2012年10月2日火曜日

2012年サンフランシスコ,秋のオペラの「キャプレット家とモンタギュー家」

ベリーニの作品で、初めて見るオペラ。「ロミオとジュリエット」のオペラ版ですが、シェイクスピアの話とは違うところあり。でも全体では、やっぱり悲壮なロミオとジュリエットの話。

ロメオを演じたのは私の大好きなジョイス・ディドナト(Joyce DiDonato)。以前「セビリアの理髪師」でロジーナを、その後「バラの騎士」でオクタビアを演じたんですが(これは見た記憶がないんですけど)、なるべくはやくサンフランシスコに帰ってきて欲しかったんですが、今回まで待たなくてはなりませんでした。

メルロ・オペラという、サンフランシスコ・オペラ歌手養成プログラムの出身。ドロラ・ゼイジックと同様、国際的に有名になってしまったので、今日まで無視されちゃったんだと思いますが、ああ、ずいぶん成長したなーと思いました。暗くて辛く、最後はジュリエットが死んだと誤解して毒薬を飲んでしまうロメオの役を見事に演じきりました。

この演出では、ジュリエットと手をつないで、舞台上の一線を超え人々から離れ、空中のどこかを見つめながら、舞台前方へ歩むところで終わります。生きてるときは葛藤ばかりの2人が、初めて同じ方向に進みながら終わるこの終わり方、「...」という感じが出てて、いいと思いました。

このオペラでは、ロミオとジュリエットの恋は、苦しく辛い恋。それを丁寧に感情をこめて表現するジョイスのロミオ、キャプレット家に平和を申し出る最初の歌、ジュリエットを説得しようと命をかけるロメオの歌に、涙がでました。

ジュリエットを演じたのはニコール・キャベル(Nicole Cabell)。サンフランシスコ初出演。新人と思いますが、才能ある声。とは言え、ジョイスの声の方が私好み。2人でデュエットをする場面がいくつかあるんですが、ジョイスがニコールに合わせてハモる声の美しい事、それを聞くだけで満足のゆくパフォーマンス、しっかとサンフランシスコを征服しました! 

パフォーマンス中、ロミオはジュリエットを見つめるときは見つめて歌うのに、ジュリエットはほとんどロミオと目を合わせません。まだ役者じゃないんですね。
サンフランシスコ・オペラのウェブサイトからのスナップショット。ジョイスのロメオとニコールのジュリエット。まだ初日のビデオがアップロードされてないようなので残念!

ベリーニの「ロミオとジュリエット」では、社会の矛盾がジュリエットというボディ、一身に集中。「あなたを愛しているけど、家族は裏切れない、私の心はすでにあなたのもの、でも私達がこの世で結ばれる事はありえないの」と、愛を成就するには死しかないことを示唆、全体のプロットが、「死」に向かって進んで行きます。オペラ全体を通じて、ロミオの意に添えずに苦しみ、家族の強いる結婚式におののくジュリエットは、当然ですけど、病気っぽく演出されてます。例えば、トイレの手洗い台の上に飛び乗って歌ったり、下着での登場がほとんど等。でもこんな苦しみに遭遇したら、誰だって精神的に影響をうけるじゃないですか。

舞台のデザインはいかにも前衛好みのドイツ。例えば、馬のサドルをまるで剥製の動物の群のように天井からつるさげ、戦場の騎馬群を連想させます。ジュリエットとロミオが再会する場面では、空中に45度の角度で飛び上がるように吊るされていて、つるんでいるんだけど抱き合ってるわけではない真っ白い男女の像が、2人のこの世での関係と、あの世への旅立ちを示唆してるよう。

そんな中でカラフルなのは、ジュリエットの結婚式の場面。結婚式そのものは描かれませんが、着飾った女性たちのドレスで示唆、このドレス群が、2012年「VOUGUE」XX月号特集っていう感じの華やかさ。全女性が大きな花を口に加えて、顔の半分を隠してしまうところが妖しくグーでした。ロミオも女装で招待客として潜入、ベージュ調ドレスがよく似合ってて素敵でした(写真左中央あたり)。ジュリエットのウェディングドレスも今はやりの「ボーグ」的。下は結婚式を示唆する舞台の写真。


10/2/12:ビデオがパブリッシュされたのでリンクしておきます

新聞のレビューと写真はこちらです。

10/5/12:アナ・ネトレブコのジュリエットとジョイスのロメオ

ジョイスのロジーナがyoutubeにあったのでリンクしておきます。

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