東京文化会館の11月30日のに行ったんですけど、ウラジミール・シクリャーロフ君(Vladimir Shklyarov)が11月28日の「愛の伝説」で怪我をして休演、多分、アリーナ・ソーモワ(Alina Somova)も、そのさいの余波で不調になったのかもしれませんが、以降、ずっと休演。バークレー以来のお二人のダンスを、特にアリーナの成長が見られると思っていたので、すごく残念!
代役はジュリエットがマリーヤ・シュリンキナ(Maria Shirinkina)、ロメオがフィリップ・スチューピン(Philipp Stepin)。マリーヤ・シュリンキナのことは以前、これからの星として期待されてるような事、聞いた事がありますが、ロメオ役の人は今回が初めて。
マリーヤのジュリエットはまだ、一生懸命、役作りしてる最中という感じでした。もしアリーナがやっていたら、もっとのびのびと、そして多分違った衣装を着て出て来るのだろうと思いました。マリーヤのはあまりに目立たない衣装でした。全体に、主役としての華やかさというか、オーラが欠けてる感じ。しかし特に難もなく踊ってました。数年したら、マリンスキーで期待される一人になる人だろうと思います。
なんとなくぱっとしない配役陣中で全体をひっぱり、抜きん出て上手で、マリンスキーを救ったはマキューシオ役をやったアレクサンドル・セルゲーエフ(Alexander Sergeyev)。ひょうきんでウィットのあるマキューシオを、技術的にも素晴らしく、愉快そうにやってくれて、見てるのが楽しかったです。彼が白鳥の湖の王子役をしたのをみたことがありますが、こういう役の方がピッタリ。彼がジャンプしたとき、もしそのつま先が私のあごにでもぶつかったら、あごの骨は粉々になっちゃうんじゃないかと思うほどのバネ力でした。
配役としてぴったりと思ったのは、ティボルト役をやったユーリ・スメカロフ(Yuri Smekalov)。すごく個性的な雰囲気の人で、攻撃的でけんか好き、力にすぐ訴える役にぴったりでした。
マリンスキーの「ロメオとジュリエット」を通しで見るのは初めて。バレエとしてのロメオとジュリエットとしては、わりと原作に近いんじゃないのか、そういう意味では古典的と思いました。2人の情熱的な出会いと心の交流を緯糸に、生と死という永遠の大テーマを同じ比重でからませて縦糸にし、ストーリーを展開してるという感じでした。
私がよく見たサンフランシスコ・バレエの「ロミオとジュリエット」では、出会いの奇跡、2人だけの世界と愛の感動を描く「生きる」がメインテーマで、死という要素には話を展開するのに必要な以上は触れず、もっと現代的なストーリーの展開でした。古典的なマリンスキー版を見て、なぜ「ロメオとジュリエット」は、いろんな人が新たなバージョンを作りたくなるのか、納得しました。
ジュリエットの居城でのパーティ場面は、家父長(パトリアーク)とその一族男性が、ストラビンスキーの力強く運命的な音楽に合わせて、体の脇につけて真っすぐに延ばした手の掌を威嚇的に開いて出てくるサンフランシスコ・バレエの振付けの方が、いかにも家父長制権力を象徴してるようで、私は好きです。
ロメオが百合の花を教会の床に並べてジュリエットを迎えるバージンウォークのところは、なんとなく暗い場面が一瞬明るくなるようで、マリンスキーの方の演出がよかったです。
0 件のコメント:
コメントを投稿