自分のデザイアを打ち明けます。
この唄、アールヌーボー風というか、グスタフ・クリムトの妖しくも美しい絵が、頭の中にポゥーと浮かびあがりました。
自分の欲望に目覚め、その欲望を達成したいと望んだ女の子は、はじめて個としての自立への道に第一歩を踏み入れるのですが、そのために... 定番通り、死ぬ事になります... (つい最近まで、自分の欲望に目覚る女の子は危険視されてたんです。眠りの森の美女のように、男の子に目覚めさせてもらわなければならなかったんですね。)
このオペラ、あと4回ほどサンフランシスコ(ビデオクリップ)でやるんですが、オペラファンには、お薦めです。
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