2015年6月22日月曜日

スベトラーナとロバート・ボレのジゼル

スベトラーナ・ザハロワ(Svetlana Zakharova)のジゼルを見たのは今年の3月。ユーポートホールで見たんですけど、いまだに思い出してるんで、書いておく事にしました。

彼女の腕の動かし方(三角筋とか上腕三頭筋とか...:彼女のおかげで筋肉名を知ったんです)、体の向きや静止、動かし方を含めてのコントロールは素晴らしく、それらの動きの連続として優雅さと気品が生じるんです。群を抜いた素質と努力の結果なんでしょうけど... 最初から最後までうっとりでした。

ただ一カ所、こうすればもっとよくなると私が思う点、ザハロワだからこそちょっと残念に思った点は... 第二幕で、ジゼルのお墓を訪れたアルブレヒト公爵(ロバート・ボレ)がジゼルの幽霊と踊る場面。 ボレがスベトラーナを後からホールドして、ジゼルが空中を飛ぶかのように舞台を右から左へ、左から右へとクロスしてゆくところがあるんですが、そこのところの一瞬の足の動かし方、それがなかった。

体をつり上げられて行く瞬間、惰性によって足が行き先とはちょっと反対方向へ動く表現をすると、一瞬にして魔法がかかったかのように、舞台がするりと超自然的な事が起こる不思議な世界に変わってしまいます。観客がアッと思わせられてしまう瞬間です。パーフェクトな第二幕ジゼルの世界が実現するかどうかは、このフットワークにかかってると言っても過言ではないと思うんですが...

ここんとこの足の動きをきちっと表現し、この世の物とは思えないようなフワーッとした動きを常に再現して、観客を不思議な世界に連れて行ってしまうのは、私の知る限りではサンフランシスコ・バレエのマリア・コチェトコワ(Maria Kochetkova)。





このスナップショットはマリア・コチェトコワがマリンスキーの ティムール・アスケロフ(Timur Askerov)と踊ってるところで(約4分過ぎ頃に)からなんですが、サンフランシスコ・バレエで彼女がジゼルを踊ったときに、何度も見ている動きです。

もちろん、スベトラーナの踊り込んでるジゼル、彼女の優雅で詩情にあふれ、ばっちりとコントロールされた表現で語られるジゼルに、マリア・コチェトコワの語るジゼルを比べるなんてことは十年早いと思うけど、上記の点だけでは、マリアのほうが優れてると私は思います。

ただスベトラーナがセルゲイ・ポルーニン(Sergei Polunin)と踊ったジゼルでは、この動きがちょっと見られるので、もしかして相手役でも決まるところもあるのかも知れませんが(このビデオでは25分目頃に見られる)....

ロバート・ボッレの第二幕でのエントランス、百合の花束を抱えて黒いマントに身を隠して登場するんですけど、これ、本当にボーグ・モーメント VOUGUE MOMENT-ファッション雑誌の見開きページ的にさまになってます。初めてロバート・ボレを見ましたけど、Jeez! 彼はギリシャの神々からも嫉妬されるに違いない、世界の恋人。こういうダンサーが今いて見れる事に感謝。あれだけの体を作って維持し、演技力でストーリを語れる彼にはやはり才能と努力あり。ですからもしかして嫌な奴かもしれないけど、それも許されるなあ。

現在私が是非見たいのはボリショイのデニス・ロドキン。(Denis Rodkin)。ニコライ・ツィスカリーゼの若いときのような全身バネ的存在ではないんですけど、動きが美しく優雅で気品あり。要するに演技力があるんだと思います。この人とスベトラーナの、このビデオのバージョンでの「白鳥の湖」は是非、見て見たいです。